海外情報紹介 海外主要空港の環境対策の最近の動向(ドイツ・フランクフルト空港)

 フランクフルト空港を運営しているフラポート(Fraport AG)は年に1回Sustainability Reportを公表している。2017年5月10日、英語版の「2016 コンパクトレポート( Gute Reise! We Make It Happen )」*が公表された。同レポートではフラポートの新たな使命に関する声明や、企業ビジョン、騒音軽減取り組み等が紹介されている。そこで、騒音軽減の取り組みとしてGBAS導入促進や騒音・飛行監視システムについて概略を紹介する。

GBAS導入促進
 騒音軽減が期待できる3.2度の進入は従来のILS(計器着陸システム)を使用した北西滑走路でのみ可能であるが、2014年に整備済みのGBAS(Ground-Based Augmentation System)を使用して、2017年の第2四半期から他の滑走路でも3.2度のsteeper approachの試験運用開始を目指している。GBAS 1式の装置で49通りの異なる進入経路の支援が可能である。
 なお、フラポートはこのシステムの対応機材の導入促進をはかるためのエアラインへの働きかけとして、2017年からGBAS装備航空機の導入促進プログラム(インセンティブGBAS)を打ち出して取り付けをサポートしている。これは、新規にGBAS対応機材装置を搭載した航空機、GBAS用に装置の改修を行った航空機については、着陸あたり100ユーロの奨励金がフラポートから支給される。これは1機あたり最大10,000ユーロまでとなっている。これは1機あたり最大100回、10,000ユーロまでで、全エアラインで総計200万ユーロの予算を確保している。インセンティブGBASについては下記URLの資料を参照されたい**。

騒音・飛行監視システム
 騒音軽減分野では国際的パイオニアのフランクフルト空港では標準的な航空機騒音監視システムを数十年かけて確立した。最初の測定は1964年に行われた。現在空港周辺半径20km以内に固定監視点局が31局ある(ミュンヘン空港は16局である。)。北西滑走路に隣接して最近設置した測定局では2015年5月以降着陸時のリバーススラスト検知のために革新的測定方法を試してきた。実地調査のデータを元に、着陸時のリバーススラストでエンジンが低出力の場合と高出力の場合を区別できる基準を開発した。
 固定測定局を補足するため3箇所の可動式測定局を使用している。場所によって騒音は大きく異なるため、自治体の申請により3ヶ月間、可動式測定局による測定が可能である。また、2016年5月から8月の間、SESAR Augmented Approach to Land研究プロジェクトで衛星による曲線的進入方式が試されたが、固定局に加えて5つの可動局が使用され、新しい進入経路に沿って飛ぶ航空機からの騒音測定が行われた。
 フラポートの全測定システムは継続的に測定データを管理センターに送信し、正確な騒音プロファイルに加え、個々の騒音事象についてのデータすなわち、継続時間や最大レベルのデータも提供する。データ記録後も可能な限り最良なデータクオリティを得るため、膨大な量の詳細検証作業や補足調査が必要である。記録後の分析では特殊な試験プロセスを使って周囲騒音と航空機騒音を区別し、飛行計画やドイツ航空交通管制(DFS)のレーダーデータと突き合わせる。結果として得られたデータセットは様々な分析に利用可能である。型式別平均騒音レベルは騒音関連離陸・着陸料の騒音のランク分けに使用される。
 空港の航空機騒音測定・評価部門を率いるDaphne Goldmann女史は騒音測定データを発生源の航空機または別の発生源に正確に結びつけることが重要だと語っている。

*フラポートの2016報告書
http://www.fraport.com/en/our-company/responsibility/publications.html

**インセンティブGBASに関する資料
http://www.fraport.de/content/fraport/de/misc/binaer/business-und-partner/airlines-cargo/flughafenentgelte/fra-incentive-programm--englisch-/jcr:content.file/fra_incentive_program_2017.pdf#search=%27Airline+Incentives+%40+FRA%2C+Incentive+Program+2017%27