シアトル・タコマ国際空港 Seattle-Tacoma International Airport

1.基本情報

● IATA/ICAO CODE SEA/KSEA
● 国・地域 アメリカ合衆国
● 所在地 ワシントン州シータック
● 運営者 シアトル港湾局(The Port of Seattle)
        http://www.portseattle.org/Sea-Tac/Pages/default.aspx

 シアトル・タコマ国際空港は、1944年に設立されたワシントン州シアトル市に位置する国際空港である。シアトル市とタコマ市の間に位置することから,通称、シータック空港とも呼ばれている。
 シアトル・タコマ(シータック)国際空港は、ワシントン州とアメリカ北西部の主要な航空輸送のハブ空港で、空港はシアトルの市街地から 12 マイル南で、タコマの 20 マイル北に位置している。シータックは、定期民間航空便が運航されているシアトル/タコマ首都圏エリア内で唯一の空港であり、東ワシントン州の地域間における航空の乗客と貨物の主要な結節点となっている。
2009 年には第 3 滑走路が供用し、シアトル・ダウンタウンからの直通鉄道も開通するなど、利便性が大幅に向上している。

シアトル港湾局
 シアトル港湾局は、州法に基づく港湾のための米国固有の自治組織(Port District)である。シアトル港湾局は、自治組織体制をとっているため、連邦政府やワシントン州、キング郡、シアトル市の地方政府から独立しているため、キング郡住民の選挙による選出される 5 名のシアトル港湾委員会(Commission)が意思決定機関となる。各委員の任期は 4 年である。
 港湾局には、航空部、港湾部、不動産部の3つの営業部と、資本開発、企業部門の5つの部門を持つ。航空部(Aviation Division)はシアトル・タコマ国際空港(シータック空港)の運営を行っている。シアトル港湾局の収入源は、航空部門は航空会社からの着陸料とターミナルビルの賃料(滑走路とターミナルの建設、運営費を賄う金額としている)及び各種のコンセッション料が大半を占める。
・シアトル港ホームページ  http://www.portseattle.org/Pages/default.aspx
             http://www.kokusaikouwan.jp/zaidan/pdf/G4.pdf

● 統計 (AIC調べ)
   利用者数(2014年) 37,498,267
   発着回数(2014年) 337,132回

● 滑走路:南北方向に延びる3本の平行滑走路がある。

方向 長さ×幅
16L/34R 3627m x 46 m
16C/34C 2873m x 46 m
16R/34L 2591m x 46 m

2. 騒音軽減の取り組み

● 空港周辺対策に係る財源・法令
○ 財源
 航空部門は航空会社からの着陸料とターミナルビルの賃料(滑走路とターミナルの建設、運営費を賄う金額としている)及び各種のコンセッション料である。
 http://www.faa.gov/airports/pfc/

□AIP(Airport Improvement Program)補助金
・連邦税に空港整備用の特別会計が設定されている。名称はAirport and Airway Trust Fund(AATF)。用途は空港運用、設備、研究開発、補助金などである。
・空港は、FAAからAATFよりAIP補助金を受け取ることが出来る。
・AIP補助金は複数の分配基準がある。数値基準で分配されるFormula Fund(公式資金)とProject審査で分配されるDiscretionary Fund(裁量資金)である。
・騒音専用の補助は、Discretionary Fund(裁量資金)の中に含められおり、FAAがPart150計画を承認して補助が支給される。
 http://faa.gov/airports/aip/

○ 実施
 空港周辺対策はシアトル港湾局が行っている。

①航空機騒音の発生源対策

種類 制限の有無
チャプター2適合機材制限 制限あり
チャプター2適合機の段階的退役 制限あり
チャプター3適合機材制限 制限なし

 ICAO Noise Certification Chapter 2適合機は2000年代初期に全て退役している。Chapter 3適合機についての制限はない。

②騒音低減のため運航規制等の工夫

内容 備考
優先飛行経路 1) 昼夜・風向別に3種類ある
優先滑走路方式 ・22時から6時の間、できるだけ北向き運用を行う。但し、安全上に支障が無い場合に限る
夜間の運航規制 ・リバースの使用制限(22時から7時の間は出来るだけ使用しないことが望ましい)
・エンジン試運転の実施制限 2)
次世代航空運輸システム 3) ・広域航法(Area Navigation (RNAV))
・最適化プロファイル降下進入(Optimized Profile Descents (OPDs))
その他 Fly quiet Awards 4)

