海外情報紹介 「環境に優しい航空産業:航空用バイオ燃料に世界中が殺到している」

米国の独立した政策シンクタンクであるオークランド研究所が、航空用バイオ燃料をとりまく状況について報告書を公表しました。排ガス削減の切り札としての役割を期待されているバイオ燃料が、その探求によって環境破壊につながりかねない一面も持っているという、意欲的な報告書です。ご参考までに報道発表記事の要約を掲載します。


原記事及び報告書のダウンロード:
http://www.oaklandinstitute.org/press-release-eco-skies-global-rush-aviation-biofuel

カメルーンのヤシ農場の真実について:
http://www.oaklandinstitute.org/herakles-exposed


プレスリリース:エコスカイ:航空用バイオ燃料に世界中が殺到している。

日付:2013年3月18日 太平洋標準時刻午前8時
連絡先: Anuradha Mittal
amittal@oaklandinstitute.org; +1 510 469-5228

新規報告書であるEco-Skiesは、航空排出物削減目標への警鐘を鳴らす。

フライドポテトの油で燃料を作ったり、バイオ燃料のために土地の争奪戦を行っても解決策にはならない。

 カリフォルニア州オークランド:オークランド研究所が公開した新規報告書であるEco-Skies: The Global Rush for Aviation Biofuelは2050年までに排出物を減らそうという航空産業の野心的な目標に対して警鐘を鳴らしている。このまま行くと、バイオ燃料の製造が飛躍的に増加することになり、もはや貧困国のみにとどまらず、すでに発展途上国の国民の生命と生活を脅かしている土地の収用が加速されることになるだろう。

 一見すると、再生可能な、表向き環境に優しいバイオ燃料に依存するところが大きい戦略理念は航空産業にとって前向きな一歩に聞こえる。事実に基づいたものでさえあれば、そして将来の成功を示す証拠でもあればよいのだが。この新しい報告書では環境に影響を及ぼす可能性と人間の生命に損害を及ぼす可能性両方ともに、この新規の目標を評価するにあたり十分に分析されてこなかったことを明らかにした。それどころか、航空産業の燃料供給のためにバイオ燃料を探求すれば、この新しい環境対策が新型の環境破壊そして人間生活の破壊へと導きかねないという深刻な疑問が提示されることになる。

 飛行機を飛ばすには大量の燃料が必要である。現在、バイオ燃料は民間機の運航に本気で使用するには希少で高価である。オークランド研究所のFellowであり、報告書の著者であるLukas Rossはエアラインが、経済的制約及び、化石燃料とCO2排出物に関する環境問題の狭間で板挟みになっていることを教えてくれる。エアラインは両方を解決するための答えとしてバイオ燃料を扱いたがっているが、Ross氏は言う。「航空産業のCO2削減目標達成のためには気の遠くなるような土地の広さが必要であることを考えると、航空用バイオ燃料には、人間も地球も支払うべきでない値札がついているということだ。」

 現在の航空の必要を満たすためには、−−将来の需要の増大は言うまでもなく−−オーストラリアの約3分の1に等しい面積で生産される2億7千万ヘクタールのジャトロファ属の畑が必要となるか、2015年に見込まれる面積の25倍が必要となるだろう。

 テキサス州ほどのかなりの面積の必要面積の4分の1でさえ、もはや食用植物栽培には利用できない。現在ある量と比較してバイオ燃料の本当の必要量を考えると、将来を見通すのは不可能で、商用航空の必要を満たすための量を調達する意欲が結果として、持続不可能な、食物の安全を脅かす土地の収奪に結びつかないという保証はない。

 おそらくこれらの恐怖を軽減するために、航空産業は環境に優しい航空燃料使用者グループ(SAFUG)を設立した上、生物学的多様性を保護して食物栽培とは競合せず、地球温暖化ガス低減の重要なライフサイクルを確保するようなやり方でのみバイオ燃料を探求するという、拘束力のない誓約に署名した。

 たとえその誓約が書面上は良さそうに見えても、すでに飛行済み(2012年5月現在で1,500回)のバイオ燃料によるフライトの社会的費用、環境コストに関して、すでに合理的な疑問があり、まして航空用バイオ燃料がそもそも完全商業化された場合の費用についてはなおさら辛辣な疑問が増えている。

 新規報告はまた、使用済み料理油を商用航空機の燃料の原料として転用することの欠点もまた取り上げている。マクドナルドがフライドポテトを揚げるのに使うのと同じ油で飛行機が飛べるという考えは持続可能性を何か目新しい、おあつらえ向きのものにし、生活様式の変化から言えば何も変化が必要でない。

 現実的には、2010年に米国は使用済み料理油を14億360万ポンド製造し、−−最後の一滴まで航空用バイオ燃料に転換しても1億8,500万ガロンの燃料が製造されるだけである。2012年に米国だけでほぼ210億ガロンのジェット燃料を消費するということを考えると、米国の全使用済み料理油を転用しても米国の飛行機を空中に留めるためには3日も持たないことを意味する。

 潜在的需要と可能な供給量の間がかくも大きく乖離していては、使用済み料理油を持続可能性への通り道であると、真剣に考えられるエアラインはないだろう。

 「エアライン産業は価格安定性と環境に優しいイメージを熱心に求めているので、バイオ燃料に関して、土地の所有権や食料安全保障、及び温室効果ガスの排出に破滅的な結果をもたらしかねないほどの空前の需要を作り出すという危機的状況にある。」とオークランド研究所のexecutive directorであるAnuradha Mittal女史は語った。「バイオ燃料の製造は今や、発展途上世界における土地取引の最大で唯一の目的である。低所得の国々では商業的農業を貧困から抜け出すための手段として受け入れることが奨励されているので、多くの問題が起きている。我々の研究は十分に練られていない思いつきによる経済開発計画がいかに食料不足の悪化や、強制退去、そして環境破壊に結びついてきたかを明らかにした。」

 十分に練られていない解決策によってさらにもう一度、発展途上世界が人的損失や環境コストを背負う前に、Eco-Skies報告書はこのように、エアライン産業の分析専門家にデータをよく検討するよう警告を与えるものである。

 オークランド研究所は現代の最も切迫した社会問題、経済問題、環境問題に新鮮なアイデアや大胆な行動を持ち込む、独立した政策シンクタンクである。2011年から、研究所はアフリカの土地投資取引の仕組みを明らかにし、透明性や公平性や説明責任を欠いた厄介なパターンを暴露した。調査と支援運動と国際的なマスコミ報道の間の動的関係が、結果として一連の驚くべき成功や、米国や海外における組織化につながってきた。www.oaklandinstitute.orgを参照のこと。