海外情報紹介 Liese氏はEU ETSの空域提案を支持するという、欧州議会の委任を受け、収入の使い道に照準を合わせる。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1817

 2014年1月30日木曜日−欧州議会の環境委員会(ENVI)は今日、欧州内を離発着する全便による、EU/EEA空域内の排出物を規制対象にすることを目指す、欧州委員会の空域提案支持に賛成して49対6で票決した。環境委員会はまた、欧州委員会が提案したように、空域による規制を2020年までというより2016年までに制限しようとする欧州委員会提案への修正及び、EU ETSの排出枠取り引きの収入を気候関連の財源にあてるという、EU加盟国による法的拘束力のある誓約をこの欧州指令への導入を、可決した。この票決により、その立法化について欧州連合理事会を通じて欧州委員会と加盟国との交渉を行うための権限委任がEU ETS指令の報告責任者であるPeter Liese氏に対して行われた。加盟国の大部分は欧州委員会提案に反対で、2012年の間だけは規制対象をEU/EEA内のフライトの排出物に制限するという『時計を止める(STC)』取扱いの継続を望んでおり、これは産業委員会と運輸委員会(ITREとTRAN)の欧州議会議員も同様であり、2月と3月に予定される合意を得るための三者会談では激しい議論になりそうである。
 Liese氏いわく、ENVIの投票は、EU ETS指令の完全実施に戻ることを望む欧州議会議員のGreen党とエアライン団体1つ(欧州低運賃エアライン協会)の立場、ICAOが市場に基づく国際対策による解決に至るのを待つためのSTCの継続にそれぞれ賛成の票決を行ったITREとTRANの立場、この2つの間の、公平な歩み寄りを反映しているとのことだ。

 しかし、同席した欧州議会議員のChris Davies氏が、ITREとTRANの意見がひっくり返されるような、このような案件は欧州議会全体で検討されるべきだと言ったため、ENVIの投票は居心地の悪いものとなった。「この件ではPeter Liese氏を支持せざるを得ないが、大いに非民主的な手順で行われることに大変居心地の悪さを感じている。」と彼は環境委員会の席上で述べた。

 ITREの報告者であるEija-Riitta Kohhola女史は、投票の結果は「望ましくないもの」であったと言い、以下のようにツイートした。:「たとえLiese氏が欧州議会の大多数の意見を代表していなくても、我々は彼に交渉の権限委任をしなければならなかった。ITREとTRANが欧州委員会の計画を拒否したことに注目することは重要なことである。我々は貿易戦争を望んではいない。ENVI委員会に委託された権限は並外れて弱いもので、これは三者会談において配慮されるべきである。」

 この件は−委員会の間で意見が一致しない案件の場合に通常とられる措置ではあるが−欧州議会の総会にかけなければならないので、それでは現在のSTC指令が期限切れになる4月終わりまでに法律を通過させる時間的余裕がないことになり、難しい局面であるとLiese氏は述べた。TRANから取られた要素もいくつかあるが、たとえ委員会の報告者が三者会談に参加しても、それについては「俎上に載ることはない」と譲歩したと彼は述べた。航空機運航者についてEU ETS排出量の上限を厳しくし、排出枠取り引きのレベルを上げるというLiese氏の提案は2委員会との妥協案に含まれている。

 彼は最終的なENVIの投票前に欧州議会議員の同僚らに対し、「たとえ100%満足ではなくても何も決定がされないよりはまだましであるとして、この権限委任を支持するよう」頼んだ。

 三者会談の会議は2月18日と3月4日に予定され、「交渉が簡単には進まないことが確かなので、」できれば3回目を3月の終わりまでに行うと、Liese氏は投票後の記者会見で語った。この交渉ではあらゆる方面で譲歩せねばならず、柔軟に対応しなければならないと彼は述べた。

 特にLiese氏が譲りたくないと思っている論点のひとつが、排出枠取り引きによって加盟国が得る収入の使い道についてである。欧州議会は指令の原型に、気候関連の財源に収入の使途を限定する条項を入れようとしたが、加盟国にとっては受け入れがたいことが判明した。彼に委任された権限で、そして他の委員会に支持されて、Liese氏は現在、この問題が交渉の一部であると言い張り、加盟国が排出量取引の収入をGreen Climate Fundや空気を汚さない輸送技術の研究開発のような、国際的気候財源に割り当てるよう強制する、法的拘束力のある条項が新しい指令には付け加えられるよう模索していると述べている。

 もし収入がこの目的に使用されるなら、EU ETSに自国のエアラインを参加させることを第三国がもっと進んで受け入れるだろうとLiese氏は主張している。彼に言わせると、欧州委員会の提案によって2015年から空域を対象とする規制を実施するのに先駆けて、2014年にSTCを1年間延長するなら、発展途上国と航空産業の排出物低減を支援する気候対策の目的で収入を使用するという前提に基いて修正したEU ETSの規制範囲を、非EU国家が受け入れるよう説得するのに使用されるべきであるとのことだった。

 「第三国をこのプロセスに巻き込むことは重要である。」とLease氏は述べた。「空域方式を受け入れてもらうよう努力し、実効のある国際合意のための地ならしをする必要がある。私が第三国と会合を持つと常に、EU加盟国の財務大臣の権限下に収入を留保するという議論を耳にする。これは欧州議会が変更をもくろむ我々の法律の弱点である。」

 「これは加盟国が非常に神経質になる問題だが、この状況では誰もが柔軟で実用的なものである必要があると、理解している。」

 Liese氏は、欧州連合理事会との歩み寄りは速やかに行われなければならない。さもないと時間内に修正が間に合わずに、すべての大陸間便を規制対象とする元来の法律が自動的に5月1日から効力を発するだろう。「これはNGOのいくつかと、エアライン産業団体の1つが好む抜本的解決策ではあろうが、意欲的に過ぎて第三国との間に多くの問題を引き起こすことになるだろうと私は思う。」と彼は付け加えた。「だから、誰もが今譲歩する必要があるのだ。」

 元来の規制範囲と比べて、空域提案は航空機排出物の35%しか規制対象にしないとはいえ、Brusselsに拠点があるNGOであるTransport & Environmentは、少なくとも、排出物の大部分が発生する、長距離便は対象となるだろうとコメントした。

 ENVIの決定を歓迎して、T&Eの航空管理者であるBill Hemmings氏は言った。:「空域の規制範囲を支持することで、欧州地域全体に渡り、欧州内便と長距離便の全便の排出物をEU ETSが対象とすることを、欧州議会議員は今確実にしているところだ。この決定はまた、支持するのを気にしているようにみえる加盟国メンバーがあるなかで、EUの主権を強固にする。

リンク:

ENVI委員会
TRAN委員会
ITRE委員会
投票後のPeter Liese氏の記者会見
Transport & Environment