海外情報紹介 航空関連EU ETSの『時計を止める』適用制限継続のための合意は、欧州議会の環境委員会委員の議員が投票でかろうじて拒否したため実現に躓く。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1837

EU ETSについて(環境省):
http://www.ets-japan.jp/ovs/ovs_4_2.html

 2014年3月19日(水曜日)−航空関連EU ETSについて2016年までは『時計を止める』適用制限を延長するという、EU加盟国と欧州委員会の間で得られた歩み寄りの合意を、今日の欧州議会の環境委員会(ENVI)の席上で欧州議員議員はかろうじて拒否した。この協定が承認されれば、市場に基づいた拘束力のある国際的対策(MBM)の2020年からの導入についてICAOで合意を得る余地を残すため、EU ETSの適用範囲を欧州経済地域(EEA)内のフライトに制限するという方式の地固めになるはずだった。三者会談の交渉でENVIの報告責任者である中道右派のドイツ人議員のPeter Liese氏がEU ETS規制に関してとりまとめた協定を、ENVIメンバーの内、緑の党と中道左派のメンバーは政党レベルで拒否すると決めていた。EEA空港を離発着する全国際便からの排出物をEEA空域を対象として規制するという欧州委員会提案を支持することについてENVIメンバーによる合意を得た時の賛成票の数に、今回の協定の賛成票の数は及ばなかった。しかし、Liese氏は来月の欧州議会全体の本会議の投票ではこの妥協案が承認されることを確信している。
 三者会談での合意に関してENVIの投票は賛成票が29で反対票が29だったが、これはつまりどちらの支持も過半数ではないということで、従って拒否と見なされた。

 この否決は、ENVIの欧州議会議員が「航空関連ETSへの脅しなぞ気にせず行動する」のを目指したスローガンを使って投票までの数日間に組織的活動を行った、支援団体であるTransport & Environment (T&E)にとっては勝利である。三者会談の合意には不備があるとして、T&Eは欧州議会議員に対し、「環境問題改善に、より効果的で公平な空域提案」を支持するよう促し、ロシア、中国そして米国など国際社会からの脅迫に屈服しないよう要請した。欧州委員会は新しい法律が合意を得られるまではEU加盟国がETS制度を強制する必要はないと言明しているので、欧州連合理事会を通じてEU加盟国との間によりよい協定の交渉を行う時間的余地がまだ残っているとT&Eは主張した。T&Eは空域で規制する方式に賛成している。

 「航空に関するETSは増大する航空排出物に取り組むために、現在実施されている唯一の国際的気候変動対策である。」とT&Eの政策担当役員であるAoife O'Leary氏はコメントした。「ETSを効果的に解体するだろう三者会談での歩み寄りは間違った協定であり、当然欧州議会に拒否された。この決定がEU加盟国の政治指導者達や産業界、その他の国家に、EUの主権は外部からの脅しには影響されないという明快なメッセージを送っている。」

 しかし、欧州連合理事会と合意した協定を拒否したことはフィンランド人の欧州議会議員であり、産業委員会(ITRE)のETSに関する報告責任者であるEija-Riita Korhola女史を怒らせた。「またしても民主的欠如の恥ずべき実例である。」と、彼女は少数派であるENVI委員会での投票結果についてツイートした。

 この投票結果は欧州の主要航空会社の代表である欧州エアライン協会(AEA)にも非難された。「ENVIの投票結果にはとても気をもんでいる。」とAEAのCEOであるAthar Husain Khan氏は述べた。「ENVIは今日、航空関連ETSを推進する道筋を明確にしそこねた。三者会談での合意が4月30日までに正式に採択されなければ、ETSの完全実施が適用されることになる。ここ数年我々が経験した、航空関連ETSを取り巻く国際的論争を考えると、ETSの完全実施は現実的な選択肢ではないと我々は考えるし、欧州のエアライン、欧州エアラインの運航やその従業員に悪影響を及ぼすだろうと我々は考えている。さらに、この動きが昨年ICAO総会で得られた合意を危険にさらす恐れがあり、国際航空からの排出物を低減するための国際的協定に到達しようとする努力を弱体化させる可能性がある。」

 欧州地域エアライン協会(ERA)は、ENVIの投票結果は「EU ETSの今後の混乱を増大させるだけだ。」とコメントした。

 ERAの事務局長であるSimon McNamara氏は、妥協案が投票によって通過した場合、欧州内の排出取引制度を作り出すことになると述べた。「この形式でのEU ETSは環境にほとんど利益をもたらさないかまたはまったく利益が無いだろうし、欧州のエアラインに不利益をもたらすことになるだけだ。」と彼は言った。「ERAの立場は常に、ICAOレベルでの国際制度では満足のいく合意をそのままにして、EU ETS制度全体を全便について保留すべきであるという立場である。」

 三者会談での合意は今のところ、提案された修正と合わせて、4月3日に開催予定の欧州議会全体での本会議にかけられることになりそうだ。T&Eによれば、Liese氏は本会議では今や空域提案に賛成するという元来のENVIの立場で出席せざるを得ない。

 しかし、投票後の声明で、Liese氏は、ENVIに支持された欧州委員会の空域提案よりもむしろ、欧州連合理事会と合意した歩み寄りの合意を、本会議が支持することに楽観的であると述べた。

 「EU加盟国の態度とEUの環境大臣や運輸大臣がこの問題に意欲的でないことに多くの同僚議員らが不満を感じていると私は知っている。」と彼は言った。「しかし、政治では現実と折り合いをつけなければならない。欧州議会自体は法律を施行できないのだし、妥協案を拒否した多くの同僚議員らは、さらに限定された方式が実施される可能性さえあると、議論の中で懸念を表明した。同僚議員らの多くはこの議論では残念ながらとても意見がまとまっているとは言い難い。」

 「私の所属政党[EPP, European People's Party]は妥協案を総会で審議し、圧倒的多数で妥協案を支持するだろうと私は確信している。TRAN[輸送委員会]の他の政党に所属する議員らがさらに意欲に欠ける提案を支持したことを考えると、我々と同意見な議員が過半数を占めることについて私はとても楽観的である。欧州委員会と欧州連合理事会からの正しい合図がこの点において有用になるだろう。」