海外情報紹介 ストックホルム・ブロンマ空港の地上騒音が及ぼす地域住民への影響を低減するための解決策のコンテストをSwedaviaが開始

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1806

 2014年1月7日火曜日−スウェーデンの空港運営を行うSwedaviaが、ストックホルム・ブロンマ空港に近接するBromma Kyrkaの居住地域に影響を及ぼす地上騒音の低減のために、革新的な解決策を発見しようとコンテストを開始した。賞金として100,000スウェーデンクローネ(米ドルで約$15,000)を用意しているこのコンテストには世界中のどの国の個人や団体も参加が可能である。Swedavia曰く、求めているのは「革新的で才気に富んだ設計」を表すアイデアで、実現可能性、騒音低減、金銭的な健全性、美的感覚について一定の基準に沿っているものだそうだ。ブロンマ(Bromma)空港はストックホルム市の町の中にある空港で、市の中心からちょうど9km離れた場所にあり、最も近接する住民は滑走路からたった180mしか離れていない住宅に住み、航空機や空港車両の騒音にさらされている。コンテスト参加の締め切りは2月28日で、春に受賞者が決まる予定である。
 Swedaviaの空港革新化の挑戦2014開始を告げるにあたり、ストックホルム・ブロンマ空港の環境と品質の管理者であるJenny Svärd女史は言った。:「最良の解決策を見つけることによりBromma Kyrka地域にプラス効果の影響を及ぼすと思われ、我々空港と近隣住民にとって、これはとても重要な課題である。空港開発にあたり、環境問題と気候問題を賢明に解決することに、Swedaviaでは高い優先順位をつけている。

 コンテストには個人或いは団体の参加が可能だが、Swedaviaとしては音響、建築或いは工学の関連分野の背景を持つ学識経験者、専門家或いは団体が参加することが望ましいそうだ。今回のコンテストの目的は、空港運営者によれば地上騒音低減装置−例えば、滑走路と住居地域の間に設置可能な遮蔽物、壁或いは他の何らかの設置物−の設計と精査だそうだ。解決策は現在利用可能な工法や材料を使用して実施することができなければならない。

 応募内容は、アイデアを実行する場合の実現可能性の度合いや、騒音低減の度合い、外観が環境と調和する度合い、また、費用効果の度合いによって2次審査まで審査される予定である。Swedaviaの専門家がアイデア開発の手助けをすることも可能だろう。受賞作品はSwedavia、関連分野の専門家やBromma Kyrkaの住民代表によって組織された評価委員会によって4つの評価要素に基づいて選ばれるだろう。

 コンテストの登録のための暫定的な締め切りは2月14日で、アイデアの提出期限は2月28日である。

 Swedaviaは国営企業で、スウェーデンの10空港を所有し、運営し、開発する。スウェーデンで旅客輸送の規模が3番目に大きいブロンマ空港は、空港における年間の航空機離発着数と航空機運航による最大騒音レベルを規制するための環境上の許可権限を持っている。空港産業の空港排出二酸化炭素認証評価計画の最高レベルの認証基準要件に適った最初の数空港の内の1つであった。


リンク:

Swedaviaの空港革新の挑戦2014
Swedaviaと環境

海外情報紹介 中国と他の主要新興国は自国をカーボンニュートラル成長対策の参加国から外すようICAOに主張

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1777

 2013年11月4日月曜日 − 最近開催されたICAO総会の結論が出た後、ICAO事務局長宛に出された公式の留保通知の中で、中国は、2020年からのカーボンニュートラルな成長目標の義務を差別化することなしに採用すると、自国の国際航空活動の発展を妨げることになると主張している。国際航空排出物低減目標設定を支持はしても、発展途上国の排出物増加の相殺を含む低減対策を先導する役割は、先進国の負うべき責任であると中国は主張している。別の新興勢力として、ICAOで合意した共通の国際的努力目標の再評価をすべきだという内容の書面をブラジルが、中国と同様に事務局長宛に出している。一方、アメリカ合衆国はICAO総会の気候決議のde minimis条項(影響度の低い条項)と差別化した責任原則を決議に含めたことについて異議を申し立てる書簡を出している。
 先月の早い時期に開催された第38回ICAO総会は国際航空排出物の増大を制限するため、市場に基づく国際対策(MBM)開発で合意して加盟国が前に踏み出し、大成功であると歓呼の声で迎えられた。2016年の次回総会で、2020年を開始年として国際的MBMを採用するかどうかについて加盟国が決定を行うと見込まれている。

 しかし、総会が進むにつれ、暫定的な国家的制度やEU ETSのような地域的制度のみでなく、国際的制度においてさえ、どの国家が係わるべきかについて先進国と発展途上国の考えの間に深刻な対立があることが露わになった。この問題に関する実行委員会での話し合いは、会議終了前日に危うく決裂するところだった。

 ICAO総会ウェブサイトに掲載されたばかりの留保のための書簡第一陣 − これから先もさらに提出が見込まれているが− から明らかなことは、実現されるはずの制度は現状のままでは名前のみ「国際的」な制度になりかねないということだ。

 10月8日付けの書簡の中でICAOへの中国代表団が明確にしているのは、すべての加盟国が対応せねばならないとしても、発展途上国には対処すべき重要な懸案事項があるのだということである。中国と他の11加盟国はMBMsや国際的MBM制度、2020年からのカーボンニュートラルな成長目標やMBM原則の指針に関するパラグラフの修正を提案する文書を提示したと書簡は指摘している。

 かくして、「個々の加盟国に特定の義務を負わせることなく、ICAOとその加盟国は関連機関と共に、国際航空による2020年からの世界の二酸化炭素総排出量を同じレベルに保つため、共有の中間的国際努力目標達成に邁進する目的で協力して作業するだろう。... 」と記されているICAO決議のパラグラフ7に中国は異議を唱える留保を行った。

 目標設定のためには、航空市場の成熟度と同様に、加盟国、特に発展途上国においての特殊事情や個々の能力に配慮しなければならないと、そのパラグラフが認めるとしても、中国はそれが十分に機能するとは思っていない。「発展途上国の国際航空による排出物増大を相殺するために低減対策を採用するにあたり、先進国が先導しなければならないと明示されるべきである。」と中国の書簡には書かれている。

 アルゼンチン、キューバそしてベネズエラの代表でもあるブラジルもまた、パラグラフ7の留保を行った。「ブラジルは[ICAO総会において]前向きにこの主題に関する討議に係わったが、国際的MBM制度設立へ向けた作業という課題がICAOに与えられた今、この問題に関する将来の一連の話し合いまで我々はこの問題を保留するつもりだ。」と、ICAO事務局長に宛てたブラジルのICAO常任委員による書簡に書かれている。「もう一方で、ICAO加盟国の異なる発展の度合いを反映するために、我々の共通の国際的努力目標には、まだ再検討と一層の分析が必要であるというのがブラジルの理解である。国際民間航空領域の現在及び将来の成長展望を目の当たりにするにあたり、これは最重要課題である。」

 ICAO総会で通過した気候変動決議の最近の変更は、国際航空用のMBMsの設計及び実施に当たり、共通だが異なる責任と責任能力(common but differentiated responsibilities and respective capabilities, CBDR)、特殊事情と責任能力(special circumstances and respective capabilities, SCRC)、差別のない等しく公平な機会の原則についてMBMが配慮すべきであると記す、新規原則についての指針のリストを付け加えたことである。

