海外情報紹介 ボーイング787の対抗機であるエアバスA350が6月14日に初飛行

6月17日から23日まで開催されるパリエアショーの展示には間に合わなかったようですが、直前の6月14日にエアバスA350の初飛行が行われました。リアルタイムの空撮ビデオを含めたオンラインストリーミングで配信されたairbus.comのウェブサイトで、50,000人を超える人々がA350 XWBの離陸を見たそうです。BBC Newsに関連記事が掲載されたので、ご参考までに要約を掲載します。
なお、今回飛行したA350 XWBは、MSN1と呼ばれ、A350-900型機で、-900は標準的3クラス仕様の314座席を表しているそうです。A350にはその他胴体が長く座席数が350の-1000型機と、定員270名の最も胴体の短い-800型機があるそうです。

1.A350:エアバス社が作りたかった航空機ではなかった。
2.A350が航空エンジンの新局面を示す。

1の原記事:
http://www.bbc.co.uk/news/business-22803218
2の原記事:
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-22889969
A350のサイト:
http://www.a350xwb.com/#timeline/8973 1.A350:エアバス社が作りたかった航空機ではなかった

2013年6月14日

設計図上で何年もの間検討され、150億ドル(95億ポンド)の資金が投入された、大ヒット商品になりそうなエアバス社の新型機が金曜日に、待望の初飛行を行った。

 (さらに胴体幅の広い)A350XWBは、燃料効率と環境性能に新しい基準を生み出すとエアバス社がコメントする航空機である。

 航空機技術を新しい水準へ引き上げたと主張するもう一つの旅客機である、ボーイング社の最新鋭787ドリームライナーの直接の競合機として、長距離型で、双発の飛行機は、売り込みが行われているところである。

 しかし、A350はまた、エアバス社が本気で建造を望んでいたわけではない航空機である。

 2000年代半ばまで、欧州のメーカーは遅れに遅れたA380スーパージャンボの発売準備で手一杯だった。

 2階立ての巨人は、極めて複雑な機械で、その開発コストはウナギ登りになった。そこで、エアバス社は数十億ドルを別の白紙状態の設計に投入することに気が進まなかった。

 しかし、ボーイング社が計画し、すでにエアラインがかなりの関心を抱いていたドリームライナーの対抗機としてエアバス社には新型機が必要だった。

 A350とは異なり、ボーイング社はドリームライナーをパリの展示会で展示するだろう。

 ドリームライナーは、軽量の炭素複合材を使用して建造されることになっていたし、燃料消費を減らし、運航費を減らすために最新の航空力学を取り入れることになっていた。

 エアバス社が考え出した設計は、既存のA330型機を元にして、しかし、胴体を軽く、翼やエンジンを新しくして、ドリームライナーの燃料効率に対抗しようと試みた。

 しかし、潜在顧客は強い印象を持たなかった。とりわけ熾烈な批評家が、膨大な数の航空機を購入する International Lease Finance CorporationのトップであったSteven Udvar-Hazy氏であった。

 社内でかなりの実力者であった彼は、公に、単純に設計されたA350では任に堪えないと示唆した。何社かのエアラインのトップも同意し、2006年半ばにエアバス社は設計図を引き直すことになった。

 その結果がツールーズのエアバス本社駐機場に今ある機体で、エアラインはすでにかなりの信任投票を与えているようである。
最新鋭機

 600を超える注文書が発行済みで、来週のパリエアショーでさらに多くの契約が公表されるようであり、エアショーではエールフランスは25機のA350とさらに35機の購入を選択肢として検討中と報じられた。

 アナリストはA350の初飛行は象徴的価値以上のものだと述べている。潜在的購買者に対して、複雑な産業プロジェクトが実を結んだことを明確に示している。

 787と同様に、A350は新鋭機である。長距離飛行を燃料効率改善と結びつける機会をエアラインに提供する。

 胴体は炭素繊維で補強したプラスチック製であり、重量を減らすために航空機の他の部分の多くでチタンと先進合金が使用されている。

 また、最先端の航空力学を取り入れ、エンジンメーカーであるRolls Royce社は新規に特注設計の動力装置を制作した。

 これらすべての要素によって、現世代の同等クラスの航空機よりもA350は燃料使用量が25%減るだろうとエアバス社は主張している。また、騒音と排出物が現在の基準をはるかに下回るだろうとも指摘している。

