海外情報紹介 第38回ICAO総会において加盟国間の意見相違が二酸化炭素排出管理の世界的合意を阻む要因

10月4日まで、現在ICAO本部で開催されている第38回ICAO総会(開催は3年に1度)において、地球温暖化対策として世界規模のMBMs制度設立による二酸化炭素排出量低減のための検討がされていますが、国家間でいろいろ意見の相違があり、ICAO理事会が承認済みの決議案のままでは承認できない国々もあるようです。各国の主張についてgreenaironline.comで概説されているのでご参考までに要約を掲載します。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1747

ワーキングペーパーのダウンロードサイト:
http://www.icao.int/Meetings/a38/Pages/documentation-wp-presentations.aspx

 2013年9月24日(火曜日) − 今年の総会のためにICAO加盟国が提出したワーキングペーパーが、市場に基づく対策(MBMs)問題に関する意見が異なることを示し、今週木曜日(26日)に検討される予定の気候変動決議に関する合意形成が困難であることを際立たせている。ワーキングペーパーの大部分が国際的MBMをいくらか支持する方向を示していても、多くの加盟国はEU ETSのような国家的或いは地域的な制度には気乗りがしないままであり、双方の合意に基づいてのみ実施されるべきだということらしい。他の国々は原則を概して支持していないのだが、アフリカの国々はまたそのような制度からde minimis の例外として逃れる道を探している。ロシアはさらに掘り下げて、航空排出物が実際に低減されるとは思えないと主張して、原則的にMBMには反対の立場である。その代わり、ロシアは国際的な航空燃料税と経済的誘因の提示を提案している。

 アフリカの諸国家は、国家的や地域的な政策の「寄せ集め」は過渡的措置であり補足的技術手段であるとの理解の下で、それよりは世界的なMBMが好ましいと述べている。発展途上国に関しては国際的な制度においてCBDR/SCRC原則が考慮されるべきであると、彼等は付け加えた。アフリカ諸国家内でも現在の決議案の文面に意見の相違があり、国際制度が施行される以前にMBMを実施する国家或いは地域は、影響を受ける第三国の納得を得られるよう努力することが求められるべきだと彼等は述べている。国際航空の便数の総計がRTK thresholdの1%を下回る発展途上国への飛行経路とその発展途上国からの飛行経路についてはまた、そのような制度(MBM)は例外を認めるべきである。これはアフリカ諸国の全エアラインをEU ETSの適用外にする影響を持つことになる。

 このde minimis の範囲設定は前回総会の気候変動決議(A37/19)に含まれていたが、その後、ICAO理事会会長が前例のないほど多くの留保を受け取るという状況で、多くの国家から異議が出された。それが今年の決議草案の背景であるが、再度一般的な反対が出される模様である。

 アラブ首長国連邦(UAE)はワーキングペーパーで、ICAOの長年に渡る差別無しの原則と相容れないし、実施不可能なので、de minimisの概念は手放す必要があると述べている。決議草案の表現は国家と運航者のどちらを免除しようとしているのか明確にしていないので不明確で不適切である、または同じ飛行経路を飛行する航空機は同じ規則の対象になるだろうという、顕著な市場のゆがみを引き起こしかねない再確認の表現があると、UAEはワーキングペーパーで述べている。UAEはまた、de minimisの例外が他の航空関連問題に関する危険な前例になり得ることを懸念しており、国際政策に関する将来の例外範囲の予断を懸念している。

 しかし、差別無しの原則が十分に順守される限りは、たいした排出量の無い参加国を例外扱いすることには異議がないとUAEは述べている。

 UAEはまた、アフリカが双方の合意の原則を強調することに異議を申し立てている。暫定的なMBMがICAOの枠組み、すなわち一通りの指針に従っている限りは、双方の合意は必要とされないと主張している。「提案された決議が空域方式に沿っているならば、ICAOの枠組みはどの運航者を例外とすべきかを指示すべきではない。」とUAEのワーキングペーパーには書かれている。「これは国家の空域に係わる排他的主権の長年にわたる原則に反する。」