 留保の陳述書の中で、米国はこのリストを付け加えたことに異議を申し立てている。「周知の理由により、CBDRの原則を含め、国連の気候変動枠組み条約(UNFCCC)の諸原則が、独自の法制度で管理されるICAOに当てはまるとは米国は思わない。」

 米国はまた、加盟国或いは加盟国の集団が国家的或いは地域的MBM制度を設計し実施する時に、国際航空の有償貨物トンキロ(RTKs)が1%に満たない占有率の発展途上国を離発着する路線については例外扱いを認めると記す、決議文のパラグラフ16(b)を留保している。米国としては、de minimisの概念は支持しても、1%が適切な範囲だとは思わず、範囲は運航者に対峙する国家的航空活動に基づくべきか、発展途上国への到着便か出発便のどちらかによって調整がなされるべきだという意見である。

 「ICAOの差別無しの原則や市場の歪みを避けるという原則を特に踏まえるなら、これらの基準は結局、de minimis概念を扱うには不適切な手段にしかならない。」と米国の陳述文は述べている。「適用された場合、このde minimisの範囲が世界の大部分の国家をMBMへの参加から除外するという影響を及ぼすことになるだろう。その上、そして条文の言葉に忠実な範囲設定が行われるなら、米国としてはそのような範囲設定には国際的MBMの開発において何の意味も持たないと判断する。」

 UNFCCCでは発展途上国と定義されるも、EUの排出量取引制度継続のための新提案では先進国と定義されるアラブ首長国連邦もまた、パラグラフ16(b)を留保する書簡を提出済みである。de minimis条項は甚だしい市場の歪みにつながる可能性があり、一部の航空機運航者に憂慮すべき不利益を与えることになりかねないと書簡には述べられている。

 「これはシカゴ条約の条項11に真っ向から対立する。」と書簡は述べている。「決議文のパラグラフ16(b)の表現は不明確なこと甚だしい。これでは混乱を招くこと必至であろう。」

 ICAOの国際的MBMの実用性の開発と設計のための3年間の作業計画が緒に就き、対立するICAO/UNFCCCの原則をいかに満足な形で解決しうるかにも注目が集まらざるを得ないだろう。総会が終盤にさしかかって、ほとんど前例の無い氏名点呼投票がMBM問題について行われたことで、自国の要求に関しICAO加盟国の大部分を占める他の発展途上国からの支持をとりつけようとする新興国の力が示された。

海外情報紹介 第38回ICAO総会においては国際的MBM実現を目指す工程表で加盟国の合意は得られても、欧州がEU ETSで敗北

2013年9月24日から10月4日までICAO本部で開催された第38回ICAO総会における気候変動対策の議論について続報を掲載します。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1762

第38回ICAO総会気候変動決議と留保文書ダウンロードサイト:
http://www.icao.int/Meetings/a38/Pages/resolutions.aspx

 2013年10月4日金曜日−ICAO総会での集中協議の2日後、2016年の次回総会で市場に基づく国際的な対策について決定を行うことを目指した工程表をたどることで加盟国は合意に達した。ICAOとしては珍しいことに、ロシア、中国そしてインドが率いる多くの発展途上国が提出した決議草案への最終の修正について昨日票決が取られた。敗北を避けようと欧州が試みたにもかかわらず、EU ETSに外国の航空機の運航者を対象に含めないよう目指した段落を草案に盛り込むという重要な投票で、発展途上国が本質的に勝利を収めた。2020年に実施する国際的MBM(Market-Based Measure 市場に基づく対策)を2016年に決めることを目指した進展と引き替えに、対象とする空域を減らすという枠組みでICAO加盟国が容認しやすくなるだろうとEUは信じていた。結局、EUは出し抜かれ、数で負けた。

 採用された決議の段落16(a)は、暫定的MBMsの実施を模索する国家或いは地域、またはすでに実施されている暫定的MBMsを持つ国家や地域は「合意に達するために、建設的な二国間及び/又は多国間の協議そして他の国々との交渉に従事する」よう求めるものである。アメリカ合衆国を含むいかなる加盟国も、EU ETSが自国のエアラインを対象とすることに自発的に同意することは全くありそうもないので、欧州はEU ETSを適用する範囲をEU内の飛行のみに制限せざるを得ないだろう。外国の航空機運航者によるEU内の飛行でさえ、運航者の登録のある加盟国の承認なしでは対象外にせざるを得ない可能性がある。

 2016年に国際的なMBMを採用するという合意を期待してすでに譲歩し、元来の法律に規定されていたような全離発着便を対象とするものというより欧州の空域内で排出された二酸化炭素排出量を規制するというEU ETSの適用範囲を狭めることを受け入れた欧州の威信に対する大きな打撃である。現在の特例措置で一旦適用を延期しているEU ETSの施行を、「意味のある」合意が実現しない場合には速やかに復活させるだろうとEUは常に主張し、ICAO総会に出された決議草案を進んで受け入れていた。もし、EUがさらに中国、インドそして米国との対決を再開することを望んでいるのでなければ、EU ETSの拘束力が及ぶ範囲を変更することを受け入れざるを得ないようである。適用範囲をEU内とすることはEU法に反するという欧州の格安航空会社からの法的行為に直面する可能性もEUにはある。

 段落16に「双方の合意」を差し挟むという発展途上国の提案を阻止しようとして、欧州の代表団は、元来の決議草案から段落16全体とそれに関連する段落を削除することについての投票を要求したが、大敗を喫し、発展途上国の提案を採用するという説得力のある投票で発展途上国が勝利した。

 発展途上国はまた、米国のような加盟国からの反対にもかかわらず、RTKsの国際的負担が全体の1%を下回る発展途上国を到着点及び起点とする飛行経路については、国家的及び地域的MBMsからde minimisの例外として扱うという要求を取り下げなかった。BRIC国家(ブラジル、ロシア、インド及び中国)はまた、国際的MBMを設計及び実施する時にde minimis及び特殊事情と個別の能力(SCRC)とUNFCCCの原則である共通だが差別化された責任(CBDR)を考慮する参照を挟み込ませるのに成功した。

 新しい草案(WP/430)にはまた、実現可能性と実用可能性を含む、国際的MBM制度の技術的側面、環境影響や経済影響、そして可能な選択肢の様式をまとめる作業がなされるべきだという要求が含まれている。草案はまた、加盟国の支持を得て(MBMの過程に係わるすべての加盟国からの一層の情報を確保するために草案にさらに追加された)、国際制度についてワークショップやセミナーを開催し、加盟国に影響を及ぼす可能性のある主要な論点や問題を特定し、対処するようICAO理事会に要請している。理事会は国際的MBMを採用するかどうかについての決定に関し、第39回総会に報告するよう要求されている。

 決議では2020年までに国際制度を実施するという言及を入れないというBRICS国家及びその支持国家による提案は取り下げられた。

 昨日、欧州は落胆を味わったにもかかわらず、欧州委員会委員であり、それぞれ気候と輸送の担当であるConnie Hedegaard氏と Siim Kallas氏は全体的な結果について楽観的だった。「EUの懸命な作業が功を奏している。:棚上げになった取り決めについて、ICAOは初めて航空排出物低減のための国際的方法に合意した。市場に基づく国際的な対策である。」とHedegaard氏はツイートした。今日の本会議の後、Kallas氏が以下のように続けた。「排出物の取扱いについては航空部門が真剣に取り組んでいると今夜のICAOの取り決めが示している。」

 今日の本会議においては、主に先進国からde minimisの言及について(段落16bとその他)、そして発展途上国からはICAOの(努力)目標(段落7)についての懸念が出されるなど、数多くの留保事項或いは異議が多くの加盟国から提出されたが、総会で決議文は承認された。

