フランクフルト空港 Frankfurt Airport

1.基本情報

● IATA/ICAO CODE FRA/ EDDF
● 国・地域 ドイツ
● 所在地 フランクフルト・アム・マイン
● 運営者 フラポート株式会社(Fraport AG)http://www.fraport.de/de.html

※フランクフルト・アムマイン国際空港(以下,“フランクフルト空港”と記す )はロンドンのヒースロー空港,パリのシャルル・ド・ゴール空港と並ぶ大規模空港であり,世界における国際線の重要なハブ空港のひとつとなっている。空港の運営は,フラポート株式会社(Fraport AG)が行っている。

● 統計 (AIC調べ)
   利用者数(2014年) 59,566,132人 世界 11位
   発着回数(2014年) 469,026回 世界?位

● 滑走路:4本(2本は離着陸両用,1本は離陸専用,1本は着陸専用)

方向 長さ×幅
07R/25L 4000m x 45 m
07C/25C 4000m x 60 m
18/36 4000m x 45 m
07L/25R 2800m x 45 m

 フランクフルト空港は,特に2008年以降、空港需要の拡大により空港容量が限界に達し、2011年10月に第4滑走路(着陸専用)の供用を開始した。第4滑走路の供用により,1時間あたり最大94回の離発着が可能となった。なお、第4滑走路は、建設許可に対する異議申し立てが約10万件あり、建設計画を策定してから供用に至るまで約10年間要している。

2. 騒音軽減の取り組み

 フランクフルト空港の騒音対策は主に,4つのカテゴリのもと取り組んでいる。 (1)ノイズモニタリング(騒音監視と情報公開),(2)パッシブな騒音対策(遮音・防音等),(3)コミュニケーションと苦情の対応,(4)能動的な騒音対策(運航の工夫や滑走路の使用方法等)である。

● 空港周辺対策に係る財源・法令
○ 財源
空港周辺対策費用は,ヘッセン州政府と空港会社が資金を拠出し,毎年計2.65億ユーロの基金を捻出している。着陸料は空港会社とヘッセン州経済・交通・土地開発省が共同に決定し、設定(夜間割増設定,騒音レベルに応じた段階的設定等を行っている。
フランクフルト空港では低騒音航空機の導入・促進するために,航空機を7カテゴリに分類し,各カテゴリに応じた騒音料を徴収している。さらに,夜間、早朝の時間帯に発着する航空機に対して着陸料の上乗せも行っている。割増着陸料は22時から06時の時間帯において設定しているが,23時から05時は割増率が大きくなる。各カテゴリの騒音値はICAOの騒音証明の離陸測定点において2001年,2002年及び,2004年にフランクフルト空港で測定された離陸機の平均騒音値であり,毎年見直しが行われる。2015年4月からはさらに9のカテゴリが追加され,16のカテゴリに分類されている。
 その他,法律に基づく義務ではないが,空港会社が独自に実施している対策としてFraport Casa Programもある。

○ 制度
周辺対策は基本的に(市町との共同で実施する等の例外もある)フラポート株式会社(Fraport AG)が実施している。土地利用については、計画・管理が連邦政府により定められている。執行はヘッセン州政府が行う。

夜間早朝時間帯に発着する航空機に対する着陸料の上乗せも行っている

①航空機騒音の発生源対策

種類 制限の有無
チャプター2適合機材制限 1) 制限あり
チャプター2適合機の段階的退役 2) 制限あり
チャプター3適合機材制限 3) 制限あり

Chapter 2 75,000ポンド以上の機材は、EU加盟国の空港で運用禁止となっている
2002年4月1日から、EU加盟国の空港において運用されている75,000ポンド以上の民間亜音速ジェット飛行機は、EU指令(92/14/ EEC)に従い、Part II、Chapter 3, Volume 1 of Annex 16に定める基準を遵守しなければならない。
・重量が大きく比較的騒音レベルが大きいとされるB737の早期退役,A320の改造
・19(18)時~7(6)時のchapter3非適合機の着陸禁止
・21(20)時~5(4)時のchapter4非適合機の着陸禁止
・22(21)時~5(4)時の離発着は原則禁止(chapter4適合機のみ,認められる場合もある)

②騒音低減のため運航規制等の工夫

内容 備考
Segmented RNAV Approach 1) 実施 2011年1月から 今後拡大予定
DROPs(Dedicated Runway Operations)  2) 実施 2012年8月から
Steep Approach 3) 実施 2012年10月から
エンジン逆噴射の制限 原則禁止
夜間早朝の制限 4) 発着の原則禁止と騒音対策強化
連続上昇運航 実施
Segmented Approach ILS 導入予定
Fraport Casa Program 5) 2005年から空港会社が独自に実施している対策

1)GPSを用いて,人口密集地であるマインツ市中心部を避けてその約6海里南側からアプローチを行う。ただし,離陸を第3滑走路,着陸を第1・2滑走路に限定するために,空港処理容量に制約をかけることになり,混雑時間帯には導入できない。