 しかし、第三国の同意を得られた時のみ国家或いは地域がMBMsを実施すべきであるとしてロシアは譲らず、ワーキングペーパー(WP/275)において、枠組みの文章の表現と、国家による暫定的なMBMの実施を許可する段落(17)を、この要件を反映して変更するよう要請した。サウジアラビアとベトナムもまた、双方の合意を当てはめるよう要求している。

 この問題は、今月これまでにICAO理事会の特別会議で提起され(記事を参照のこと)、決議案で妥協に至るため大部分が棚上げになったが、de minimisとともに、今週の総会に決議が提出された時に審議の焦点になりそうである。

 ロシアは総会にワーキングペーパーを2件提出し(WP/250と275)、国家的なものであれ、地域的或いは世界規模のものであれ、MBMsに対する一般的反対を表明し、決議文の多くの段落の書き換えを要求している。航空による正味の二酸化炭素排出削減を確実に行うには、国際的MBMは費用がかかって効率のよくない方法であることが判明するかもしれないとロシアは考えており、炭素市場をあまり信頼していない。 − 例えば排出量の割当量を「甘やかし」と呼んでいる。国際的なMBMの有効性が証明されず、必ずしも適した方法でない場合にはさらなる作業の着手が必要になり、国際的なMBMを扱う段落(20)の修正に反映されるべきだとロシアは考えている。

 その代わり、ロシアは意外なことに、航空燃料に世界一律で1%の課税を要求している。UNFCCC(国連気候変動枠組み条約)のGreen Climate Fundに国際航空が貢献するよりも、世界中の森林火災に対処する機動的な消化部隊をICAOが始動することをロシアは提案している。というのも森林火災は気候変動の原因の一つだからである。ロシアはまた、世界の食糧安全保障への潜在的影響のため、航空用代替燃料にはたいして熱心ではない。

 ロシアはまた、前回総会で合意された国際的(努力)目標を改訂し − 上げるのか下げるのかには言及がないが − 、正味の排出物低減を達成するための経済的誘因を作り出してICAO気候変動基金の可能性を調査するようICAOに要求している。

 排出物低減のために、軋轢を生じるMBMsの問題に焦点を合わせるよりも、所有機の近代化や航空航法システムの改善のような運航対策に多くの時間をさくべきだとサウジアラビア(WP/176)は主張している。「そのような対策には全員の合意が得られるので。」

 現在、交代制であるEUの議長国であるため、EUとECACの44カ国の代表のリトアニアがその提案(WP/83)の中で、欧州のみの運航対策や技術対策、そして国家的活動や地域的活動を行っても、航空部門が直面している問題解決には不十分であろうし、MBMsを含めた世界的な取り組みが、ICAOの排出物削減目標達成には必要であると述べている。

 アメリカ合衆国(WP/234)は、MBMsが航空による排出物低減とICAOの目標達成のための重要な補足要素であることは認めている。MBMsが技術的に実行可能であるというICAOの専門家グループの評価は歓迎しつつ、すでに完了したICAOの作業を足場とすることが今必要であり、「2016年の第39回総会においてICAO理事会がそのような制度についての勧告を行うことで、世界規模のMBM制度の開発のための作業をすることが今必要であると米国は信じている。限定するわけではないが、将来の作業には、排出物の監視、報告及び検証の共通の方式の開発、市場に基づく対策を順守するにふさわしい、容認可能な内容の炭素クレジットの制定、そして特殊な状況や個々の能力に合わせた方式の開発が含まれるだろう。」

 加えて、新しい航空機技術の開発の奨励、運航の改善の実施、航空機のCO2基準の開発の完了と採用、環境に優しい代替燃料の開発と配備、国家的活動計画強化のための作業努力を含めた包括的取り組みにICAOは引き続き従事するべきであると米国は述べている。