英国民間航空局(CAA)が航空機騒音と健康影響に関する調査の概要をまとめた報告書(CAP 1841)を公表

CAP1841(2019/10/23)のダウンロード  CAP1713(2019/5/24)のダウンロード
 英国民間航空局が航空機騒音と健康影響に関する調査の概要をまとめた報告書を公表した。前回の報告書(CAP1713)が2018年4月~2019年4月の1年間に公表された調査を扱ったのに対し、今回の報告書は2019年4月~9月の半年間に公表された調査を扱っている。これからも情報の更新が行われる予定である。以下に今回の報告書の概要を載せる。

第一章:前書き
 この報告書は航空機騒音と健康影響の分野に関する最近の調査と発見について情報の更新をするものであり、2019年4~9月に公表された研究を対象としている。6月にマドリッドで開催されたインターノイズ2019で発表された研究も含まれている。これ以降もこの分野に関して新しい調査を簡単にまとめ、一般の人々や航空産業のために簡潔で利用しやすい形で半年毎に情報提供する予定である。ただし、英国民間航空局(CAA)は会議で報告された分析の正当性を確認することはせず、英国の政策に反映するかどうかの見解を表明することもしない。

第二章:インターノイズの報告
 9月のInternational Congress on Acousticsに参加する方を選んだ研究者が多かったのか、インターノイズにおける航空機騒音の健康影響に関する発表は少数だった。スイス・チューリヒ空港において夜間の航空機騒音が心臓血管系死亡率に及ぼす深刻な影響の調査、greater Paris metropolisにおいて交通騒音(自動車、鉄道、航空機)が健康寿命の損失に及ぼす影響の調査、ベトナム・ノイバイ空港周辺住民についての、航空機騒音曝露レベルと総体的な健康の間の関係及び、航空機騒音と心臓血管疾患の間の関連性に関する調査の概要がまとめられている。十分な裏付けによってWHOガイドライン(2018年10月公表)を批評するTruls Gjestland氏による発表もあったが、Guski氏による反応と共に前回の資料(CAP report 1713)で取り上げたため、重複を避けて今回の報告書では触れていない。

第三章:その他の調査
心臓血管疾患:スウェーデンのストックホルム県の2万人を超える住民の経時的研究による、交通騒音(自動車、鉄道、航空機)と虚血性心臓疾患や脳卒中との関係性の調査、フランクフルト空港周辺の健康保険会社のデータを用いた、疾病リスクに関するNORAH調査に基づき、複数の交通騒音が組み合わさることで、うつ病や心臓血管疾患のような健康上のリスクがいかに上昇するかと、そのリスク予測にふさわしい予測モデルに関する調査、ポーランドのクラクフ郊外の調査対象母集団の航空機騒音への長期曝露による血圧や動脈壁の硬化への影響についての調査について要約している。
睡眠阻害:アンケートを使ったアトランタ空港周辺住民の睡眠阻害に関する調査、3つの実験室調査における交通騒音(自動車、鉄道、航空機)の睡眠影響を分析した調査、パリ・シャルルドゴール空港とトゥールーズ・ブラニャック空港周辺住民の睡眠時心拍数に航空機騒音曝露が及ぼす影響の調査について要約している。
アノイアンス:継続的な騒音と間欠的な騒音との違いに係わる、交通騒音(自動車、鉄道、航空機)の暴露量と反応の関係についての調査について要約している。

第四章:概要
 この報告書では航空機騒音と健康影響に係わる過去半年間(2019年4~9月)の主要な発見のうち数件についての要約をまとめている。6月のインターノイズの発表や他の重要な調査を扱っている。航空機騒音曝露とあらゆる健康影響に係わるこのような形の要約レポートを6ヶ月毎に公表する予定である。9月にドイツで開催されるInternational Congress on Acousticsの発表は次回の報告で扱う予定となっている。