海外情報紹介 EU ETSを順守しない航空機運航者はEU加盟国から施行命令が出されて50万ユーロの罰金を課される

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1827

EU ETSについて(環境省):
http://www.ets-japan.jp/ovs/ovs_4_2.html

 2014年2月24日月曜日−EU加盟国間の調整作業の一環として、2012年のEU ETS規制を順守していないエアラインやビジネスジェットの運航者にはこれまでに通知が送付された。欧州に拠点を置くある商用ビジネスジェットの所有者は英国の当局から2013年4月30日の期限までに必要な数の排出枠を放棄しなかったことで総額約50万ユーロになる罰金を課されたと言われている。各加盟国は法の執行の仕方が法律上で異なっており、他の加盟国が非順守の運航者すべてに通知を送付しているのに対し、英国は段階的アプローチを選択し、今のところほんの一握りの運航者に警告している。政治的な意志を試される場面として、いくつかのEU当局は、2012年に欧州内でフライトを運航しながらEU ETSの『時計を止める』適用制限に従わなかった中国、インドそしてロシアの運航者に罰則を課すべき立場に立たされている。
 ETS制度の下で2012年には、規制対象となる全炭素排出量の98%の排出源である航空機運航者が規制を順守したと、たとえ欧州委員会が報告しても、欧州を離発着する大陸間飛行の報告義務を一時的に保留する『時計を止める』適用制限が、順守しない運航者の数の解明を困難にしてきた。加盟国においてEU ETS制度の管理を担当する所轄官庁(CAs)は、そのような情報をなかなか開示しようとしなかった。

 加盟国は規制対象となる排出量を報告しない航空機運航者について1トンのCO2につき100ユーロ(米ドルで140ドル)の罰金を課す義務がある。「政治的便宜をはかるために加盟国が法定の罰則適用をただ差し控えることは不可能であり、程なくある時点で、EU規則の下で、非順守の運航者すべての名前を明らかにして恥ずべきものにしなければならない。」とAvocet Risk Management社のCEOであり、航空関連EU ETS順守に関する専門家であるBarry Moss氏が語った。

 罰金に加えて、英国のような加盟国数カに国は、罰金が支払われない場合に航空機の拘留、差し押さえ及び売却の最終権限があると、Moss氏は述べた。

 EU加盟国はまた、この問題が遅滞していると見なしているので機嫌が悪いEUの政治家らの圧力にさらされて行動を起こす予定である。欧州議会の環境委員会の最近の会合で、上級の欧州議会議員が、ETS指令を順守しない運航者については加盟国が速やかに対応するよう要求し、もし対応をしない場合には、航空関連EU ETSの将来の計画に関する加盟国との現在の三者会談交渉を頓挫させると脅した(記事を参照のこと)。

 2012年の要件を順守しない運航者がどれだけあるのか不明確であっても、欧州内で付属書1のフライトを運航する運航者はすべて航空機運航者保有口座(AOHA)の開設が必要で、各運航者の検証済み排出量についての情報とそれに対応するために提出された排出枠の情報はEU取り引き記録(EUTL)で入手可能である。

 「EUTLから我々にわかることは、ログの英国の欄に並んでいる422の運航者の内、エアライン2社を含めた、少なくとも40の運航者が明らかに2013年の期限までに2012年の排出量の排出量報告を行っていないか或いは十分な排出枠を放棄していない。」とMoss氏が報告した。「多くの場合EUTLは多くの運航者に対し適合性の区分を割り当てていないか、記録では単に一致しないから実際のデフォルト率は疑いなくずっと高くなるだろう。」

 英国の所轄官庁である環境庁は他の加盟国と比べてずっと多くの努力と資金をETS順守のためにつぎ込んできたと彼は指摘している。「EU加盟国数カ国ではデフォルト率は50%に近いと言われているが、公有財産の情報が無いので、実際の数字を独自に検証する方法が我々には無い。」

 「それに加えて、AOHAを開設していないという単純な理由で、EUTLに載っていないだけという航空機運航者が何百もある。欧州委員会が公表した最新リストの運航者の数は約3,750に上るのに対して、EUTLに載っている運航者は約1,280である。多くの運航者が『時計を止める』適用制限の恩恵を受けたかまたは2012年には欧州へ飛来する便が無かった可能性があり、他の理由で適用対象外となる可能性、或いはもう運航者が存在しない可能性もあり、数字には大きな不整合がある。」

 そのほとんどが不履行者となっている、CO2の年間排出量が1,000トンに満たない、2,000を超える小規模運航者を規制するという管理上の負担を所轄官庁が避けようとするのは理解できるとMoss氏は述べた。その分類に入らない、非商用運航者を規制対象外にすることは三者会談の討論の中で検討中である。

 50万ユーロ(米ドルで68万ドル)まではいかない罰金通知が英国当局から届いた航空機運航者の場合、運航者は必要な数の排出枠は購入したが、4月30日の期限までに放棄しなかったと考えられている。5月の早い時期に運航者が欧州連合の登録簿にログインしようとした時には、システムはもはや排出枠の放棄を受け付けなかった。

 「これまでの数ヶ月間、ドイツに報告を出した運航者のいくつかもまた、DEHStすなわちドイツの所轄官庁から罰則の警告を受け取ったが、大部分は全く取るに足らない誤りのせいだった。」とVerifavia社のCEOであるJulien Dufour氏が報告した。「例えばある運航者が数字を丸めたことで二酸化炭素の排出枠を放棄しなかったので、100ユーロの罰金が課されると告げられた。しかしこれらの例ではすべて、ETS指令を順守しないのは純粋な誤りのせいであると運航者が立証できる場合には、関連する所轄官庁は罰則の権利放棄を受け入れるだろうと思われる。」

 その一方で米国エアラインの事業者団体である米国エアライン協会(A4A)は、先週、2012年のETS指令の非順守運航者に関し、米国のエアラインは罰則の権利放棄を要求するようだと報告したロイターのニュースとは距離を置いた。

 「2012年の法の執行の軽減もしくは早い時期の義務の軽減を我々は求めているわけではない。欧州議会と欧州連合理事会が『時計を止める』適用制限の延長の可能性を考えている間は、2013年のフライトについては、EU ETSの完全実施というEU域外への規制適用に関する実施期限は効力を生じないと明確にすることを求めているのである。」とA4Aの環境関連の統括責任者であるNancy Young女史はGreenAir紙に語った。

 A4Aの会員はEU ETS制度が航空へ適用開始された当初から完全に制度を順守してきたと彼女は付け加えた。「いかなる状況下であれ、国際線を運航するエアラインに登録国の合意無くEUがETSを適用することについては、我々は引き続き疑問を呈する一方、EU ETS制度のEU内での適用には異を唱えることはなかったし、当協会の会員エアラインは『時計を止める』適用制限下ではEU ETSを順守した。」

リンク:

欧州委員会−EU ETSにおける航空
Avocet Risk Management社
Verifavia社
米国エアライン協会 (A4A)