 EU諸国の代表として、リトアニア代表が、総会は成功を収め、EUは次回総会で国際的MBMについての決定を期待することになるだろうと述べた。地域的MBMsについて合意に達することができなかったことを彼は残念がっていたが、EUは引き続きICAOを支持するだろう、航空産業との一層の関わりを期待すると彼は述べた。これからの数週間に決議文のいくつかの留保事項に係わることになるだろうと彼は付け加えた。

 米国代表で、米国の気候特命使節であるTodd Stern氏は、航空は気候変動に取り組むための努力における優先事項であり、米国はMBMs関連の継続作業について勤勉に従事することになろうと述べた。米国にとってはまた、決議文の若干の要素は容認しがたく、特にde minimisとCBDRの言及は容認しがたいものだった。

海外情報紹介 地域的な二酸化炭素規制制度の実施をICAOが制限し、欧州エアラインはEU ETSの次の手に異議を唱える。

現在運用されているMBM(市場に基づく対策)を国際航空に適用する場合は「他国の合意が得られるよう二国間及び/または多国間の前向きな協議及び折衝に携わらねばならない。」という文章をICAOが第38回ICAO総会の気候変動決議に差し挟んだため、欧州域内排出物取引制度(EU ETS)の実施は制限されることになるのですが、それに係わる動きについてGreenaironline.comの関連記事の要約をご参考までに掲載します。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1764
 2013年10月10日木曜日 − 欧州議員が先週のICAO総会における気候変動関連合意について討議したが、欧州エアラインは、航空に関する欧州域内排出物取引制度(EU ETS)をEUがいかに継続するかについて意見が異なるようだ。欧州の大規模エアラインである2社すなわちRyanairとeasyJetが会員になっている、欧州低運賃エアライン協会(ELFAA)は、欧州委員会或いは欧州議会が設定した「最後の一線」の条件をICAO決議は何も満たしていないと主張する。それでELFAAは、今こそEUはEU ETSを元来の条件で施行するという誓約を守るべきであるとの意見である。それに反して、欧州域内の地域航空を代表する欧州地域航空協会(ERA)は、少なくとも市場に基づく国際的な対策(MBM)のICAOによる正式な採用が可能になる2016年までEUが制度全体の施行を保留すべきであると信じている。一方、航空のEU ETSに関する欧州議会の報告者であるPeter Liese博士は、欧州域内の飛行のみ対象とするような制限付きの、対象範囲を狭めた制度を彼の同僚である欧州議会議員らが支持することはありそうもないと述べた。

 先週金曜日に合意された総会決議に言及して(記事を参照のこと)、ELFAAの事務局長であるJohn Hanlon氏は言った。:「同業者で総会の結果を画期的な決議と称賛するものもあるが、ICAO加盟国は航空排出物に対処するための、市場に基づく国際的制度に関する提案を引き続き調査することに合意し、実際には実体の無い誓約があるだけで、さらに3年検討期間が続くだけである。ICAOはEUが公言した2つの目標を断固として拒否した。2つの目標とはすなわち−第1は、国際的MBM開発のための現実的な道筋で合意に到達すること、第2は、国家的及び地域的MBMを国際航空に包括的に適用するための暫定的枠組みの合意を得ることである。」

 「ICAOの会議をEUは、国家の、地域のそして世界のCO2排出量の低減に大いに貢献する機会として捉えていた。その機会は失われた。」

 EU ETSをEUの空域内のみの国際便による排出物に適用するという、総会前のEUの妥協案を欧州議会は支持していたのだがICAOに拒絶されたと彼は言及した。EUの気候担当委員であるConnie Hedegaard氏が「EU ETSの適用を保留する」という特例扱いを去年11月に公表した時に引いた「最後の一線」も守られなかったと彼は付け加えた。

 EU域内のみの便にEU ETS制度の適用を限定すればEU内の航空によるCO2排出量のほんの一部を捕らえるだけの、全体として環境改善効果のないものになるだろうとHanlon氏は主張し、EU ETSが米国のエアラインを対象とすることに抗議して米国エアラインが起こした訴訟で欧州裁判所が下した判定を考えれば、差別的であるが故に非合法なものになるだろうと彼は信じている(記事を参照のこと)。加盟エアラインが欧州域内定期交通の43%を超える割合を占めるELFAAは、EUの次の手が保留されたままであるこのEU ETSの問題について、すでに法的手続きを開始した。

 「EUは今こそ、法的に『全便を対象とした』施行に立ち戻ることで、EUの信頼性とEU ETSの環境的有効性を復活させるべきである。」とHanlon氏は述べた。

 50社を超すEU域内地域航空を会員とするERAは、異なる立場をとる。

 「我々の見解は、2020年から国際的な対策を実施するための工程表でICAOは合意に達し、これは欧州委員会や他の多数から画期的であると称賛され、従って今や地域的制度に出る幕はない。」ERAの事務局長であるSimon McNamara氏はGreenAir紙に語った。

 「EUはEU ETSをすべての運航について保留にし、2020年実施を目指し2016年に国際MBM制度で合意しようという取り組みを支持すべきである。すべての便について特例措置を2016年まで延長し、いかに進展させるかを決めるべきであると我々は信じている。」

 彼は付け加えた。:「欧州域内の便にのみ適用する制度を運用することには意味がないし、CO2排出物のほんのわずかな部分しか捕らえないだろう。− 国際的な制度を必要とする、航空は国際産業である。EU ETSはすでに我々の会員が管理するには複雑過ぎて費用がかかりすぎるので、欧州のエアラインが不景気からの回復を試みるている時には有益でない。」

 ERAはこれまでのところ法的な異議申し立て手段はとっていないが、欧州委員会が「施行を保留する」範囲を拡張するという決定をした場合、「差別的で非合法なものになる可能性があるので、とても慎重に我々の立場を再検討し、どのような手段をとるか決定するだろう。しかし、公平な結果を確保するために、我々はこれから3ヶ月の間欧州委員会と前向きに作業を行うつもりである。」とMcNamara 氏は述べている。

 国際的MBMの開発のための時間をICAOに与えるため、EU ETS全体の施行を保留して欲しいというERAの望みは欧州議会において多くの支持を得られることはなさそうである。

 航空をEU ETSの対象とすることに関してと、「施行を保留する」特例に関しての欧州議会の報告者であるPeter Liese博士は、ICAO決議の最終的な文面は、総会に先立ってICAO理事会が合意した妥協案より内容が弱くなってしまったと述べた。2020年までに国際的なMBMが施行されるかどうかは「遙か先のこと」だと、彼は付け加えた。しかし、総会で到達した合意はEUが強いプレッシャーを与えた結果達成された第一歩であり、維持されることが必要だと彼は述べた。

 EU ETS法をどう扱うかについての法的選択肢と政治的選択肢は分析が必要であるとLiese 氏は述べた。「我々の現在の法律では、2020年まで国際航空について排出物取引を保留することは不可能である。」と彼は説明した。「私の見込みでは、欧州議会は2020年まで欧州域内の便のみを対象とすることに合意しないだろう。」欧州内で離発着する全便から生じる欧州空域内の排出物を対象とすることは「絶対に必要である。」と彼は付け加えた。

 欧州議会がEU加盟国を代表する欧州理事会と共同で、来年4月までに法的文面を決定するに至らなかったら、欧州空港を使用する大陸間国際便全便を対象にする元来のEU ETS法が再び効力を発することになるだろうと彼は警告した。

