海外情報紹介 抗議が出始めたが、EU ETSを空域で実施するにあたり、ICAO決議はEUによって完全に順守されるだろうと欧州委員会の弁

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1773

 2013年10月24日木曜日 − 今月これまでにICAO総会で合意された気候変動決議を順守し、欧州域内の空港を離発着するフライトによるEU/EEA空域内の航空排出物を対象とするという欧州委員会の提案について、第三国との協議を行うだろうと欧州委員会は述べた。しかし、第三国の合意にかかわりなく、欧州内空域を規制する権利が欧州にはあると欧州委員会は言い張っている。この欧州の計画に最初に公に反対を表明した国がインドであり、米国上院にEU ETS禁止法案を共同提案しているJohn Thune氏はこの問題を運輸長官であるAnthony Foxx氏に提起したと受け止められている。昨日、欧州委員会はICAO総会の結果に沿った、EU ETSに利用可能な選択肢の影響評価を公開した。それと共に、ICAO総会決議を順守して、EU ETSの適用対象外になるだろう国家のリストも一緒に公開した。
 EU ETS提案を説明するために招集された火曜日の利害関係者会議で、市場に基づく国際的な対策開発のためのICAOの作業工程に欧州は集中しなければならないと欧州委員会の当局者が述べた。彼等によれば、たとえ世界の航空交通の55%にあたる国家がパラグラフ16の内容を留保していても、ICAO決議の物議を醸すパラグラフ16を欧州委員会の提案は順守するだろうとのことだ。

 パラグラフ16aでは、新規にMBMsを設計する場合とEU ETSのような既存のMBMsを国際航空で実施する場合、国家は「前向きな二国間及び/または多国間の協議に従事するべきであり、合意に達するために他国家との調整に従事すべきである。」と書かれている。当局者が指摘したのは、これは合意に至らない場合の実施を禁じてはいないということである。ICAO総会では、欧州の国々は「双方の合意」原則を拒否し、留保に入った。

 欧州委員会の提案の下では、炭素制度へ必要な調整を可能にするためと、EU加盟国が自国の法律に変更を反映させるための、1回限りの、2年間の対応期間がある予定である。そのために、準拠性に関する報告もなければ、2015年3月の終わりと4月までにそれぞれ、航空機運航者が排出枠を放棄するための要件もないだろう。当局者はこのことがまた、第三国との二国間交渉を行うための時間を稼ぎ出すと信じている。

 パラグラフ16bは、国際民間航空活動の占有率が、国際有償貨物トンキロ全体の1%の範囲に満たない発展途上国を離発着する飛行経路上にMBMsを適用するにあたっての例外を認めている。欧州委員会はこの例外を適用する予定であること、世界銀行によって低所得、或いは中流の下層所得経済に分類される国家を「発展途上」と定義し、EUの関税規則で、一般特恵関税制度(GSP)の恩恵を受ける国家と定めた。昨日、欧州委員会は範囲に満たない、GSPの恩恵を受ける73カ国のリストを公表した。欧州経済地域(欧州連合加盟国28カ国とアイスランド、ノルウェーそしてリヒテンシュタイン)内にある空港から直接離発着することのない国家はリストから除外されている。

 利害関係者会議では、EEAの外側にあって現在は除外されているスイスが、まもなく航空のEU ETSに加わる見込みだと当局者が公表した。

 欧州委員会の提案への速やかな反応として、インド政府の航空大臣であるKN Shrivastava氏はロイターに対し、欧州委員会の提案は総じてICAO総会の決定と相容れないので、ICAOが介入すべきだと述べた。ロイターの報告にはまた、米国エアラインのEU ETS参加を阻むことを米国の運輸大臣に許可する法律を共同提案した上院議員のJohn Thune氏が、Anthony Foxx大臣にあててECの提案はその法律に直接違反していると手紙を書いたと書かれている。空域による方式をICAOで提案した米国の政権は、公式には炭素排出制度に関する欧州の計画に対してまだ反応をしていない。

 まず最初に共同で決定する段階で合意されるべきところ、欧州委員会の提案は現在欧州議会とEU加盟国によって調査が行われている。その提案がICAO総会決議を順守しているとの信念が欧州委員会にはあっても、EU加盟国はインド、ロシアそして中国のような国々とのさらにもう1ラウンドの闘いに巻き込まれるのを警戒する可能性がある。

