海外情報紹介 2014年のEUの国際航空による排出物は1.6%増加し、初めて国際海運を上回る規模となる。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2249

 2016年6月21日火曜日−1990年から2014年の間、EUの国際航空による温室効果ガス(GHG)排出量の増加率は95%で、同時期の国際海運の増加率の24%と比べて、2014年には初めて国際航空による排出量が国際海運による排出量を上回った。この両部門を合わせると2014年ではEUのGHG排出量全体の約6%を占める。EUの国際航空によるGHG排出物は2013年と比べると2014年には1.6%上昇し、その一方で国内航空による排出量は0.8%減少した。EU加盟国28カ国とアイスランドを合わせた2014年の全体のGHG排出量は1990年のレベルを24.4%下回り、2013年から2014年の間には4.1%減少している。欧州環境機構(EEA)が最新版のEU GHG目録年次報告で、部門の大部分はGHG排出物が減少したと報告しているが、道路輸送は明らかな例外であり、また国際航空と国際海運が排出量増加に最も寄与している。

 ユーロコントロールがEEAに提供したデータによると、国際航空(ある国を出発して別の国に到着すると定義する)で使用されたジェット燃料ケロシンからのCO2排出物は、EU加盟国28カ国とアイスランド(EU-28+ISL)について、1990年の69.3Mtから2014年は136.4Mtへと増加した(下図1参照)。英国は2014年の排出物では最大排出量(24%)であり、次がドイツ(18%)、フランス(12%)、スペイン(10%)と続き、4カ国で全体の60%以上を占めている。

 国際海運からのCO2排出量は前年と比較して、2014年には0.2%まで減少した。

 図2に示すように、1990年以降の国際航空によるCO2排出物の増大は、9/11(同時多発テロ)以降の落ち込みと、排出量が最大だった2008年以降の経済の再度の沈滞があったため、直線的な関係ではなかった。

 一方、同一国内で離着陸する国内民間旅客交通と貨物交通は1990年以降EU-28+ISLで5%だけ上昇し、2008年以降は連続した下向きの軌跡をたどっている(図3参照)。この排出源についてはフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国が全体の約85%を占め、フランスの2014年の国内航空排出物(4.4 Mt)が、2番目のスペイン(2.6 Mt)を大幅に上回っている(図4参照)。

 輸送部門のGHG排出物が2007年以降初めて上昇に転じて2014年に1.15 Mtになったことが確認され、欧州委員会が来月にこの部門の脱炭素化のための戦略を公表する準備中であると、ブリュッセルに本拠を置くキャンペーン組織のTransport & Environment (T&E)が指摘している。

 「これらの数字が、輸送部門の排出物に関して欧州は危機を脱していると考えていた人々に警鐘を鳴らす。」とT&Eの事務局長のJos Dings氏は語った。「輸送部門が現在疑いもなく欧州最大の気候問題なのである。」

 T&Eの航空・海運担当重役のBill Hemmings氏は、航空と海運の排出物管理のため、有効な施策が欧州レベルで緊急に必要であるということをこれらの動向が示していると語った。

 「欧州が、これまで実績の乏しい国連の2機関に航空と海運に係わる気候政策を単に任せてしまうなら、EUのパリ協定への明らかな背信行為になる。」と彼は語った。「経済の他部門がすべてそうであるように、国際輸送部門もEUの2030年の気候目標に貢献する必要がある。」

リンク:
EEAによるGHG目録の年次報告書