1)優先飛行経路
○南風の場合(昼夜を問わず)
・ 離陸:出来るだけばらつかないよう直進し,5 Nm(約9.3 km)進んでなおかつ高度3000 ft以上になってから最初の旋回を行う。
・ 着陸:空港の北西から進入する経路の場合,Elliott湾上空を飛行する。北東からの進入の場合は,520号Bridgeを過ぎてから南に向けて旋回する。
○北風の場合(昼間:AM 6:00~PM 10:00)
・ 離陸:できるだけばらつかないよう直進し,東に旋回する場合は8Nm(約14.8 km)進んでなおかつ高度4000ft以上になってから最初の旋回を行う。西向きに旋回する場合はDuwamishの工業地帯まで北進してから旋回する。
・ 着陸:滑走路延長方向から5 Nm(約9.3 km)の地点に到達するまでに最後の旋回を行う。
○北風の場合(夜間:PM 10:00~AM 6:00)
・ 離陸:全ての航空機は離陸直後に東向き旋回をしてはならない。その代わり,Duwamishの工業地帯とElliott湾まで北進してから旋回する。
・ 着陸:滑走路延長方向から5Nm(約9.3 km)の地点に到達するまでに最後の旋回を行う。
優先飛行経路(緑:離陸、赤:着陸)

2)エンジンメンテナンスの実施制限
 22時から7時の間のエンジン試運転が制限されている。但し,午前7時から8時30分の間に出発する定期便については,許可が得られれば午前6時から7時間に試運転を行うことが出来る。但し、その場合でも2分間を超えて実施してはならない。
 制限に違反した場合には下記の罰則が課せられる。
1. 初回の場合、レターによる勧告
2. 1年間に2回規則を破った場合,$1,000
3. 1年間に3回規則を破った場合,$2,000
4. 1年間に3回以上規則を破った場合,最大$8,000

3)次世代航空運輸システム Nextgen (The Next Generation Air Transportation System)
 2025年頃の航空交通量(現在の約2倍と予測)に対応する航空交通システムのあり方を検討するため、大統領と議会の指示により、2004年に連邦航空局(FAA)、航空宇宙局(NASA)、国防省、国土安全保障省等の7つの省庁により共同組織(JPDO)が設立された。産学官で連携した検討を進めるため、ボーイングなどの航空機製造会社、航空会社などの産業界から約200名が参加(NGATS協会)している。
 管制処理能力向上のための4次元軌道管理(4DT)など運用概念の策定、その実現のための先進的な監視システム(ADS-B)、衛星航法、広域情報管理等の新技術の開発・導入計画が広く検討されている。
 シアトル・タコマ国際空港では 広域航法(Area Navigation (RNAV))、最適化プロファイル降下進入(Optimized Profile Descents (OPDs))の導入されている。
 https://www.faa.gov/nextgen/snapshots/airport/?locationId=45#rnav-stars

4)Fly quiet Awards
 成績の良いエアラインに対して賞を与えて騒音軽減への取り組みへの動機付けを行っている。この賞は2005年に設立された。評価基準は3つある。
1. 騒音軽減の飛行経路の遵守の割合
2. 24局の騒音固定局のデータに基づく航空会社毎の騒音レベル
3. エンジンメンテナンス/試運転のルールと時間の遵守
  優秀なエアラインはホームページ上で公開されている。
  https://www.portseattle.org/Environmental/Noise/Noise-Abatement/Pages/Fly-Quiet.aspx

②騒音低減のため運航規制等の工夫

計画の種類 実施状況
防音工事 DNL65以上のエリアに対して実施
家屋 1985年に定められたNoise Zone内の家屋数約10,000世帯について,96 %が完了。5つのコンドミニアムに対しても防音工事を実施した。これらについて,トータルで5億円の資金投入を行っている。
学校 22校に対して実施済み
移転補償 DNL75以上のエリアに対して実施

 空港周辺における騒音対策は,FAR Part150のNoise Compatible Program(NCP)に基づき、シアトル港湾局が実施している。Ldn=65 dBの騒音コンターマップに基づいてNoise zoneを制定し,Noise zone内の家屋について防音工事費用の補償を行っている。また,Ldn=75 dB以上の区域では移転補償も実施している。
 NCPでは、騒音軽減のために係る費用や利点を評価して、段階的に計画遂行の手順が紹介されている。計画には土地利用計画と管理、騒音抑制方法等が含まれている。
 空港か地方管轄と共に建物の規制や空港周辺における騒音と両立できる土地利用計画を進めている。原則、Part150のガイドラインに従事している。

3. 環境に配慮した取り組み

・騒音監視システムおよび飛行経路監視システム及び苦情受け付け方法
システム 提供情報
騒音監視システム PublicVue
  URL https://secure.symphonycdm.com/publicvue/Frames.asp?
sys=SEA&HeaderFrame=HeaderPage.asp&MenuFrame=LeftMenu.asp&
ContentFrame=welcome_redirect.asp?sys=SEA
  騒音監視局 24局
  提供情報 ・航空機騒音
・周辺騒音
飛行航跡システム
  URL https://secure.symphonycdm.com/publicvue/Frames.asp?
sys=SEA&HeaderFrame=HeaderPage.asp&MenuFrame=LeftMenu.asp&
ContentFrame=welcome_redirect.asp?sys=SEA
  提供情報 ・出発・到着・上空通過の種別
・航空機識別
・機種
・出発/到着空港
・高度
・速度
苦情の受け付け 1) オンライン(WebTrak)・電話・メール・受付窓口

騒音監視局
情報提供の一例