海外情報紹介 二酸化炭素排気と騒音汚染のバランスをとるために航空交通管理を行う

European Commission(欧州委員会)の環境部門が発行しているニュースペーパーに、出発時の速度制約とCO2排出量及び騒音の関係について行われたスウェーデンの調査について記事が掲載されましたので、要約を掲載します。

原記事:http://ec.europa.eu/environment/integration/research/
newsalert/pdf/314na1.pdf
2013年1月24日
314 号


 いくつかの空港で地域における騒音汚染を最小限にするために航空機の速度制約が導入されたが、そうすることで燃料効率が大変に悪化する可能性がある。出発時の速度制限を緩めることで、受容可能な騒音レベルを保ったまま、実質的にCO2の排出が低減出来る可能性が新規調査によって示された。

 航空産業は温室効果ガスの原因物質、特にCO2の主要な排出源である。気候変動に関する政府間パネルは、出発と到着の場面で燃料効率による排出削減が最大規模で可能であると見積もっている。多くの研究の焦点が着陸であろうと、出発もまた重要な場面である。欧州内の飛行なら、離陸してから巡航が開始可能になる最高到達点まで上昇するまでのこの短い場面で、全行程で必要な燃料の内、25-30%の燃料を必要とする可能性がある。

 この調査において、分析モデルを開発するために研究者はスウェーデンの Gothenburg Landvetter空港の実際の飛行データを使用した。このモデルは5つの出発例を使って空港周辺地域が経験するCO2排出量と騒音レベルを予測した。例の中には地上18.5kmの距離における速度制限205、210(実際の制限値)、220のノット表示対気速度(KIAS)による飛行が含まれている。さらに2つの分類として、高度10,000フィートに達するまで250 KIASで飛行するというものと、速度制約のない「自由速度」という分類があった。

 調査結果が示したのは、出発の場面での250 KIASの例では燃料効率が上がったことによりCO2の排出が105kg減少したということである。さらに、この効率上昇は、空港から11kmと18.5kmの距離の時に地上での騒音レベルのほんの少しの上昇(2dB)という結果に落ち着いた。26kmを超えた距離では1.5dBの騒音減少が見込まれた。

 完全に速度制限を取り除いた場合、出発時のCO2排出量が180kg減少したが、空港から18.5kmと26kmの距離の間で騒音レベルが4dB上昇した。たとえ速度制限を取り除いた場合に約70dBの騒音暴露地域が拡大しても、そして、たとえそのような騒音レベルが特に高く、健康に悪影響を及ぼすと見なされても、その程度の騒音レベルへの騒音暴露であればスウェーデンでの規制下では許容可能な範囲である。

 これらの結果が示唆するのは、航空機の出発時速度制限を緩めると、この例では騒音汚染レベルを問題になるほど高いレベルに上昇させることなくCO2排出量を減らすことができる可能性である。理由としては明記された空港から人口集中地域が10km以上離れているというだけであり、そこでなら騒音は減少すると予測された。しかし、研究者が警告するのは、空港にもっと近接した場所での騒音レベルの上昇は、特に速度制限を完全に取り除いた場合、さらに人口が密集している地域において空港騒音問題を引き起こす可能性があるということである。

出典: Mitchell, D. Ekstrand, H., Prats, X. et al. (2012). An environmental assessment of air traffic speed constraints in the departure phase of flight: A case study at Gothenburg Landvetter Airport, Sweden. Transportation Research Part D. 17: 610-618. DOI: 10.1016/j.trd.2012.07.006
連絡先: deborah.rushton@chalmers.se
主題: Noise, Sustainable mobility


原著論文:
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S136192091
200079X

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