 主要な航空ネットワークを運航する会社を代表する欧州エアライン協会(AEA)は、今のところEU ETS自体には意見を表明していない。ICAO総会後の声明では、AEAはICAO合意を称賛し、そのことはAEAの言及によると欧州連合にも歓迎されたそうである。

 「これは現実世界の政策にとっての勝利である。」とAEAの事務局長代理であるAthar Husain-Khan氏は語った。「まったく進展が無いよりは少しずつでも進展があった方がいいし、意見の分裂や対立よりはずっといい。」

 ICAOが国際的MBMのための仕組み作成に打ち込んだ3年間の、「今回は意見のまとめ役として」EUは自らの統率力を再確認すべきだと彼は述べ、以下を付け加えた。「ICAO内の多様性を共通の目的へと導くことは骨の折れる作業になるだろうが、最終的に得られる恩恵は莫大なものだろう。第一歩が踏み出されたが、これは重要な一歩である。」

 欧州委員会は近々、EU ETSをこれからどうするかに関する提案を公表する予定である。

海外情報紹介 ICAO総会での敗北にかかわらず、欧州委員会は空域を対象にEU ETSを適用

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1768

欧州委員会によるプレスリリース(原文):
http://europa.eu/rapid/press-release_MEMO-13-906_en.htm

欧州委員会によるプレスリリース(参考訳)
http://www.aerc.jp/index.php?ID=143

 2013年10月16日水曜日−市場に基づく国家的及び地域的対策(MBMs)に制限を設けるという、ICAO加盟国の大半による最近の決定にもかかわらず、欧州委員会は2014年1月1日から欧州域内空域でEU ETSを適用しようとする提案を行った。この間の総会の終盤の動きで、暫定的MBMsを各国のエアラインに適用する前に第三国からの合意をとりつけるべきであるという文章を決議に組み入れることに、ロシア、インド及び中国のような多くの新興大国が成功した。しかし、欧州の気候委員であるConnie Hedegaard女史は今日、EU加盟国には自国の空域を規制する国権があると述べた。今回の提案の下では、世界銀行の定義のような、世界の国際航空に占める有償貨物トンキロ(RTKs)の割合が1%未満の低所得国と中流の下層所得国を離発着する便は例外扱いとなり、ビジネスジェット機の運航者には新規の適用免除基準が設定された。

 Hedegaard女史は今朝の記者会見で、国際的なMBMを開発するというICAO総会での合意はEUの圧力無しでは成立しなかっただろうが、今や2016年までに詳細についての合意を得て2020年までに施行するという決定が下されたと述べた。

 「それは大変な朗報である。」と彼女は述べた。「もちろん、より多くの国家がEU制度を支持し、ここ欧州で着手された取り組みに航空部門が貢献することになればさらによかったのだが。2020年から始めるのではなく、今から始めるべきである。ICAO加盟国の大半は異なる意見だったが。」

 2016年に確実に合意を得ることが現在の重要事項で、それまで欧州は欧州の空域内及び上空を規制する国権を主張しなければならないと彼女は述べた。

 「2020年までに国際的なMBMを実現するための暫定的な解決策として、欧州地域の現在の空域に入る到着便及び空域から出る出発便を規制するための提案を今日、欧州委員会が行う理由がこれである。すべての国家 ...がもちろん、主権空域内を規制する我々の権利を認識していると私は思っている。明白な理由で、これは重要な原則である。他の国家がこの原則をないがしろにするなど、私の想像の範疇外である。」

 「我々は他の国々と協議したいと思っているが、重要なことは、欧州の主権が及ぶ領空内の規則を決めるのは我々欧州だということだ。ICAOの協議では欧州は前向きに大変努力したと世界の他の国々は認めて欲しいものだ。我々は『時計を止める』努力をし、今やそれが目的を達して、今度は2016年までの交渉周辺に必要な良好な雰囲気を作り出すために我々の法律を調整しているところである。提示されたそのままの意図をここから諸同盟国がくみ取ってくれるよう切に望む。」

 期限があるので、来年3月までにEU加盟国の代表である欧州議会と理事会が速やかに採択することを欧州委員会は望んでいるとHedegaard女史は付け加えた。

 航空をEU ETSの対象にすることについての欧州議会の報告者であるPeter Liese博士は、彼の同僚である欧州議会議員らがEU/EEA内のフライトのみを対象とするような『時計を止める』特例扱いの継続を支持しないだろうという不安を、近頃表明した。そのため彼は、欧州委員会の提案を歓迎し、欧州の空域内の全フライトを対象とすることで、欧州のエアラインにとってやっと条件が公平になるだろうと述べた。この意見には欧州議会の環境委員会委員長であるMatthias Groote氏も同意している。

 「時計は再び時を刻み始めるだろう。」とGroote氏は述べた。「欧州連合がその空域内で規制を行うのをとやかく言われることはなく、航空排出物をETSの対象として扱うのが我々の任務である。」『時計を止める』特例扱いが終了し、欧州内で離陸或いは着陸するすべてのフライトからの航空排出物が規制対象になることについて来年4月までに法律の新しい条文で共同の決定に至るだろうと彼は警告した。

 今回の提案の下では、欧州経済地域(EU加盟国28カ国とノルウェー及びアイスランド)内の空港間のフライトからのすべての排出物は引き続き対象となるだろう。2014年から2020年まではEAAの外側の国々から離発着するフライトは、欧州委員会に言わせると、EEA空域外で発生するこれら排出物について一般的適用除外扱いの恩恵を被ることになる。

 EEA空域の定義は、EEA加盟国領土の間での第三国上空或いは海域上空の距離が400海里を超える場合は例外として、EEAの領土の海岸線の外周上の最も遠い部分から12海里先の地点から、出発或いは到着のEEA飛行場までの距離である。外縁部の領域にある空港と第三国にある空港の間のフライトによる排出物と、EEAとEEA加盟国の海外にある国と領土、つまりはEEAの部分でない国家と領土の間のフライトによる排出物は対象外となる。

 さらに、スイスのような欧州内の第三国領域上空の排出物や、欧州本土とEU保護領及び準州の間の海域上空の排出物を扱う例外規定がある。そのため、例えば、スイスから離発着するフライトは欧州地域内を飛行する距離に応じてのみ、これからは適用対象となるだろう。

 欧州委員会はまた、『時計を止める』特例扱いからの動向や、空域による規制が2014年に開始されることに配慮するため、適合性や監視、報告や検証の規則に対して、多くの重要な調整を行った。

 国家的及び地域的な暫定版MBMsに関する、ICAO総会の気候変動決議の段落で重要な要素は、多くの国家が異議を唱えたにもかかわらず、MBMsのような制度から発展途上国を除外するde minimisの範囲に言及していることであった。「de minimis規則について我々は留保したが、2020年までの時間について話す限りは配慮をすることになるだろう。」今日、Hedegaard女史はそのように述べた。

 de minimisの例外規定が適用される場合は、国際航空の有償貨物トンキロ(RTKs)の占有率が全体の1%に満たない発展途上国を離発着するフライトは規制対象から外さねばならず、EUはだからこの原則を容認した。決議文には『発展途上』の明確な定義が無いので、欧州委員会は世界銀行から『低所得』または『中流の下層所得』と定義された国家を指すことに決めた。

 この定義を用いると、1%の範囲を超えるようなインドや中国やアラブ首長国連邦のような国々や、主要な東南アジアのハブ空港を離発着するフライトが欧州連合の空域の飛行部分についてはEU ETSの対象になるようだ。ブラジル、南アフリカ及びサウジアラビアのような国々から離発着するフライトもまた対象になる。というのもたとえこれらの国家が1%の範囲内に入っていても、世界銀行によって中流の上か高所得経済に分類されるため、新規提案の下でのEU ETSのde minimisの範疇外だからである[記事は10月17日に更新された]。