 A350が狙っている市場区分は大きな成長が見込まれていると、エアバス社の最高執行責任者であるJohn Leahy氏はBBCに語った。彼の予測では、これからの20年間に世界のエアラインにはその種の航空機が6,500機程度必要になるだろうとのことである。

 その上、彼はA350がドリームライナーをリードしていると思っている。Leahy氏は言った。:「787がこれまでに達成したよりかなり早い期間に、A350の販売機数は600機を超えた。そうして、市場自体がA350の圧倒的な需要を証明してきた。」

 しかし、最近ボーイング社が787で、新しい、未確認の技術は欠点がある可能性を発見した。

 運航開始から1年そこそこの1月に、787のバッテリーがオーバーヒートして、ある機体では火が出て、もう1機の機体からは煙が出た後、ボーイング社の主要機は取締官によって飛行禁止になった。

 787は、ラップトップPCや携帯電話のような装置ではよく使用されるリチウムイオンバッテリーを使用していたが、民間航空機にいまだかつて設置されたことは無かった。軽量で、大量のエネルギーを蓄積できる一方、過熱しやすい傾向もある。

上空飛行

 速やかな設計変更後、787は4月に飛行を再開した。その一方で、エアバス社はリチウムイオンバッテリーはA350に使用しないことを決定した。− 元来は使用する計画だったのだが。代わりに、実績のあるニッケル−カドミウム技術を引き続き使用するだろう。

 しかし、A350開発に関してエアバス社が警戒心を見せていることが、今年の航空宇宙産業の展示場であるパリエアショーでA350が一般に公開されないだろう理由を説明する助けになるかもしれない。

 今回の展示会はエアバス社の本拠地で行われるだけでなく、1909年の第1回からパリで開催されている航空展示会の第50回目である。

 エアバス社は心底、同社の新しいおもちゃをこの展示会で展示したかっただろう。しかし、エアバス社は新型機を大急ぎで空へ飛ばすことについて大変慎重にことを運んできたように見える。

 それどころか、世間の目から隠して、誤作動解決に時間を費やしてきた。初飛行が行われたのが遅すぎて、A350がパーティに参加するのは許されない。

 そのため、来週のル・ブルジェ空港ではいずれにせよ、ボーイング社はライバル社を出し抜くことができるだろう。米国メーカーは傷ついた評判を再建しようとするので、787は派手な展示になるだろう。

 しかし、最近空に舞い上がったA350が少なくとも上空を飛ぶ、わくわくするような可能性が残っている。

 そしてもし上空飛行できたら、A350がエアショーの目玉になる可能性がある。

エアバス社について
■1967年:フランス、ドイツそして英国政府が協同で航空機を生産することに合意
■1972年:初めて制作されたエアバス機であるA300が処女飛行を行う 
■エアバス社は現在、Franco-German EADS groupが所有している 
■約63,000人が雇用されている
■世界最大の航空機であるA380を製造する
■会社設立から7,877機の航空機をこれまで引き渡した 



2.A350が航空エンジンの新局面を示す

2013年6月14日

 世界で最も効率的と言われる英国製航空機エンジンは金曜日に最もきつい試験に臨んだ。

 ロールスロイス社が製造したトレントXWBエンジンは、フランスのツールーズからデビュー飛行を行った、新型機エアバスA350に装備された。

 重量をそぎ落とし、燃料消費を最小にするために考案された新規技術が新型エンジンには投入されている。

エアバス社と、最近ドリームライナーを就航させたボーイング社の間の熾烈な競争における最近の展開である。

 そしてその戦場にロールスロイス社とその米国の競争相手であるゼネラルエレクトリック社が加わった。

 航空エンジンの注文は数十億の売上につながるので、顧客獲得競争は熾烈である。

 トレントXWBはA350用の特注設計で、これまでに1,200を超える製造依頼がきている。

 BBCニュースはDerbyにあるロールスロイス社の工場で生産過程を見学するという滅多にない機会を得た。

 まず人目を引くのがこのエンジンの大きさで、エンジン前部にあるファンブレード1式の直径は118インチ(299cm)と、この英国企業がかつて作った中でも最大であり、コンコルドの胴体も収容できるほど広々としている。

