海外情報紹介 国民から意見を募集するため、ロンドン3空港(ヒースロー、ガトウィック、スタンステッド)の夜間飛行騒音削減の新方策に関する資料を英国政府が公開

交通省のニュース記事URL:
https://www.gov.uk/government/news/public-consultation-launched-to-cut-night-flight-noise-at-heathrow-gatwick-and-stansted
関連資料ダウンロードURL:
https://www.gov.uk/government/consultations/night-flight-restrictions-at-gatwick-heathrow-and-stansted
 英国政府はCivil Aviation Act 1982に基づき、直接、英国ロンドンのヒースロー、ガトウィック、スタンステッドの3空港の夜間運航の規制内容を定めることができ、通常5年間のサイクルで定期的な見直しがなされている。交通省は2017年1月12日に、同年10月から2022年までの5年間の夜間飛行騒音削減の新方策案を公開し、国民から意見聴取を開始した。意見聴取は2017年2月28日火曜日まで行われる。それら内容を検討して夜間運航の制限内容が公表される。なお、今回の意見聴取はヒースロー空港拡張推進を決めた2016年10月の政府声明とは関連性がない。以下はこの資料のポイントをまとめたものである。

 英国政府はCivil Aviation Act 1982に基づき、直接、英国ロンドンのヒースロー、ガトウィック、スタンステッドの3空港の夜間運航の規制内容を定めることができ、通常5年間のサイクルで定期的な見直しがなされている。交通省は2017年1月12日に、同年10月から2022年までの5年間の夜間飛行騒音削減の新方策案を公開し、国民から意見聴取を開始した。意見聴取は2017年2月28日火曜日まで行われる。それら内容を検討して夜間運航の制限内容が公表される。なお、今回の意見聴取はヒースロー空港拡張推進を決めた2016年10月の政府声明とは関連性がない。以下はこの資料のポイントをまとめたものである。
 夜間運航規制は、ヒースローでは1962年以降、ガトウィックでは1971年以降、スタンステッドでは1978年以降、何らかの方法により実施されている。さらに1993年以降、夜間飛行騒音削減を目的に、運航便数と騒音クオータの制限が課された。(騒音クオータとは、航空機の離陸時と着陸時の騒音量(EPNdB)に応じて0から16までのクオータカウントと呼ばれる数値を1機毎に割り当てて、空港毎に総和したものである。解説1)騒音クオータおよび夜間運航便数は夏期と冬期それぞれに制限値を定めて夜間飛行騒音削減を目指している。
 現行のロンドンの3空港の運航制限は、2013年に2段階の協議を経て2014年7月に設定されたもので、2014年10月から2017年10月の3年間は表1の通り運用している。なお、3年間としていたのは、英国政府は空港委員会による空港容量拡大に関する検討作業の結果を待ってから夜間飛行騒音の制限内容を変更したい意向をもっていたからである。

表1 ロンドン3空港の現在の季節別夜間運航便数と騒音クオータの制限

  ヒースロー ガトウィック スタンステッド
夏季の騒音クオータ制限 5,100 6,200 4,650
夏季の夜間運航便数制限 3,250 11,200 7,000
冬季の騒音クオータ制限 4,080 2,000 3,310
冬季の夜間運航便数制限 2,550 3,250 5,000
*適用外の航空機による運航便数は現在はこれらの制限に含まれていない。
 今回、英国政府は、今後5年間、夜間運航便がもたらす経済的恩恵を損なうことなく、かつ夜間に航空機騒音による甚大な影響を被る住民数を抑制あるいは削減するために、低騒音型機の導入を促すことを目的として、以下の内容を提案している。

・2022年10月までの5年間を今回の制限内容の実施サイクルとするが、相応の機会が生じた場合には、地域の特殊状況を鑑みて期日前でもより詳細な調整を可能にする。
・現在は夜間飛行制限の対象外となっている大部分の航空機を制限対象に含めるために、新しい騒音カテゴリーを設定し、現在対象外になっている航空機を各空港の運航数制限の中に確実に含める。
・ヒースロー及びガトウィックについては運航便数の制限は従来通りとする。また、低騒音型機導入を奨励するためにヒースロー及びガトウィックの騒音クオータ制限を引き下げる解説2
・ヒースロー:冬季43%減(4,080→2,340)、夏季50%減(5,100→2,540)
・ガトウィック:冬季17%減(2,000→1,655)、夏季21%減(6,200→4,870)騒音クオータ制限は今回の意見聴取で得られた意見を検討して最終的に決定される。
・スタンステッドについては、現在、制限対象外となっている約1,700便を制限対象に含めて、夜間運航便数制限を超えないように空港に厳格な運用を求める。これは、スタンステッドは、ヒースローやガトウィックに比べて、総運航便数に占める制限対象外の航空機の割合が大きいためである。なお、騒音クオータについては、スタンステッド空港の2016年夏季の騒音クオータの実績値が騒音クオータ制限に匹敵しているため従来通りとする。今後5年の間で引き下げることを検討している。現行の騒音クオータは、冬季3,310、夏季4,650である。

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解説1
騒音量とクオータカウントの関係

  騒音の範囲(EPNdB) クオータカウント
1 101.9を越える 16(2300から0700の間は運航禁止)
2 99 - 101.9 8(2300から0700の間は運航禁止)
3 96 - 98.9 4(2330から0600の間の定期便では運航されないかもしれない)
4 93 - 95.9 2
5 90 - 92.9 1
6 87 - 89.9 0.5
7 84 - 86.9 0.25
8 84未満 0(現在は適用外)
 ガトウィックではイージージェットによるAirbus A320neo、スタンステッドではライアンエアーのBoeing 737-MAXがこれからの数年間に多数導入されると予想されるため、今回の提案ではこれにクオータカウント0.125(81 – 83.9 EPNdB)の分類を加え、これらの機材が無制限に運航可能になることを防ごうとしている。

解説2
 ヒースローの騒音クオータの年次的推移における直近の実績値を見ると、2016年の冬季の総クオータは約2,500、夏季は約2,300であることが分かる。これらの実績値と今回提案された、冬季2,340・夏季2,540の数字を見比べると、夏季はかろうじて達成可能であるが、冬季は達成することが厳しいと予想される。


図1 ヒースローの騒音クオータの年次的推移
Night flight restrictions at Heathrow, Gatwick and Stansted, Consultation Document, January 2017から引用