 欧州委員会は新しく提案した規制を、ビジネスジェット機やCO2の年間排出量が1,000トンを超えないいわゆる『少量排出者』のような小規模で商用でない航空機運航者を、管理業務単純化のため対象外扱いとする機会にした。これで、EU加盟国によって規制される航空機運航者の数は約2,200減少すると見込まれるが、これは排出量の0.2%にあたる。2013年の時点では、年間総排出量が25,000トンに満たない他の小規模な航空機運航者−商用或いは非商用にかかわらず−が、これから単純化された手順を利用することができる。

 競売にかけるべき航空排出枠の割合はEU ETS指令により15%にとどまるが、それより低い量の排出枠が2013年から2020年までの間は競売されるだろう。というのも規制対象の範囲が減るので流通する航空排出枠の総量が少ないのを反映するからである。


リンク:(以下から直接はリンクしていないので、原記事から参照して下さい。)

欧州委員会が提案を発表
提案に関する欧州委員会の質疑応答
欧州委員会によるEU ETS指令への修正案(pdf)
世界銀行−国別の所得分析
ICAOによる2012年の国際航空の国別RTK占有率

海外情報紹介 太平洋便が最も大量のオゾンを生成

IOP PublishingのEnvironmental Research Lettersの第8巻第3号に「航空のNox排出物に係わるオゾンの影響の時間的及び空間的なばらつき」という発表が掲載されました。以前この欄でも紹介しましたマサチューセッツ工科大学のSteven R. H. Barrett教授らによる新たな研究発表です。ご参考までにIOP Publishingのプレスリリースの要約を掲載します。

原記事:
http://ioppublishing.org/newsDetails/pacific-flights-create-most-amount-of-ozone

原論文:
http://iopscience.iop.org/1748-9326/8/3/034027/article

2013年9月5日

 航空機による汚染物質から生成されるオゾンの量は、オーストラリアとニュージーランドの離発着便によるものが最も多いと、新規調査が示している。
 オゾンの温室効果ガスとしての短期的影響は、二酸化炭素(CO2)の短期的影響に匹敵するほど強いので、今日9月5日木曜日にIOP Publishingの雑誌Environmental Research Lettersで公表された発見は、航空政策に幅広い関わりを持つ可能性がある。
 マサチューセッツ工科大学の研究者達は全球化学輸送モデルを使用して、世界で特にオゾン生成に反応しやすいのはどこか、そしてその結果最も多い量を生成するのはどの便かを調査した。
 その結果わかったのは、ソロモン諸島の東1,000kmあたりの太平洋上空域が最も航空機排出物に反応しやすいということである。この空域においては、航空機排出物1kgが − 特に一酸化窒素や二酸化窒素のような窒素酸化物(NOx)が − 1年間でオゾン15kgを余分に生成することになるだろうと研究者達は見積もった。
 この空域の感受性は欧州のそれより約5倍高く、北米の空域の感受性より3.7倍高かった。
 論文の筆頭著者であるSteven Barrett氏は言った。:「新規の排出物に対し、大気の最も清浄な部分が最も劇的な反応を示すと我々の発見が示す。太平洋のこの部分において新規排出物は比較的大きい大気の反応を引き起こすだろう。」
 約83,000便を個別に分析し、出発地か目的地がニュージーランドかオーストラリアの便が上位10位のオゾン生成便であることを研究者達は発見した。感受性が最も高い太平洋上の空域を大部分の便が通過する、シドニーからボンベイへの便が最も大量のオゾン − 25,300 kg − を生成することが判明した。
 さらに、オーストラリアとニュージーランドを出発地と目的地にする航空機は大概が機体が超大型でかつ飛行時間がしばしば大変長時間なため、多くの燃料が燃焼されて多くのNOxが排出される。
 オゾンは比較的寿命の短い温室効果ガスで、その生成と破壊はその場の大気の化学状態にかなりの部分依存しているため、世界規模で影響を及ぼすというより、特定の時間において特定の区域に影響を及ぼすようだ。
 4月のフライトよりも10月のフライトの方が40%多いNOxを排出することを研究者達は発見した。
 「民間航空による排出物が大気に及ぼす影響全体については多くの調査が行われてきたが、個々のフライトがいかに環境を変化させるかについてはほとんど知られていない。」
 「排出物に対する感受性が現在最も高い区域は民間航空の成長が最も速い区域であり、NOx排出物に対するオゾン生成の感受性が高い、世界の特定空域を迂回するよう航空機の経路を変更する取り組みが、航空による気候への影響を顕著に減らせる方法になりうる可能性がある。」
 「もちろん、長距離便の方が燃料を多く燃焼し、CO2の排出も多いので、飛行距離の増加とオゾンの影響のような気候への他の影響との間にトレードオフがあるだろう。よりよい理解を得るためと、そのようなトレードオフが正当化出来るかどうか見極めるために、このトレードオフの科学的根拠にはさらなる調査が必要である。」とBarrett氏は続けた。

海外情報紹介 「航空による二酸化炭素排出量、世界の国内定期旅客便−2012」

この欄で以前紹介しました「航空による二酸化炭素排出量、世界の国際定期旅客便−2012」を執筆したDave Southgate氏が、今回、世界の国内定期旅客便について資料を公表しました。greenaironline.comに掲載された紹介文の要約をご参考までに掲載します。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1737

資料のダウンロードサイト:
http://southgateaviation.wordpress.com/2013/08/27/carbon-footprint-of-scheduled-domestic-passenger-flights-2012/

米国の航空による2012年の二酸化炭素排出量が他国を圧倒することを地球規模の新しい分析が露わにする。

 2013年9月12日木曜日−世界の国内線定期便による二酸化炭素排出量は2012年の全定期便による排出量の約39%を占めた。国際線の排出量と合わせると、アメリカ合衆国の航空による二酸化炭素排出量は他国を圧倒し、2位の中国のほぼ3倍の量となっている(以下の図1と2)。定期便の排出量の世界的比率は国内線対国際線が39/61であるのに、米国の国内線による排出量は国際線の排出量の約2倍であり、中国では3倍である。これらの統計値は航空の二酸化炭素排出量の専門家であるDave Southgate氏が行った国内線と国際線を分析した三部作の最終版である、新規の総合的調査で見て取ることができる。データと計算のためのツールはたやすく入手できるのに、Southgate 氏は国家レベルで集約された航空による二酸化炭素排出量の報告が驚くほど見当たらないことに気づいたと述べた。

 IATAによる最新の統計が、航空による2012年の世界の二酸化炭素排出量の総計が約6億8,900万トンであることを示している。「航空による二酸化炭素排出量、世界の国内定期旅客便−2012」という電子書籍で、Southgate氏の分析は、航空部門の総排出量の約85%を占める、2012年の国際定期便による約5億8,400万トンの排出量同様に国内線による排出量も取り扱っている。

 「国際航空の二酸化炭素排出量の将来の管理方式に関して現在ICAOで行われている討論には、国内航空の二酸化炭素排出量は直接に関連してはいないが、無関係でもない。」と彼は書いている。「航空の二酸化炭素排出量を減らす取り組みの多くが国内航空と国際航空の両方を対象としている。 − 例えばより効率の良い航空機の開発とかATMや空港の効率性の改善とかの取り組みにおいて。 − そして討論に係わる多くの政府関係者には国内航空と国際航空両方に責任がある。」