 ブレード自体はチタン製で、中が空洞になっており、内部の顕微鏡スケールの極小グリッド構造で強化されている。GE社は複合材料製のファンブレードを選んでいた。

 ファンの大きさが毎秒、スカッシュコートを満たすに十分なほどの空気の吸い込みをエンジンに可能にし、ロールスロイス社がこれまでに達成した最大の圧力である、50対1のいわゆる「圧縮比」で、その後冷凍冷蔵庫の大きさまで圧縮する。

 エンジンに流れ込む空気の流れが大きいほど、そして潜在的圧縮が大きいほど、プロセス全体の効率が向上する。

 燃料の混合体と空気に着火されると、結果としてできるガスは2,200Cという途方もない温度になる。これはこれまでに達成されたことのない高温であり、燃料1滴から最大限の出力を得ることを意味する。

 2,200Cの強烈な熱は実際、この急速に膨張するガスで動くタービンブレードも含め、燃焼室の部品の融点より700C高い。

 そのため各ブレードは人間の髪ほどの大きさの小さい穴が網のように300個あけられている。これがタービン表面の薄いフイルム内を流れる空気の冷却を可能にし、1種の断熱材の役割を果たす。

 この途方もない熱とそれに伴う巨大な圧力に耐えるため、68枚のタービンブレードは、ニッケルを基にした合金で製造され、脆弱さの原因になる内部亀裂の危険を避けるために、単結晶になっている。

 膨張するガスで動くブレードのそれぞれが、エンジン前面にある巨大なファンブレードを動かす内部シャフトを回転させ、F1レースカーのように大きな動力を生み出すことになる。

 XWB計画の指導者であるChris Young氏によれば、このエンジンは一連の斬新的な改善を追求した科学者や技術者の数年に渡る作業の成果だそうだ。

 「ここでは1パーセントにかかわる個々のシステム設計、そこでは0.5パーセント、あそこでは数十分の1というように、個々の技術が数多くつめこまれている。」

 「エンジンには最新技術を採用しようとしてきた。これは最も新しく開発された、そして最新技術をすべて組み合わせた、世界で最も効率のいいエンジンだ。」

 平均して、航空機エンジンは過去20年間にわたり、毎年1%燃料効率を向上させてきた。

 ロールスロイス社の主張の後には必然的に、次のエンジンが公表された時のGE社の同様な主張が続くことだろう。

 燃料費の価格高騰に直面するエアラインは費用削減に必死で、航空産業全体としてはまた、炭素排出量を最小限にすべしというプレッシャーにさらされている。

 しかし、最新世代のエンジンは以前より効率がよくなり、温暖化ガスの低減よりも航空交通の国際的成長、とりわけアジアにおける成長の方が重要視されている。

 マンチェスター大学の航空宇宙工学の講師であるPeter Hollingsworth博士は、基礎物理によって、既存の設計からどれだけより多くの効率性が引き出せるかについては限界がある可能性があると述べた。

 「真の難題である。現在の成長率で航空産業が成長するなら、できることはほとんどない。年間平均1-2%ずつ改善して多くの年数のうちに20%を達成できても、それさえかなりの難題だ。」

 「今やエンジンはずっと効率がよくなり、20%の改善は昔ほど価値がないので、常に利益を打ち消されながら作業に従事し、同時に、航空は成長を続ける。」

 航空産業は2005年のレベルと比較して炭素排出量を2050年までに50%減らすという目標を自ら設定している。そして、設計における革命的変化が起きた時のみそれは達成可能だろうという認識がある。

 検討された案の中には、翼と二重反転プロペラに埋め込むエンジンというアイデアがある。

 ロールスロイス社の先進プロジェクトの技師長であるAlan Newby氏は言った。:「結局のところ、我々が急進的な改革を行おうとするなら、航空機の外観は今とは違ったものになってゆかざるを得ないだろう。」

 「顧客と環境のために確保する必要がある目標を、我々が達成するつもりなら、2020年代の達成は多分無理で、2030年以降になるだろう。」