海外情報紹介 ICAO総会での敗北にかかわらず、欧州委員会は空域を対象にEU ETSを適用

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1768

欧州委員会によるプレスリリース(原文):
http://europa.eu/rapid/press-release_MEMO-13-906_en.htm

欧州委員会によるプレスリリース(参考訳)
http://www.aerc.jp/index.php?ID=143

 2013年10月16日水曜日−市場に基づく国家的及び地域的対策(MBMs)に制限を設けるという、ICAO加盟国の大半による最近の決定にもかかわらず、欧州委員会は2014年1月1日から欧州域内空域でEU ETSを適用しようとする提案を行った。この間の総会の終盤の動きで、暫定的MBMsを各国のエアラインに適用する前に第三国からの合意をとりつけるべきであるという文章を決議に組み入れることに、ロシア、インド及び中国のような多くの新興大国が成功した。しかし、欧州の気候委員であるConnie Hedegaard女史は今日、EU加盟国には自国の空域を規制する国権があると述べた。今回の提案の下では、世界銀行の定義のような、世界の国際航空に占める有償貨物トンキロ(RTKs)の割合が1%未満の低所得国と中流の下層所得国を離発着する便は例外扱いとなり、ビジネスジェット機の運航者には新規の適用免除基準が設定された。

 Hedegaard女史は今朝の記者会見で、国際的なMBMを開発するというICAO総会での合意はEUの圧力無しでは成立しなかっただろうが、今や2016年までに詳細についての合意を得て2020年までに施行するという決定が下されたと述べた。

 「それは大変な朗報である。」と彼女は述べた。「もちろん、より多くの国家がEU制度を支持し、ここ欧州で着手された取り組みに航空部門が貢献することになればさらによかったのだが。2020年から始めるのではなく、今から始めるべきである。ICAO加盟国の大半は異なる意見だったが。」

 2016年に確実に合意を得ることが現在の重要事項で、それまで欧州は欧州の空域内及び上空を規制する国権を主張しなければならないと彼女は述べた。

 「2020年までに国際的なMBMを実現するための暫定的な解決策として、欧州地域の現在の空域に入る到着便及び空域から出る出発便を規制するための提案を今日、欧州委員会が行う理由がこれである。すべての国家 ...がもちろん、主権空域内を規制する我々の権利を認識していると私は思っている。明白な理由で、これは重要な原則である。他の国家がこの原則をないがしろにするなど、私の想像の範疇外である。」

 「我々は他の国々と協議したいと思っているが、重要なことは、欧州の主権が及ぶ領空内の規則を決めるのは我々欧州だということだ。ICAOの協議では欧州は前向きに大変努力したと世界の他の国々は認めて欲しいものだ。我々は『時計を止める』努力をし、今やそれが目的を達して、今度は2016年までの交渉周辺に必要な良好な雰囲気を作り出すために我々の法律を調整しているところである。提示されたそのままの意図をここから諸同盟国がくみ取ってくれるよう切に望む。」

 期限があるので、来年3月までにEU加盟国の代表である欧州議会と理事会が速やかに採択することを欧州委員会は望んでいるとHedegaard女史は付け加えた。

 航空をEU ETSの対象にすることについての欧州議会の報告者であるPeter Liese博士は、彼の同僚である欧州議会議員らがEU/EEA内のフライトのみを対象とするような『時計を止める』特例扱いの継続を支持しないだろうという不安を、近頃表明した。そのため彼は、欧州委員会の提案を歓迎し、欧州の空域内の全フライトを対象とすることで、欧州のエアラインにとってやっと条件が公平になるだろうと述べた。この意見には欧州議会の環境委員会委員長であるMatthias Groote氏も同意している。

 「時計は再び時を刻み始めるだろう。」とGroote氏は述べた。「欧州連合がその空域内で規制を行うのをとやかく言われることはなく、航空排出物をETSの対象として扱うのが我々の任務である。」『時計を止める』特例扱いが終了し、欧州内で離陸或いは着陸するすべてのフライトからの航空排出物が規制対象になることについて来年4月までに法律の新しい条文で共同の決定に至るだろうと彼は警告した。