 自由にダウンロードできる彼の196ページの著作では、国別、エアライン別、空港別や航空機の型式別に国内線定期便の排出物を分類され、国際線定期便との比較を加えて包括的概観が与えられている。

 Southgate氏はまた、国連の国別人口データを使って一人当たりの総二酸化炭素排出量の上位30カ国の「成績表」を作った。カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦そして香港のような、小さいが主要な空港ハブを持つ裕福な国家が他の国家を遙かにしのいでいる。オーストラリアとスイスがそれに続き、すぐ後にアメリカ合衆国が続く。中国は航空活動による二酸化炭素排出量が2番目に多い国であるが、一人当たりの排出量では28位になる。

 「炭素の貨幣化」の章では、Southgate氏はCO2の価値を金銭的価値に置き換えて、旅客当たりの炭素費用として示している。もし1トン当たり$20の炭素料を2012年の世界の全国内線定期旅客便の出発に課すならば、彼の計算によると約45億ドルが集金されただろう。平均するとこの数字は旅客1人当たり約$2.30の炭素料になっただろう。

 国土が広く、主要な経済の中心地が広く離れて存在する国家では、予想通り炭素料が高くなった。2012年では、ロシアが最も旅客当たりの平均費用が高く($3.80)、韓国が国内便による二酸化炭素排出量の上位30カ国の中で最も低かった($1.20)。米国の旅客にとっての費用は$2.90になり、中国では結局$2.40になっただろう。

 国内線定期便を運航する世界中のエアラインの順位では、上位5位までのエアラインすなわち、デルタ航空、ユナイテッド航空、サウスウェスト航空、アメリカン航空そしてUSエアウェイズの排出量が、世界の国内便の二酸化炭素排出量の約35%を占め、上位10社で排出量の50%になろうとしている(図3)。上位10社のうち1社(全日空)以外は中国か米国のエアラインである。国内便と国際便の運航を合わせると上位3社すなわちユナイテッド航空とデルタ航空とアメリカン航空が、国内便と国際便の二酸化炭素排出量が顕著に多く、世界の主要国際エアラインの多くは国内便の二酸化炭素排出量が無いか、あってもごく少量でしかない(図4)。ユナイテッド航空とデルタ航空がもし国家なら国家の階層の3位と4位の立場を占めるだろう。

 この著書ではまた、国内線の出発便の二酸化炭素排出量で世界の上位30空港を順位付けし、国内線と国際線の二酸化炭素排出量を比較している。当然、上位30の国内線空港の内の22空港が米国にあり、6空港が中国で日本とインドネシアにそれぞれ1空港ある。アトランタ空港が最も国内線の二酸化炭素排出量が高く、その次がロサンゼルス空港である(図5)。これら2空港はその次の3空港すなわち北京空港、ダラス−フォートワース空港、シカゴ空港より遙かに二酸化炭素排出量が高い。

 空港の国内線と国際線の運航を合わせると、違った、地球規模で様々な様相が浮かび上がり、ロンドンヒースロー空港が世界で最も二酸化炭素排出量が高く、その次がロサンゼルス空港、ドバイ空港、ニューヨーク空港、フランクフルト空港そして香港空港となる(図6)。  Southgate氏は計算の根拠にInnovataの航空機運航データを使用し、大圏の炭素を計算するアプリケーションで、オーストラリア政府のインフラストラクチャ・交通省が開発した自由に利用できるソフトウェアツールであるTNIP炭素カウンターを使用した。彼によれば、いかなる都市の組み合わせの便であれ、生成されるCO2の重量を計算するのに必要なすべての情報がそのソフトには入っているとのことである。燃料燃焼のアルゴリズムはICAOの炭素計算機で使用されているのと同じものである。TNIP炭素カウンターはまた、ICAOの炭素計算機で使用される大圏距離調整係数を使用している。Southgate氏は引退したオーストラリア政府の自称「環境官僚」で、ICAOの環境保護委員会(CAEP)の2004年から2012年までのオーストラリア代表で、ICAOの炭素計算機を開発したCAEPグループのメンバーだった。

 二酸化炭素排出量の計算は、彼曰く、気候変動への航空の関与を管理するための支えであるとのことである。「国際的に合意を得たいかなる気候変動管理計画であれ、CO2の結果が独立して追跡できず、検証も不可能なら、信頼性はほとんど無いということになりそうである。現在では、地球規模での航空による二酸化炭素排出量の検証における信頼性は多くの版があるために弱くなっている。世界の航空ネットワークのために、二酸化炭素排出量情報を照合するような共通の計算根拠から引き出した統一された報告書類は公表されていない。航空関連の燃料使用量及び/またはCO2生成について、国際線及び国内線両方に関して多くの「公式な」公表された情報源があるが、一貫性がない。」

 この本でSouthgate氏は、世界の国内航空による総二酸化炭素排出量の10-15%に係わる部分についての彼の分析には「データの空白」があると認めている。「理想としては、世界の航空機の全運航の二酸化炭素排出量の全体像を示すことが望ましいのだが、たやすく一般人の手に入るようにはなっていないとても重要なデータがある。」と彼は書いている。「世界の国内航空データの二酸化炭素排出量の全体像を示すには、貨物航空や非定期便、ビジネス航空やゼネラルアビエーションのような、航空の二酸化炭素排出量に係わる他の非主要部門についてのデータが入手可能でないと。」

 これにもかかわらず、注意を喚起するため、理解を助けるため、そして航空の二酸化炭素排出量管理のための新しい取り組みについて思考を生み出すためにエアラインや空港や国別の排出量の構成についてわかりやすく表現するという彼自身の目的を、Southgate 氏は何とか達成した。

 いよいよ今月これから開催される第38回ICAO総会に対する、市場に基づく国際的な対策の確立に関する提案では、ICAOに付託された権限が対象とするのは国際航空のみで国内民間航空排出物は対象外だとしても、航空に由来する排出物の監視、報告、検証のICAO基準をICAOが開発することを航空産業は求めている。

 第38回総会の気候変動決議は、国際航空による世界規模の排出物の測定・監視・検証の方法論と装置について、交通量や燃料消費や排出物のデータを毎年報告することと合わせて、ICAOでの作業着手を要求するものになりそうである。

 航空関連二酸化炭素管理体制に経済的負担が絡むならば、詳細で、公的に検証可能な追跡の必要性があるだろうとSouthgate氏は言う。しかし、そのような検証システムは必然的に複雑で、CO2の排出と報告の間に顕著な時間差があると彼は警告し、それらのシステムはまた、エアラインの商業上の機密性の問題のために、集団レベルでのものを除いては透明にはならない。

 「不透明な報告にのみ基づく検証システムは不信を生みやすく、最終的に正当性を疑われがちである。」とSouthgate氏は警告する。大圏分析に基づく何らかの形の二酸化炭素排出量報告/追跡体制を平行して稼働することで排出量の透明性が導入でき、それによって第三者による開かれた、速やかな検証が促進されると、彼は示唆する。「これを実施するためには、主要な航空機関が積極的な役割を果たす必要があるだろう。」

海外情報紹介 第38回ICAO総会において加盟国間の意見相違が二酸化炭素排出管理の世界的合意を阻む要因

10月4日まで、現在ICAO本部で開催されている第38回ICAO総会(開催は3年に1度)において、地球温暖化対策として世界規模のMBMs制度設立による二酸化炭素排出量低減のための検討がされていますが、国家間でいろいろ意見の相違があり、ICAO理事会が承認済みの決議案のままでは承認できない国々もあるようです。各国の主張についてgreenaironline.comで概説されているのでご参考までに要約を掲載します。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1747

