海外情報紹介 第38回ICAO総会においては国際的MBM実現を目指す工程表で加盟国の合意は得られても、欧州がEU ETSで敗北

2013年9月24日から10月4日までICAO本部で開催された第38回ICAO総会における気候変動対策の議論について続報を掲載します。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1762

第38回ICAO総会気候変動決議と留保文書ダウンロードサイト:
http://www.icao.int/Meetings/a38/Pages/resolutions.aspx

 2013年10月4日金曜日−ICAO総会での集中協議の2日後、2016年の次回総会で市場に基づく国際的な対策について決定を行うことを目指した工程表をたどることで加盟国は合意に達した。ICAOとしては珍しいことに、ロシア、中国そしてインドが率いる多くの発展途上国が提出した決議草案への最終の修正について昨日票決が取られた。敗北を避けようと欧州が試みたにもかかわらず、EU ETSに外国の航空機の運航者を対象に含めないよう目指した段落を草案に盛り込むという重要な投票で、発展途上国が本質的に勝利を収めた。2020年に実施する国際的MBM(Market-Based Measure 市場に基づく対策)を2016年に決めることを目指した進展と引き替えに、対象とする空域を減らすという枠組みでICAO加盟国が容認しやすくなるだろうとEUは信じていた。結局、EUは出し抜かれ、数で負けた。

 採用された決議の段落16(a)は、暫定的MBMsの実施を模索する国家或いは地域、またはすでに実施されている暫定的MBMsを持つ国家や地域は「合意に達するために、建設的な二国間及び/又は多国間の協議そして他の国々との交渉に従事する」よう求めるものである。アメリカ合衆国を含むいかなる加盟国も、EU ETSが自国のエアラインを対象とすることに自発的に同意することは全くありそうもないので、欧州はEU ETSを適用する範囲をEU内の飛行のみに制限せざるを得ないだろう。外国の航空機運航者によるEU内の飛行でさえ、運航者の登録のある加盟国の承認なしでは対象外にせざるを得ない可能性がある。

 2016年に国際的なMBMを採用するという合意を期待してすでに譲歩し、元来の法律に規定されていたような全離発着便を対象とするものというより欧州の空域内で排出された二酸化炭素排出量を規制するというEU ETSの適用範囲を狭めることを受け入れた欧州の威信に対する大きな打撃である。現在の特例措置で一旦適用を延期しているEU ETSの施行を、「意味のある」合意が実現しない場合には速やかに復活させるだろうとEUは常に主張し、ICAO総会に出された決議草案を進んで受け入れていた。もし、EUがさらに中国、インドそして米国との対決を再開することを望んでいるのでなければ、EU ETSの拘束力が及ぶ範囲を変更することを受け入れざるを得ないようである。適用範囲をEU内とすることはEU法に反するという欧州の格安航空会社からの法的行為に直面する可能性もEUにはある。

 段落16に「双方の合意」を差し挟むという発展途上国の提案を阻止しようとして、欧州の代表団は、元来の決議草案から段落16全体とそれに関連する段落を削除することについての投票を要求したが、大敗を喫し、発展途上国の提案を採用するという説得力のある投票で発展途上国が勝利した。

 発展途上国はまた、米国のような加盟国からの反対にもかかわらず、RTKsの国際的負担が全体の1%を下回る発展途上国を到着点及び起点とする飛行経路については、国家的及び地域的MBMsからde minimisの例外として扱うという要求を取り下げなかった。BRIC国家(ブラジル、ロシア、インド及び中国)はまた、国際的MBMを設計及び実施する時にde minimis及び特殊事情と個別の能力(SCRC)とUNFCCCの原則である共通だが差別化された責任(CBDR)を考慮する参照を挟み込ませるのに成功した。

 新しい草案(WP/430)にはまた、実現可能性と実用可能性を含む、国際的MBM制度の技術的側面、環境影響や経済影響、そして可能な選択肢の様式をまとめる作業がなされるべきだという要求が含まれている。草案はまた、加盟国の支持を得て(MBMの過程に係わるすべての加盟国からの一層の情報を確保するために草案にさらに追加された)、国際制度についてワークショップやセミナーを開催し、加盟国に影響を及ぼす可能性のある主要な論点や問題を特定し、対処するようICAO理事会に要請している。理事会は国際的MBMを採用するかどうかについての決定に関し、第39回総会に報告するよう要求されている。

 決議では2020年までに国際制度を実施するという言及を入れないというBRICS国家及びその支持国家による提案は取り下げられた。

 昨日、欧州は落胆を味わったにもかかわらず、欧州委員会委員であり、それぞれ気候と輸送の担当であるConnie Hedegaard氏と Siim Kallas氏は全体的な結果について楽観的だった。「EUの懸命な作業が功を奏している。:棚上げになった取り決めについて、ICAOは初めて航空排出物低減のための国際的方法に合意した。市場に基づく国際的な対策である。」とHedegaard氏はツイートした。今日の本会議の後、Kallas氏が以下のように続けた。「排出物の取扱いについては航空部門が真剣に取り組んでいると今夜のICAOの取り決めが示している。」

 今日の本会議においては、主に先進国からde minimisの言及について(段落16bとその他)、そして発展途上国からはICAOの(努力)目標(段落7)についての懸念が出されるなど、数多くの留保事項或いは異議が多くの加盟国から提出されたが、総会で決議文は承認された。

 EU諸国の代表として、リトアニア代表が、総会は成功を収め、EUは次回総会で国際的MBMについての決定を期待することになるだろうと述べた。地域的MBMsについて合意に達することができなかったことを彼は残念がっていたが、EUは引き続きICAOを支持するだろう、航空産業との一層の関わりを期待すると彼は述べた。これからの数週間に決議文のいくつかの留保事項に係わることになるだろうと彼は付け加えた。

 米国代表で、米国の気候特命使節であるTodd Stern氏は、航空は気候変動に取り組むための努力における優先事項であり、米国はMBMs関連の継続作業について勤勉に従事することになろうと述べた。米国にとってはまた、決議文の若干の要素は容認しがたく、特にde minimisとCBDRの言及は容認しがたいものだった。