海外情報紹介 EU ETSの対象になることに反対のインドのジェットエアウェイズの訴えは、違反を不服としている中で却下される

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2074
2015年4月20日月曜日−EUの排出物取引制度(EU ETS)に違反したため、英国の環境局(EA)がインドのジェットエアウェイズに対抗した行動を起こし、それに抗議した訴えが英国の独立した法的審査官によって却下された。この事案は、2012年にジェットエアウェイズがEEA内で運航したフライトについて、EUと英国の法令が要求するCO2排出量報告の提出やその排出量を相殺するための排出枠の放棄を行わなかったことに関するものである。ジェットエアウェイズはその主張の中で、制度を押しつけるというEUの一方的やり方は、ICAO総会決議での世界的合意に反しており、また、インド政府が自国のエアラインにEU ETS順守を禁じていたと述べた。ジェットエアウェイズはEAによる算出で、CO2排出量150トンに対し15,000ユーロ(16,000ドル)の罰金を科される。 エネルギー・気候変動大臣によって任命された審査官であるDavid Hart QCに宛ててエアラインが提出した文書によれば、インドの航空会社はEU ETSのもとで排出データを提出する必要はないとインド政府が2011年11月に決定し、その後、EU当局との対応は事前承諾がある時のみ行われると通達を出した。インドのエアラインは2012年4月にEU ETSへの参加を正式に法によって禁じられたが、2013年ICAO総会で気候変動決議A38-18が合意に達した後の2014年5月にもこの立場をあらためて表明し、続いて欧州委員会とEAへの書簡でもこの立場を確認している。インドの他の主要エアラインであるエアインディアもまた、EU ETSのもとで排出量をEAに報告する必要があるが、ジェットエアウェイズと同様に義務が果たせていない。

しかし、Hart氏はICAO決議がEU ETS指令とは一致していないというインド政府の考えを受け入れなかった。「そのうえ、インド政府の考えはジェットエアウェイズを縛る法律としての意味はない。;EU加盟国と世界規模の交渉をしたいと思っているその他のICAO加盟国との間の交渉時のインド政府の考えに基づく明確な政治見解である。」と彼はこの事案の裁定で述べた。

インド政府による自国エアラインへの指令が法的にどのような拘束力を持つものかを明らかにするようEAが要求しているにもかかわらず、いまだに明らかにされていないと彼は主張している。

「根本的な問題は、ジェットエアウェイズがEU指令を順守する必要が無いといった、EU指令を無効にできる拘束力のある国際的な規約があるかどうかである。」と彼は続ける。「そのような規約は無いという私の出した結論がもし正しいなら、規約があるとしたインド政府の結論は間違っており、そのアピールがジェットエアウェイズを支えることのできない間違った考えのもとでの政治的方針である。行政機関は自らの意見によっては法を覆すことはできないというのが法の原則である。」

インド政府の指示とは関係ないが、EU加盟国内の裁決機関あるいはEU加盟国内の各国の裁判所には、EU指令の有効性を問う訴訟を受理する権限はなく、特にこのEU指令の有効性については、すでにEUの最高裁判所である欧州連合司法裁判所(CJEU)が支持しているとHart氏は主張した。しかし、その指令が無効であると言明する権限が彼にあるかないかにかかわらず、米国エアラインが2011年に起こした訴訟でのCJEUの判決は説得力があると彼は考えた。

ICAOのA38-18決議は、航空をEU ETSの対象とするEUの取り組みと対立するものではないと彼は語った。「世界規模のMBMを作り出そうとするICAO内の意図は、ICAO加盟国がICAOとして国際的な解決策の条件を決定しようとしている一方で、部門別のMBMで解決しようと決めるICAO加盟国の一団と一致しなくはない。」

ジェットエアウェイズがICAO総会決議を自社の事案のよりどころとしたことについても、ジェットエアウェイズとインド政府が頼みとするその文面について、EU加盟国が無理に留保を主張したことは無効であると彼は説明している。

「ジェットエアウェイズはICAO内では拘束力について合意を得たとみなしているが、それは決議が総意としていることではない。たとえ決議に拘束力をもたせることが可能だったとしても、関連する箇所に留保を行ったEU加盟国を拘束することはできない。」

これまでの総会で承認された類似の決議はICAO加盟国による拘束力のない政治宣言であり、たどるべき根拠の部分として国際機関のこれまでの決議を挙げることはないとする国際司法裁判所法38条にこのことは裏づけられているというCJEUの裁定に彼は言及した。

「最後に、ジェットエアウェイズは今回の事例に公平で公正を当てはめる必要性に言及している。欧州指令に関する私の解釈が正しいならば、そしてその欧州指令がジェットエアウェイズが頼みとするICAO決議の影響をうけるものでないなら、これらの考え方を使う余地はない。」と彼は結論づけた。

「これらの理由から私はジェットエアウェイズの訴えを却下する。ジェットエアウェイズが自社の排出量を規則21で規定された期間内に報告していなかったならば、EAには規則22の下でこれらの排出量を決定する義務があった。ICAO決議はこの義務を負わせることはできず、インド政府の指示もまた義務を負わせることはできない。」
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ジェットエアウェイズの訴えの判定