ワーキングペーパーのダウンロードサイト:
http://www.icao.int/Meetings/a38/Pages/documentation-wp-presentations.aspx

 2013年9月24日(火曜日) − 今年の総会のためにICAO加盟国が提出したワーキングペーパーが、市場に基づく対策(MBMs)問題に関する意見が異なることを示し、今週木曜日(26日)に検討される予定の気候変動決議に関する合意形成が困難であることを際立たせている。ワーキングペーパーの大部分が国際的MBMをいくらか支持する方向を示していても、多くの加盟国はEU ETSのような国家的或いは地域的な制度には気乗りがしないままであり、双方の合意に基づいてのみ実施されるべきだということらしい。他の国々は原則を概して支持していないのだが、アフリカの国々はまたそのような制度からde minimis の例外として逃れる道を探している。ロシアはさらに掘り下げて、航空排出物が実際に低減されるとは思えないと主張して、原則的にMBMには反対の立場である。その代わり、ロシアは国際的な航空燃料税と経済的誘因の提示を提案している。

 アフリカの諸国家は、国家的や地域的な政策の「寄せ集め」は過渡的措置であり補足的技術手段であるとの理解の下で、それよりは世界的なMBMが好ましいと述べている。発展途上国に関しては国際的な制度においてCBDR/SCRC原則が考慮されるべきであると、彼等は付け加えた。アフリカ諸国家内でも現在の決議案の文面に意見の相違があり、国際制度が施行される以前にMBMを実施する国家或いは地域は、影響を受ける第三国の納得を得られるよう努力することが求められるべきだと彼等は述べている。国際航空の便数の総計がRTK thresholdの1%を下回る発展途上国への飛行経路とその発展途上国からの飛行経路についてはまた、そのような制度(MBM)は例外を認めるべきである。これはアフリカ諸国の全エアラインをEU ETSの適用外にする影響を持つことになる。

 このde minimis の範囲設定は前回総会の気候変動決議(A37/19)に含まれていたが、その後、ICAO理事会会長が前例のないほど多くの留保を受け取るという状況で、多くの国家から異議が出された。それが今年の決議草案の背景であるが、再度一般的な反対が出される模様である。

 アラブ首長国連邦(UAE)はワーキングペーパーで、ICAOの長年に渡る差別無しの原則と相容れないし、実施不可能なので、de minimisの概念は手放す必要があると述べている。決議草案の表現は国家と運航者のどちらを免除しようとしているのか明確にしていないので不明確で不適切である、または同じ飛行経路を飛行する航空機は同じ規則の対象になるだろうという、顕著な市場のゆがみを引き起こしかねない再確認の表現があると、UAEはワーキングペーパーで述べている。UAEはまた、de minimisの例外が他の航空関連問題に関する危険な前例になり得ることを懸念しており、国際政策に関する将来の例外範囲の予断を懸念している。

 しかし、差別無しの原則が十分に順守される限りは、たいした排出量の無い参加国を例外扱いすることには異議がないとUAEは述べている。

 UAEはまた、アフリカが双方の合意の原則を強調することに異議を申し立てている。暫定的なMBMがICAOの枠組み、すなわち一通りの指針に従っている限りは、双方の合意は必要とされないと主張している。「提案された決議が空域方式に沿っているならば、ICAOの枠組みはどの運航者を例外とすべきかを指示すべきではない。」とUAEのワーキングペーパーには書かれている。「これは国家の空域に係わる排他的主権の長年にわたる原則に反する。」

 しかし、第三国の同意を得られた時のみ国家或いは地域がMBMsを実施すべきであるとしてロシアは譲らず、ワーキングペーパー(WP/275)において、枠組みの文章の表現と、国家による暫定的なMBMの実施を許可する段落(17)を、この要件を反映して変更するよう要請した。サウジアラビアとベトナムもまた、双方の合意を当てはめるよう要求している。

 この問題は、今月これまでにICAO理事会の特別会議で提起され(記事を参照のこと)、決議案で妥協に至るため大部分が棚上げになったが、de minimisとともに、今週の総会に決議が提出された時に審議の焦点になりそうである。

 ロシアは総会にワーキングペーパーを2件提出し(WP/250と275)、国家的なものであれ、地域的或いは世界規模のものであれ、MBMsに対する一般的反対を表明し、決議文の多くの段落の書き換えを要求している。航空による正味の二酸化炭素排出削減を確実に行うには、国際的MBMは費用がかかって効率のよくない方法であることが判明するかもしれないとロシアは考えており、炭素市場をあまり信頼していない。 − 例えば排出量の割当量を「甘やかし」と呼んでいる。国際的なMBMの有効性が証明されず、必ずしも適した方法でない場合にはさらなる作業の着手が必要になり、国際的なMBMを扱う段落(20)の修正に反映されるべきだとロシアは考えている。

 その代わり、ロシアは意外なことに、航空燃料に世界一律で1%の課税を要求している。UNFCCC(国連気候変動枠組み条約)のGreen Climate Fundに国際航空が貢献するよりも、世界中の森林火災に対処する機動的な消化部隊をICAOが始動することをロシアは提案している。というのも森林火災は気候変動の原因の一つだからである。ロシアはまた、世界の食糧安全保障への潜在的影響のため、航空用代替燃料にはたいして熱心ではない。

 ロシアはまた、前回総会で合意された国際的(努力)目標を改訂し − 上げるのか下げるのかには言及がないが − 、正味の排出物低減を達成するための経済的誘因を作り出してICAO気候変動基金の可能性を調査するようICAOに要求している。

 排出物低減のために、軋轢を生じるMBMsの問題に焦点を合わせるよりも、所有機の近代化や航空航法システムの改善のような運航対策に多くの時間をさくべきだとサウジアラビア(WP/176)は主張している。「そのような対策には全員の合意が得られるので。」

 現在、交代制であるEUの議長国であるため、EUとECACの44カ国の代表のリトアニアがその提案(WP/83)の中で、欧州のみの運航対策や技術対策、そして国家的活動や地域的活動を行っても、航空部門が直面している問題解決には不十分であろうし、MBMsを含めた世界的な取り組みが、ICAOの排出物削減目標達成には必要であると述べている。

 アメリカ合衆国(WP/234)は、MBMsが航空による排出物低減とICAOの目標達成のための重要な補足要素であることは認めている。MBMsが技術的に実行可能であるというICAOの専門家グループの評価は歓迎しつつ、すでに完了したICAOの作業を足場とすることが今必要であり、「2016年の第39回総会においてICAO理事会がそのような制度についての勧告を行うことで、世界規模のMBM制度の開発のための作業をすることが今必要であると米国は信じている。限定するわけではないが、将来の作業には、排出物の監視、報告及び検証の共通の方式の開発、市場に基づく対策を順守するにふさわしい、容認可能な内容の炭素クレジットの制定、そして特殊な状況や個々の能力に合わせた方式の開発が含まれるだろう。」

 加えて、新しい航空機技術の開発の奨励、運航の改善の実施、航空機のCO2基準の開発の完了と採用、環境に優しい代替燃料の開発と配備、国家的活動計画強化のための作業努力を含めた包括的取り組みにICAOは引き続き従事するべきであると米国は述べている。

