海外情報紹介 中国と他の主要新興国は自国をカーボンニュートラル成長対策の参加国から外すようICAOに主張

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1777

 2013年11月4日月曜日 − 最近開催されたICAO総会の結論が出た後、ICAO事務局長宛に出された公式の留保通知の中で、中国は、2020年からのカーボンニュートラルな成長目標の義務を差別化することなしに採用すると、自国の国際航空活動の発展を妨げることになると主張している。国際航空排出物低減目標設定を支持はしても、発展途上国の排出物増加の相殺を含む低減対策を先導する役割は、先進国の負うべき責任であると中国は主張している。別の新興勢力として、ICAOで合意した共通の国際的努力目標の再評価をすべきだという内容の書面をブラジルが、中国と同様に事務局長宛に出している。一方、アメリカ合衆国はICAO総会の気候決議のde minimis条項(影響度の低い条項)と差別化した責任原則を決議に含めたことについて異議を申し立てる書簡を出している。
 先月の早い時期に開催された第38回ICAO総会は国際航空排出物の増大を制限するため、市場に基づく国際対策(MBM)開発で合意して加盟国が前に踏み出し、大成功であると歓呼の声で迎えられた。2016年の次回総会で、2020年を開始年として国際的MBMを採用するかどうかについて加盟国が決定を行うと見込まれている。

 しかし、総会が進むにつれ、暫定的な国家的制度やEU ETSのような地域的制度のみでなく、国際的制度においてさえ、どの国家が係わるべきかについて先進国と発展途上国の考えの間に深刻な対立があることが露わになった。この問題に関する実行委員会での話し合いは、会議終了前日に危うく決裂するところだった。

 ICAO総会ウェブサイトに掲載されたばかりの留保のための書簡第一陣 − これから先もさらに提出が見込まれているが− から明らかなことは、実現されるはずの制度は現状のままでは名前のみ「国際的」な制度になりかねないということだ。

 10月8日付けの書簡の中でICAOへの中国代表団が明確にしているのは、すべての加盟国が対応せねばならないとしても、発展途上国には対処すべき重要な懸案事項があるのだということである。中国と他の11加盟国はMBMsや国際的MBM制度、2020年からのカーボンニュートラルな成長目標やMBM原則の指針に関するパラグラフの修正を提案する文書を提示したと書簡は指摘している。

 かくして、「個々の加盟国に特定の義務を負わせることなく、ICAOとその加盟国は関連機関と共に、国際航空による2020年からの世界の二酸化炭素総排出量を同じレベルに保つため、共有の中間的国際努力目標達成に邁進する目的で協力して作業するだろう。... 」と記されているICAO決議のパラグラフ7に中国は異議を唱える留保を行った。

 目標設定のためには、航空市場の成熟度と同様に、加盟国、特に発展途上国においての特殊事情や個々の能力に配慮しなければならないと、そのパラグラフが認めるとしても、中国はそれが十分に機能するとは思っていない。「発展途上国の国際航空による排出物増大を相殺するために低減対策を採用するにあたり、先進国が先導しなければならないと明示されるべきである。」と中国の書簡には書かれている。

 アルゼンチン、キューバそしてベネズエラの代表でもあるブラジルもまた、パラグラフ7の留保を行った。「ブラジルは[ICAO総会において]前向きにこの主題に関する討議に係わったが、国際的MBM制度設立へ向けた作業という課題がICAOに与えられた今、この問題に関する将来の一連の話し合いまで我々はこの問題を保留するつもりだ。」と、ICAO事務局長に宛てたブラジルのICAO常任委員による書簡に書かれている。「もう一方で、ICAO加盟国の異なる発展の度合いを反映するために、我々の共通の国際的努力目標には、まだ再検討と一層の分析が必要であるというのがブラジルの理解である。国際民間航空領域の現在及び将来の成長展望を目の当たりにするにあたり、これは最重要課題である。」

 ICAO総会で通過した気候変動決議の最近の変更は、国際航空用のMBMsの設計及び実施に当たり、共通だが異なる責任と責任能力(common but differentiated responsibilities and respective capabilities, CBDR)、特殊事情と責任能力(special circumstances and respective capabilities, SCRC)、差別のない等しく公平な機会の原則についてMBMが配慮すべきであると記す、新規原則についての指針のリストを付け加えたことである。

 留保の陳述書の中で、米国はこのリストを付け加えたことに異議を申し立てている。「周知の理由により、CBDRの原則を含め、国連の気候変動枠組み条約(UNFCCC)の諸原則が、独自の法制度で管理されるICAOに当てはまるとは米国は思わない。」

 米国はまた、加盟国或いは加盟国の集団が国家的或いは地域的MBM制度を設計し実施する時に、国際航空の有償貨物トンキロ(RTKs)が1%に満たない占有率の発展途上国を離発着する路線については例外扱いを認めると記す、決議文のパラグラフ16(b)を留保している。米国としては、de minimisの概念は支持しても、1%が適切な範囲だとは思わず、範囲は運航者に対峙する国家的航空活動に基づくべきか、発展途上国への到着便か出発便のどちらかによって調整がなされるべきだという意見である。

 「ICAOの差別無しの原則や市場の歪みを避けるという原則を特に踏まえるなら、これらの基準は結局、de minimis概念を扱うには不適切な手段にしかならない。」と米国の陳述文は述べている。「適用された場合、このde minimisの範囲が世界の大部分の国家をMBMへの参加から除外するという影響を及ぼすことになるだろう。その上、そして条文の言葉に忠実な範囲設定が行われるなら、米国としてはそのような範囲設定には国際的MBMの開発において何の意味も持たないと判断する。」

 UNFCCCでは発展途上国と定義されるも、EUの排出量取引制度継続のための新提案では先進国と定義されるアラブ首長国連邦もまた、パラグラフ16(b)を留保する書簡を提出済みである。de minimis条項は甚だしい市場の歪みにつながる可能性があり、一部の航空機運航者に憂慮すべき不利益を与えることになりかねないと書簡には述べられている。

 「これはシカゴ条約の条項11に真っ向から対立する。」と書簡は述べている。「決議文のパラグラフ16(b)の表現は不明確なこと甚だしい。これでは混乱を招くこと必至であろう。」

 ICAOの国際的MBMの実用性の開発と設計のための3年間の作業計画が緒に就き、対立するICAO/UNFCCCの原則をいかに満足な形で解決しうるかにも注目が集まらざるを得ないだろう。総会が終盤にさしかかって、ほとんど前例の無い氏名点呼投票がMBM問題について行われたことで、自国の要求に関しICAO加盟国の大部分を占める他の発展途上国からの支持をとりつけようとする新興国の力が示された。