2) DROPsは,一定の滑走路・飛行経路の運用を一定時間帯に止めるという滑走路の運用方式で,偶数日,奇数日で飛行を一時的に禁止している。これは,ヒースロー空港で行われているRespiteと同様のもの。
しかし実施に伴い飛行経路が変更となり、新たに飛行経路下となった地域からの苦情が寄せられた。そのため、飛行経路を変更したが、苦情の減少にはつながらなかった。

3) ILS着陸角度の3度から3.2度に拡大することにより,より高い高度からの着陸が可能となり,騒音を生じる地域を縮小化させることを目的としたもの。

4)第4滑走路供給開始後(2011年10月から)の夜間早朝時間帯の発着禁止と騒音対策強化
3本の滑走路での運用時には,フランクフルト空港は24時間離陸が可能であったが,2011年10月21日の第4滑走路の供用開始とともに、23時から05時までの航空機の離着陸は全滑走路において原則禁止となった。また、第4滑走路の供用開始後に騒音対策が強化された。
• MD11型機,B747型機,A380型機は第4滑走路での着陸禁止。
• リバースは,全滑走路において,滑走路の路面が濡れているなど限定的な場合以外は認められない。
• 19(18)時から7(6)時までは,「chapter3」に達しない機材については,全滑走路において着陸を認めない。
• 21(20)時から5(4)時までは,「chapter4」に達しない低騒音の機材については,全滑走路において着陸を認めない。
• 21(20)時から22(21)時,5時から6時の時間帯の定期便の離着陸回数は133回/日(年間平均)とする。
• 22(21)時から4時は,第4滑走路は閉鎖,また定期便の離着陸は原則禁止となった。ただし,
• 着陸が遅れている「chapter4」適合機材の着陸は,24時まで可能
• 出発が航空会社の責任以外の事由により遅れている「chapter4」適合機材の離陸は,監督官庁の許可が得られれば24時まで可能

5)Fraport Casa Program 2005年から空港会社が独自に実施している対策。これは、滑走路の延長線上かつILS着陸の際に航空機高度が350 m未満となる地域(幅は420 m)にある家屋を空港会社が任意に買取するシステムである。特に、第4滑走路は着陸専用であるため飛行高度も低く,騒音の影響が大きいことからこのような対策が有効となっているようである。

②騒音低減のため運航規制等の工夫

計画の種類 実施状況
騒音評価評価指標 LAeq
防音工事 独航空機騒音対策法FLG (Fluglaermgesetz)(2007年改正)に基づき実施
住宅防音 昼間地域1(Leq 60):防音対策・換気設備設置
夜間地域 (Leq 50):子供部屋,寝室の防音・換気設備設置
学校防音 昼間地域2(Leq 55):学校,幼稚園,保育園,老人ホーム,病院等公共施設の防音対策・換気設備設置
移転・住宅の買収補償 実施していない

FLG(独航空機騒音対策法 Fluglaermgesetz)の2007年改正に対応して,FRAの騒音対策も見直すこととなった。同法に基づき,空港周辺地域の一定のエリアは,空港会社の費用において建物の防音対策を実施し,定められた騒音値以内を保つ必要があり,また一定エリアは,公共施設の新設が規制される。
空港周辺地域の一定のエリアを「夜間地域 (LAeq,night= 50 dB以上,かつLAmax=68 dB以上)」で,「昼地域1 (LMsub>Aeq,day=60 dB以上)」及び,「昼間地域2 (LAeq,day=55 dB以上)」の3つに区分されている。

3. 環境に配慮した取り組み

・騒音監視システムおよび飛行経路監視システム及び苦情受け付け方法
システム 提供情報
騒音監視システム StanlyTrack
  URL http://franom.fraport.de/franom.php
  騒音監視局 27局(固定局) 3地点(移動局)
  提供情報 ・航空機騒音
・周辺騒音
飛行航跡システム StanlyTrack
  URL http://franom.fraport.de/franom.php
  提供情報 ・出発・到着・上空通過の種別
・航空機識別
・機種
・出発/到着空港
・高度
・速度
苦情の受け付け 1) 電話,FAX,手紙,インターネット


1) Info Phoneとの苦情処理対応専任の部署が2009年にFraportAG社内に設置され対応している。8人のスタッフが配置されている。苦情は電話,FAX,手紙,インターネットで受け付けている。

○ ステークホルダー・協議会
・航空機騒音防止委員会(Noise Abatement Commission)
委員会は年4回開催している。メンバーは,周辺市町村長及び騒音担当者,管制機関(DFS),空港会社(DLH),航空会社,ヘッセン州経済・交通・土地開発省,ヘッセン州環境省,NGOなどの団体である。住民の参加はない。最近の議題としては、飛行経路変更に関する騒音曝露状況と影響,第3ターミナル増設時の環境対策,新しい技術(トーイングロボット等)の適応等である。

4. その他

○ 空港から比較的離れた地域における苦情
 2011年1月からSegmented RNAV Approachの導入により,人口密集地かつ少し離れた地域であるマインツ市中心部を避けてその約6海里南側からアプローチを行っている。ただし,離陸を第3滑走路,着陸を第1・2滑走路に限定するために,空港処理容量に制約をかけることになり,混雑時間帯には導入できない。空港から離れた地域からの苦情も他の空港同様にフランクフルト空港でも問題となっているようである。


苦情が多い地域の地図