海外情報紹介 環境活動を討議するICAO加盟国会議はMBMsについては意見の一致が見られずに終了

ICAO本部(カナダのモントリオール)にて、9月24日〜10月4日まで第38回ICAO総会が開催されていますが、航空機排出物低減による地球温暖化対策として、MBMs(市場に基づく対策)で世界的にCO2の排出量を管理する制度を設立しようと、加盟国の合意を得てこの総会の決議文に関連条項を組み込もうとする動きがありますが、国によって意見が異なり、今回の総会で具体的な枠組みを決めるのは困難な状況にあるようです。どの程度の内容が最終的に決議文に組み入れられるのか注目されるところです。greenaironline.comに掲載された報告の要約をご参考までに掲載します。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1758

ICAO第38回総会:
http://www.icao.int/Meetings/a38/Pages/default.aspx

 2013年9月27日(金)−ICAOの環境保護計画を検討する、昨日の午前中の会議で、代替燃料、国家的活動計画や国家援助に関するICAOの作業について加盟国間で広く支持を得られた。しかし、午後の会議は総会に提出される気候変動決議案(WP/34)の、論争の的になっている市場に基づく対策関連の表現の扱いにほとんどの時間が費やされた。ICAOの運営組織であるICAO理事会が合意した妥協案のあたりで合意を形成しようという大多数の加盟国の要求にもかかわらず、国家的及び地域的な暫定的MBMの制度を扱う段落と、そのような制度から160カ国余りの発展途上国を適用除外とするde minimisの条件を扱う2つの段落(17と18)に対しかなりの異議が出された。主要な発展途上国からはまた、UNFCCC(国連気候変動枠組み条約)の、共通だが差別化された責任の原則をよく認識すべきだという要求もあった。

 相違の度合いを考えて、第38回総会の会長でもある、会議議長のフランス大使Michel Wachenheim氏は、今日の午後(27日金曜日)に非公式の二国間協議を持ち、明日に加盟国の主要グループに合意を求めると述べた。来週の水曜日(10月2日)の総会で提示することになる、現在の決議草案の下書きの改善を目的とした、次週の早い時期のさらなる会議が見込まれている。総会は来週の金曜日(10月4日)に閉会し、同じ決議について合意が得られないことを最終日に議決しただけという、2010年の前回総会の再現は何としても避けたいところであろう(記事を参照のこと)。

 会議ホールを満席にした会議では、現在のままの決議案をよしとする44カ国の欧州国家からの幅広い支持があり、韓国、日本、マレーシア、そして多くのラテンアメリカ国家からは条件付きの支持があった。決議には統一的立場をとっているアフリカ諸国は、世界の総計のRTK shareが1%より少ない発展途上国家を暫定的MBM制度の適用対象から外すde minimisの段落(18)がある限りという条件で、大部分を支持した。

 アメリカ合衆国はde minimisで例外扱いすることを真剣に懸念している。国家ではなく運航者に適用されるべきだという方針を設定して採用した前例のためである(ロイターの記事を参照のこと)。昨日、例外扱いに懸念を表明した他の国家にはカナダ、日本そしてニュージーランドが含まれている。

 ロシア、中国、ブラジルそしてインドは、南アフリカ、サウジアラビア、キューバ、ボリビア、ベネズエラを含む様々な国家の支持を得て、世界的制度に先立ち実施される国家的或いは地域的MBM制度 − EUの欧州連合域内排出量取引制度(EU ETS)が含まれることになる − に不満がある。そのような制度は双方の合意によってのみ、一方的でなく、適用されるべきで、発展途上国の共通だが差別化された責任(CBDR)の原則が守られるべきであるという意見の加盟国がある。

 サウジアラビアの意見では決議草案は先進国をひいきしてゆがめられており、さらなる手続きの前に発展途上国へのこの制度の経済的影響について調査を行うようEUに要求した。インドの代表は、EU ETSを引き合いに出して、地域的MBM制度は報復措置の寄せ集めを作り出すと述べ、法律問題が発生するのでインドは空域方式には反対するとのことだった。

 新政府が政権の座について国内の炭素税を止める予定のオーストラリアは、MBMsに関するICAOの作業に反対はしないが、多くの条件付の下でのみ支持を示し、それまでの一方的な行動には反対した。

 航空排出物を低減する必要については争うところがないと会議の議長は結論づけ、ICAOこそ討論の場であるがMBMsについては意見の相違があることを認めた。

海外情報紹介 ヒースロー空港の騒音軽減運用試行が「住民10万人の支えになった。」

2012年11月5日から2013年3月31まで実施された、ヒースロー空港の騒音軽減運用試行について報告書が公表され、8月14日付けのBBC NEWSに内容が紹介されました。この運用試行については以前この欄にも掲載しましたが、特定地域の住民を早朝の航空機騒音被害から守るため、到着便を特定の飛行経路へ誘導するというものでした。ご参考までに要約を掲載します。

原文:http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-london-23692965

ヒースロー空港の関連サイト2カ所:
http://mediacentre.heathrowairport.com/Press-releases/100-000-get-noise-respite-from-night-flights-625.aspx
http://www.heathrowairport.com/noise/noise-in-your-area/early-morning-trial
(ここから報告書がダウンロードできます。)

NATSの関連サイト:
http://nats.aero/blog/2013/08/heathrow-trial-provided-100000-with-noise-respite/
(ここからも報告書がダウンロードできます。)

ヒースロー空港の騒音軽減運用試行について:
http://www.aerc.jp/index.php?ID=107&cID=10

ヒースロー空港の早朝便に係わる騒音軽減運用試行によって、飛行経路下の住民約10万人への騒音影響が軽減されたことがわかった。

 5ヶ月間の試行期間中、am4:30から6:00の間は特定地域の住民を騒音から守るために通常よりも限定された飛行経路へと航空機は誘導された。

 しかし、南東ロンドンにあるBrockleyのような地域では夜間騒音が一層うるさくなったことが調査結果からわかった。

 試行の報告書によれば現在のやり方で継続すべきではないとのことだ。

 毎朝4:30から06:00の間、ヒースロー空港には平均して約17便が到着する。

思いがけない悪影響

 航空交通管制官は通常、広範囲な飛行経路の中で最も安全で最も効率的な着陸経路を航空機に指示する

 昨年11月に開始された試行期間中は、実験に係わる特定空域を飛行しないようにパイロットは誘導された。

 Helios社による報告書に詳細が記されているが、試行の結果、Berkshireの多くの住民同様に南東ロンドンと東ロンドンの住民が恩恵を受けたことがわかった。

 しかし、試行は継続すべきでないと報告書は記し、「意図しない悪影響と、得られるだろう恩恵のバランスをよりよく理解するため、起こりそうな結果予測のための評価を試行実施前に行うべきだ。」とも報告書は記している。

注目すべき成果

 今回の試行の枠組みは、ヒースロー空港、英国航空、NATS(英国航空交通事業)そして航空機騒音反対運動を行うHACANの共同作業で形作られたものだった。

 HACAN代表のJohn Stewart氏は「このような形で我々が航空産業と共同作業したのは今回が初めてだ。」と述べた。

 「今回の試行には将来の実験で取り組む必要のある問題がいくつかあったが、10万人の住民を安心させたのは重要な成果だ。」

 ヒースロー空港のMatt Gorman氏は述べた。「地元の地域社会や、空港に係わる我々の協力企業とともに作業して、数万人の住民に騒音の小休止をもたらす新しい方法を発見できたことは、とても励みになる。」

 今回の試行で対象となった地域は、空港の東側がVauxhall、Wandsworth、Battersea、 Clapham Common、Westminster、BermondseyとStreatham及び、空港の西側がBinfield、 Reading、Purley-on-ThamesとWinnershだった。