海外情報紹介 英国の空港容量について検討するためのAirports Commissionの設立

 英国ロンドンのヒースロー空港は、欧州内の他の国際ハブ空港(パリのシャルルドゴール空港、フランクフルト空港、アムステルダムのスキポール空港)と比べて空港容量に余裕がないため、何らかの対策を講じないと中国やインドなど新興成長市場への路線を運用することができずに英国経済の衰退を招くとして、エアライン等から、第3滑走路を増設して容量問題を速やかに解決せよというプレッシャーが英国政府にかかっています。ただし、現連立政権は前労働党政権と異なり、第3滑走路増設には反対して2010年の総選挙に勝ったので、できれば他の望ましい選択肢を選びたいところです。
 ヒースロー空港では現在、「無制限運航試行」が行われ、一定条件下では2本の滑走路を同時に着陸に使用することが許されています。そのせいか、今年の夏は航空機騒音に対する苦情が劇的に増加したそうです。現在の空港容量を効率的に運用するための実験だったはずですが、地元住民にはさらなる騒音問題をもたらすこととなりました。環境に優しく、経済的にも効率のよい空港運営には様々な検討が必要となるでしょう。
 この英国の空港容量問題解決のために空港委員会(Airports Commission)が設立されました。2013年に中間報告、2015年に最終報告を出して、英国の航空政策のための提言をすることになっています。ただし、最終報告が出されるのが2015年の総選挙後ということで、この問題に関する決定を先延ばしにした、と現政権に対して非難の声が上がっています。御参考までに空港委員会設立に関する英国運輸省の発表を掲載します。

原文:
http://www.dft.gov.uk/news/statements/mcloughlin-20121102a/


空港委員会の構成員と付託条項

発表者: Patrick McLoughlin (運輸大臣)
公表者: 英国運輸省
発表年月日: 2012年11月2日
様式: 声明書

 世界の航空ハブである英国の立場を維持するための政府の選択肢を特定して提言するための、Sir Howard Daviesを委員長とする独立委員会を設置する計画を、9月7日に政府は公表した。Sir Howardと検討した結果、政府は委員会の全構成員と付託条項をここに公表することとなり、委員会は空港委員会(Airports Commission)と命名されるだろう。
 空港委員会の構成員を選ぶにあたり、政府はSir Howardと協力して、様々な技能、経歴そして経験を持つ個人名を挙げていった。委員会ではまた、構成員の直接の専門ではない分野の問題検討の機能を強化するために、専門家のアドバイザーによる小委員会の選任を予定している。  Sir Howard Daviesの他に、委員会の構成員は以下の5名となる。:

・Sir John Armitt、Olympic Delivery Authorityの元Chairmanで
 Network Railの元Chief Executive
・Professor Ricky Burdett、ロンドン大学経済学校(LSE)の都市研究の
 教授でLSEの都市 研究センターの所長
・Vivienne Cox氏、BP Alternative Energy社の元CEOで元Executive
 Vice Presidentであり、BP Executive Management Teamのかつての
 構成員
・Professor Dame Julia King、Aston大学の副総長で気候変動委員会の
 構成員であり、航空宇宙産業の経歴がある
・Geoff Muirhead CBE、Manchester Airport Groupの元CEO  委員会の付託条項は以下である。:

 委員会は欧州の最も重要な航空ハブとしての英国の立場を維持するためのさらなる空港容量の必要性の規模と拡張すべき時期を調査する。;そして、さらなる空港容量の必要性を短期的、中期的、そして長期的にいかに満たすべきかを定義し評価する。
 英国規模の視点を保ち、いかなる提案も国家的かかわり合い、地域的かかわり合いそして地元とのかかわり合いにおいて、適切に配慮する。
 利害関係者や一般人と率直に議論をかわし、証拠や提案を示す機会や、委員会の仕事に関連する展望を発表する機会を持つ。
 反対派はもちろんのこと、地元自治体や権限を委譲された政府を含めた様々な利害関係者と議論する機会を求め、委員会の取り組みと提言を支持するための合意を成立させる。  委員会は2013年の終わりまでに以下について報告を行う。:

・世界のハブとしての英国の立場維持に必要な段階的方策の性質や規模
 そして実施時期についての証拠の評価;そして
・現在の滑走路能力の使用法を改善するための、これからの5年間に行う
 速やかな対策に関する委員会の(1つ或いは複数の)提言−これは信憑性
 のある長期の選択肢と矛盾しない。

 委員会の中間報告での評価と提言は、航空の需要や接続性に関する現在の英国の立場、これらがいかに発展していくかの展望、そして国際及び国内の接続性について見込まれる英国の要件の将来の様相に関する証拠の詳細な精査で実証されねばならない。
 速やかな対策の可能性について委員会が評価するにあたり、経済的、社会的そして環境的費用と利益、そしてoperational deliverabilityを考慮に入れねばならない。また、一層詳細な展開に値する、信憑性のある長期の選択肢の初期的高レベル評価によって情報はもたらされねばならない。  委員会は2015年夏までに以下について報告せねばならない。:

・英国の国際的接続性の必要性を満たす選択肢の、経済的、社会的そして
 環境的影響を含めた評価
・いかなる必要性も満たす最適なアプローチに関する委員会の(1つ或いは
 複数の)提言;そして
・要求される時間内で実行可能な限り迅速に、その必要性が満たされる
 ことを確実にするための委員会の(1つ或いは複数の)提言

 委員会は最終報告では、信憑性のある選択肢のそれぞれについて詳細な考察にもとづいて提言を行わなければならない。各選択肢の運用上の実行可能性や商業的及び技術的実行可能性の検討とともに、各選択肢の詳細な投資対効果検討書と環境影響評価書の展開或いは分析が盛り込まれねばならない。
 主要空港のインフラに関する将来の計画申請がいかなるものであれ、この詳細な分析に基づき、その解決を早めるために政府が National Policy Statementを準備するのを支援するための材料もまた、2015年夏の最終報告書の部分として委員会は供給しなければならない。