 先週の中国への貿易使節団の訪中時に、英国の大蔵大臣であるGeorge Osborne氏は、中国の建設会社がマンチェスター空港を空港都市として開発するための8億ポンド(13億ドル)のプロジェクトの主要な投資者になることを公表した。

 ロンドンでの月曜日の英国空港運営者協会の年次総会でのスピーチで、英国の航空大臣であるRobert Goodwill氏は、市場に基づく国際的対策の開発のICAOでの国際的進展を歓迎した。彼は付け加えた。:「私は、ルクセンブルクでの最近の欧州連合輸送委員会で、国際的な合意確立のために我々は作業すべきで、欧州においてのみ進めて競争を歪めるべきでないと明言した。」

 彼の発言を説明して、運輸省の広報担当がGreenAirに語った。「航空による排出物を扱う国際的合意に向けてICAOで前向きな進展が行われたのに続き、欧州委員会は航空のEU ETSを修正する提案を採用した。英国は提案を詳細に検討しており、これからの交渉の過程において、EUや国際的なパートナーらと密接に連携して作業をするだろう。」

 昨日公表された影響評価の中で、欧州委員会は2020年までの期間において国際航空排出物を規制するにあたり、EUによる活動の可能な選択肢を提示した。それによれば、その期間中にEUが確保せねばならない2つの明確な目標があるとのことだ。すなわち、国際航空からの全排出物を対象とする国際的なMBMの、2020年までの開発促進と実施であり、実施の保留であり、EEA内に離発着する全フライトからの排出物を対象とするEU ETSを継続することである。

 航空機運航者がEEA空港に離発着するフライトの全排出物に責任を持つようなEU ETSの完全実施を復活させることは、さらに国際的な反発を招き、国際的MBMについてのICAOの将来の交渉を妨害する危険性があると昨日の影響評価では認めている。

 空域の選択肢或いは、欧州委員会が混合選択肢と呼びたがる選択肢には国際政治の受容性が高いという利点があるとのことで、その理由は排出物の対象範囲がEEA内に限られているからとのことである。それはまた、現在の監視、報告及び検証(MRV)システムに基づいた実施が可能で、経由便も直行便も等しく対象とするため、公平性をゆがませる可能性を避けられる。EU ETSの完全実施と比較して、空域の制限が海岸から12海里(ノーチカルマイル(NM))まで拡張される領海で定義されるか、海岸から200NMまで拡張される排他的経済水域によって定義されるかによって、対象になる排出物は混合選択肢で39或いは47パーセントまで減る。

 「時計を止める」方式と同様に、EEA内部のフライトのみ残してEEAの外側のフライトは一般的に対象外とする場合、EU ETSの完全実施の場合に対象となる排出物と比較してたった25%しか対象にならない。

 欧州委員会が考えている他の代替案には、EEA内の全フライトと非EEA国家へ出発する便を対象とする出発便選択肢がある。影響評価によれば、この方式は、EUがICAOのMBMの枠組みの地理的範囲として最初に提案したものだったが、多くのICAO加盟国に拒否された。

 ほとんどの環境NGOが好むのはEU ETSの対象範囲をEEAの外部に離発着する便の50%に制限する50/50の選択肢だったと、欧州委員会は報告したが、この選択肢はICAOで検討されることはなかった。出発便と50/50選択肢の両方で、完全実施の排出物の62%の対象範囲になると欧州委員会は見積もっている。

 欧州委員会が検討したが、競争力にマイナスの影響を与え、監視・報告・検証を完全に変更することが必要で、新規に法的な異議申し立てが出されるリスクがあるという理由で却下したアップストリーム選択肢からも同様の対象範囲は可能だったろう。この選択肢の下では、制度を順守すべき存在は航空機運航者の代わりに燃料供給者になり、燃料供給者はEEA空港へ販売した燃料に応じた排出枠を放棄することになっただろう。燃料供給者の棚ぼた利益を避けるため、すべての排出枠は競売にかけられ、無料排出枠が割り当てられることはなかっただろう。法的リスクはそれが燃料税或いは燃料費に相当すると判断され、従ってシカゴ条約と航空業務合意の下では容認されないだろうということだ。

 欧州委員会の文書はまた、選択肢の社会的影響や管理上の影響を考察し、様々な利害関係者やこの件に関して行われた公的諮問について報告している。

リンク:

欧州委員会−影響評価
欧州委員会−対象外となる国家一覧
欧州委員会−法制に関する立案