 今回の提案の下では、欧州経済地域(EU加盟国28カ国とノルウェー及びアイスランド)内の空港間のフライトからのすべての排出物は引き続き対象となるだろう。2014年から2020年まではEAAの外側の国々から離発着するフライトは、欧州委員会に言わせると、EEA空域外で発生するこれら排出物について一般的適用除外扱いの恩恵を被ることになる。

 EEA空域の定義は、EEA加盟国領土の間での第三国上空或いは海域上空の距離が400海里を超える場合は例外として、EEAの領土の海岸線の外周上の最も遠い部分から12海里先の地点から、出発或いは到着のEEA飛行場までの距離である。外縁部の領域にある空港と第三国にある空港の間のフライトによる排出物と、EEAとEEA加盟国の海外にある国と領土、つまりはEEAの部分でない国家と領土の間のフライトによる排出物は対象外となる。

 さらに、スイスのような欧州内の第三国領域上空の排出物や、欧州本土とEU保護領及び準州の間の海域上空の排出物を扱う例外規定がある。そのため、例えば、スイスから離発着するフライトは欧州地域内を飛行する距離に応じてのみ、これからは適用対象となるだろう。

 欧州委員会はまた、『時計を止める』特例扱いからの動向や、空域による規制が2014年に開始されることに配慮するため、適合性や監視、報告や検証の規則に対して、多くの重要な調整を行った。

 国家的及び地域的な暫定版MBMsに関する、ICAO総会の気候変動決議の段落で重要な要素は、多くの国家が異議を唱えたにもかかわらず、MBMsのような制度から発展途上国を除外するde minimisの範囲に言及していることであった。「de minimis規則について我々は留保したが、2020年までの時間について話す限りは配慮をすることになるだろう。」今日、Hedegaard女史はそのように述べた。

 de minimisの例外規定が適用される場合は、国際航空の有償貨物トンキロ(RTKs)の占有率が全体の1%に満たない発展途上国を離発着するフライトは規制対象から外さねばならず、EUはだからこの原則を容認した。決議文には『発展途上』の明確な定義が無いので、欧州委員会は世界銀行から『低所得』または『中流の下層所得』と定義された国家を指すことに決めた。

 この定義を用いると、1%の範囲を超えるようなインドや中国やアラブ首長国連邦のような国々や、主要な東南アジアのハブ空港を離発着するフライトが欧州連合の空域の飛行部分についてはEU ETSの対象になるようだ。ブラジル、南アフリカ及びサウジアラビアのような国々から離発着するフライトもまた対象になる。というのもたとえこれらの国家が1%の範囲内に入っていても、世界銀行によって中流の上か高所得経済に分類されるため、新規提案の下でのEU ETSのde minimisの範疇外だからである[記事は10月17日に更新された]。

 欧州委員会は新しく提案した規制を、ビジネスジェット機やCO2の年間排出量が1,000トンを超えないいわゆる『少量排出者』のような小規模で商用でない航空機運航者を、管理業務単純化のため対象外扱いとする機会にした。これで、EU加盟国によって規制される航空機運航者の数は約2,200減少すると見込まれるが、これは排出量の0.2%にあたる。2013年の時点では、年間総排出量が25,000トンに満たない他の小規模な航空機運航者−商用或いは非商用にかかわらず−が、これから単純化された手順を利用することができる。

 競売にかけるべき航空排出枠の割合はEU ETS指令により15%にとどまるが、それより低い量の排出枠が2013年から2020年までの間は競売されるだろう。というのも規制対象の範囲が減るので流通する航空排出枠の総量が少ないのを反映するからである。


リンク:(以下から直接はリンクしていないので、原記事から参照して下さい。)

欧州委員会が提案を発表
提案に関する欧州委員会の質疑応答
欧州委員会によるEU ETS指令への修正案(pdf)
世界銀行−国別の所得分析
ICAOによる2012年の国際航空の国別RTK占有率