海外情報紹介 国際航空のための〈非現実的〉なカーボンニュートラル目標と市場に基づく対策を再考するようロシアがICAOに要請

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1786

 2013年11月18日月曜日−最近開催されたICAO総会で市場に基づく国家的な対策や地域的な対策(MBMs)の役割を希薄化するため、主要な新興国家と共に主導的役割を果たしたロシア連邦は、2020年からの国際航空のカーボンニュートラル目標は非現実的だとコメントしている。そのような目標はMBMsの必要性をあらかじめ決定づけているが、MBMsは、ロシアに言わせると、国際航空領域の温室効果ガス排出を現実的に低減する可能性を減少させ、技術発展の速度は速くはないので、飛行の安全にも悪影響を及ぼしかねないとのことだ。排出物低減を現実に達成するには、ICAO理事会がICAO総会の気候変動決議で設定した目標を「再考」するようにと、ロシア連邦は要請している。カーボンニュートラル目標(CNG2020)はまた、欧州からは熱心さに欠けると批判され、ロシア以外のBRIC国家からは異議が出されている。
 ICAO総会決議(現在の正式呼称はA38-18である。)の要素について、計61カ国から留保或いは抗議が提出され、現在ICAOウェブサイトに掲載されている。それを見ると、先進国と発展途上国の間に明確な境界線があることがわかる。

 ICAO総会決議の中でCNG2020目標を扱うパラグラフ7に抗議しているブラジル、ロシア、インド及び中国のBRIC国家に同調するのはアルゼンチン、キューバ、ベネズエラ、バーレーン及びサウジアラビアである。

 「努力目標とカーボンニュートラルな成長に関し、我々は懸念を抱いている。これらの懸念は他の国家も同意見である。」とサウジアラビアは述べている。「我々が欲するのはこれらの懸念を一掃するICAO決議である。負担となる費用影響無しに、我々の経済的及び社会的利益に合った我々の民間航空領域の開発を行う権利を支持する。」

 留保の陳述の中で、中国は努力目標については問題無いが、ただ、低減対策は主導すべき先進国に責任があると述べている。

 「中国代表団の意見は、発展途上国の国際航空はいまだ発達の段階にあり、異なる責任無しに2020年からのカーボンニュートラルな成長目標を採用するのでは、発展途上国の国際航空のこれからの発展を妨げることになるだろう。」と中国は述べている(記事を参照のこと。)。

 MBMsの考案と実施にあたり、ICAO総会決議に添付された指針のリストの中に共通だが異なる責任(CBDR)というUNFCCC原則の文章を入れて承認することで発展途上世界の懸念を取り扱う試みは、今度は、先進国の反対に遭っている。

 オーストラリアは留保文書の中で、CBDRが、差別無く、公平で、等しい取扱いという従来のICAO原則を弱体化させ、混乱を招く結果、及び/または、差別的な結果に結びつく可能性について述べている。「ICAOは特殊事情と責任能力(SCRC)に配慮して、あまり進歩していない国家や運航者について必要ならばこれまでにあらゆる特別配慮が可能であった。」とオーストラリアは付け加えている。

 CBDR原則は国際民間航空活動を管理する原則と相容れないとカナダは述べた。独自の地域的MBM制度であるEU ETSを引き合いに出して、欧州の44カ国はCBDRは国毎の活動に適用されると述べた。国籍によって運航者の間に扱いの違いがあったなら、市場の歪みと差別は運航者の間に存在することになるだろう、と欧州は主張し、付け加えた。:「発展途上の国家を本拠とする多くの航空会社は、実際には世界の中でも最も巨大で最も進歩し最も利益を上げる航空会社に属する。」

 国際的対策が実施される以前の国家的及び地域的MBM制度を取り扱う、ICAO決議のパラグラフ16に懸念を抱いているシンガポールは、対策は同程度に、公平にそして差別無しに、関連する全航空運航者に適用されるべきだとコメントした。パラグラフ7は別として、このパラグラフは主に、国際交通の市場占有率が1%に満たない発展途上国を離発着するルートをde minimisで適用除外とすることに関して最も多くの異議を引き寄せた(パラグラフ16b)。このパラグラフが市場の歪みを引き起こす可能性を指摘するのは先進国のみならずカタール、アラブ首長国連邦そして興味深いことにアフガニスタンもである。

 欧州空港を離発着するフライトの欧州空域内の排出物を一方的にEU ETSの規制対象とすることにICAO総会決議がゴーサインを出すものと見込んで、欧州はICAO総会に参加した。ロシア及び発展途上のその連邦構成国家群はその規制範囲に影響される第三国の合意を得られたときのみMBMsが実施されるように文章を変更させることに成功した(パラグラフ16a)。

 当然、欧州諸国はこのパラグラフに留保を提出し、加盟国が自国の法と規制を全加盟国の航空機に対し差別無く適用する権利をシカゴ条約が認めており、ICAO総会決議はこの権利を縮小しなかったと述べた。

 欧州はまた、2020年までのICAOの年間2%の燃料効率改善目標を以てしても世界の航空排出物は2005年のレベルよりほぼ70%増加することが見込まれているため、CNG2020の努力目標を中途半端に野心的であると表現した。2005年レベルと比較した、2020年までの10%の世界規模の低減を目標として常に推奨してきた欧州の立場に変化は無いとのことだ。

 2週間前、環境保護と気候変動に関する2つの決議(A38-17とA38-18)に続くこれからの3年間の作業について検討する目的で、ICAOの環境保護委員会であるCAEP総会から第一回目の会議に46カ国の代表がドバイに集合した。

 ICAO総会後の第1回目ICAO理事会会議は今週始まり、国際的MBMに関わる将来の作業計画についての討議もまた行われることが見込まれている。

リンク:
ICAO第38回総会決議とA38-18の留保一覧

A38-18決議内のパラグラフに対する加盟国から提出された留保一覧
* ブラジルはアルゼンチン、キューバ及びベネズエラと共同で提出
** EU/ECAC加盟国42カ国の代表として
*** オーストラリアもまた、序文のパラグラフ10とパラグラフ6,7,20と21のSCRC或いはCBDRの解釈を容認しない。

パラグラフ7:
2020年からのカーボンニュートラルな成長の世界規模の努力目標
パラグラフ16(a):
国家的/地域的MBMsに関する双方の合意
パラグラフ16(b):
発展途上国に就航する航空路に関して1% RTK(有償トンキロ)のde minimis

附属書の原則(p):
MBMsのCBDR/SCRC/差別無しへの配慮義務