海外情報紹介 欧州議会の報告責任者は航空関連EU ETSを修正するなら排出量上限を厳しくして無料割当枠を減らすことを提案

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1793

 2013年11月28日木曜日−航空を欧州域内排出量取引制度(EU ETS)の規制対象にすることに関する欧州議会の報告責任者であるPeter Liese氏は、航空分野は同じ制度の他の産業と横並びにしなければならない、現在の上限より多く排出量を減らさねばならない、また、割当量の排出枠取引のレベルを高くしなければならないと述べている。航空排出物の規制範囲を元来の範囲から欧州の空域範囲へと狭めるという、欧州委員会の提案を彼は支持しているとはいえ、上限を厳しくすることで環境保全は部分的には保たれると彼は主張している。Liese氏はまた、次回ICAO総会で世界規模の炭素制度の進展をEUが再調査すべきであるため、空域方式を適用するのは2016年終わりまでであることを確実にするために、欧州委員会の提案に変更を望んでいる。彼はまた、排出枠取り引きの収入は世界規模の気候に関する財源と、航空排出物低減技術の研究開発投資に割り当てることを要求している。
 欧州議会を通じて新規の法律制定の舵取りをしているLiese氏は、欧州委員会の空域提案の根幹部分は支持すると述べた。ある者は完全実施への回帰を望み、他の者は1年間の「時計を止める」という適用制限を2016年まで或いはさらに2020年まで継続することを主張しており、欧州委員会提案の根幹部分は、欧州低運賃エアラインやいくつかのNGOそして多くの欧州議会議員を含めた利害関係者多数の意見の間の妥協案であると彼は述べた。

 「対象になるのが欧州内のフライトのみでなく、欧州でない国家へのフライトも、欧州空域内の飛行部分のみとはいえ対象になるので、このやり方は現在の『時計を止める』解決策よりずっとよい。」Liese氏の声明はこういう内容だった。「しかし、これは重要な点である。パリ或いはロンドンからイスタンブールの新ハブ空港へのフライトはほぼ完全に対象となるだろう。『時計を止めている』間は、これはまったく対象にならない。『時計を止めている』間は対象にならないアラブ首長国連邦のハブ空港へのフライトについても同様で、欧州委員会の提案によって部分的には少なくとも規制対象になるだろう。」

 Liese氏は、第三国を離発着するフライトはこの制度の適用対象から外せないと強く主張した。「2016年まで『時計を止める』のは私や多くの他の欧州議会議員の選択肢ではない。」と彼は述べた。「欧州内で離発着するフライトを、その欧州空域内部分についてすべて規制対象とすることは必要不可欠である。これは欧州のエアラインとその競合状態において公平を期すためと環境保護のためである。」

 Liese氏は『時計を止める』ことを延長すれば世界規模の制度設立に関する国際交渉において欧州連合による『無条件降伏』ととられかねない、と述べた。

 欧州委員会の提案は2020年までのEU ETS指令のさらなる修正を見越してはいないが、彼の公式な提案を欧州議会議員各位によって検討してもらうために、説明のための声明において、Liese氏は、欧州指令の修正が正当化されるのは世界規模の航空排出物に関して法的拘束力のある合意が見込まれるのが2016年のICAO総会だからであると述べた。「これが現実的選択肢であれば、指令の修正が保証されることはまずない。」と彼は述べた。「それが、2016年まで空域方式で規制し、2017年からのETSの完全実施の再導入が妥当である理由である。2016年にICAOで国際合意が現実に承認された場合はもちろん、欧州連合はそれに従って法律を修正するにやぶさかではないはずだ。」

 とはいえ、2016年にICAOで合意に達するという確信がLiese氏には無いようだ。「〔最近のICAO総会において〕モントリオールの10月からの取り決めはもはや、ワルシャワでのUNFCCC COPでなされた取り決めほど的確でも意欲的でもない。」と彼は述べた。国際航空に関する、市場に基づく国際対策開発のためのICAO総会決議は、重要な一歩ではあったが、多くの条件や前提条件がついてしまったと彼は付け加えた。

 「2016年に国際合意がなされなければ、それ以降は我々の制度を完全実施する準備をする必要がある。これはつまり、大陸間飛行も規制対象とすることを意味するだろう。」

 一般的な産業の平均競売率が40%なのに15%というレベルであり、他の産業が2020年までに21%排出物を低減しなければならないのに多くて5%という、航空領域を優遇することは、2007/2008年に欧州指令を立法化する過程で欧州議会からの批判の的になっていた、と彼は述べた。

 空域方式はEU ETSの元来の規制対象のわずか40%にまで、対象排出物を減らしてしまうと彼は述べた。「環境への悪影響を制限するため、競売のレベルを引き上げることは正当化され、少なくとも他の産業がすでに2013年の始めから順守しているレベルまでは排出物を減らす必要性がある。」

 もう一つの修正として、Liese氏は競売の収入は、EU ETSの管理費用をまかないつつ、UNFCCCの環境のための気候基金に寄与しながら、EU及び第三国における気候変動軽減と順応の財源、低排出物輸送のための財源に割り当てることを提唱している。このことがEU ETSの国際レベルでの信用を打ち立てることになろうと彼は述べた。

 そのような約束には、元来の欧州指令を通過させる時に欧州議会によって異論が出たとLiese氏は述べた。「その時点では、加盟国はこれを受け入れる準備ができていなかったので、欧州指令に入っているのは勧告のみである。加盟国がもっと明快な約束を受容していたら、EU制度の承認は楽だっただろう。」

 法律の修正が4月終わりまでに通過しない場合には、元来の形での欧州指令が復帰するので、Liese氏は、欧州議会と欧州連合理事会の共同決定プロセスを速やかに進めることの必要性を強調している。この問題に関する環境委員会の投票は1月30日に行われ、欧州委員会と欧州連合理事会との3者会談後の4月の全体会議で最終投票が行われることになるだろうと、彼は言った。

 2013年12月16日に環境委員会が報告書案を検討する予定で、輸送委員会は欧州委員会の提案に関する独自の報告書案をほぼ同じ日程で検討の予定である。加盟国28カ国の環境大臣が2013年12月13日の会合でこの問題を話し合う予定になっている。


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Peter Liese氏の声明