海外情報紹介 ICAOが地域社会との係わりを改善するための事例集を公表

Community Engagement for Aviation Environmental Management, Cir 351, 2017, 58 pp, ICAO
URL: https://www.icao.int/environmental-protection/Pages/environment-publications.aspx (ダウンロード)
 ICAOが、航空部門の利害関係者と地域社会との係わりについて事例研究を行い、得られた教訓や引き出された優れた実践を、ICAO加盟国や航空産業、特に空港、エアラインや航空航法業務プロバイダー(ANSPs)が地元の地域社会と共に主に環境問題に取り組む場合の支援資料としてまとめ、サーキュラー351として公表した。
 この事例研究については、ICAO環境保護委員会(CAEP)第9回会議において、地域社会との係わりの重要性が認識され、調査の実施とサーキュラーの開発について合意が得られたもので、情報収集のために空港運営者、ANSPs、航空機運航業者、他の利害関係者を含む世界中の航空関連組織から、地域社会との係わりについての事例研究を収集する調査が2014年6月から2015年3月にかけて行われ、記入済みの調査回答が計48件寄せられた。
調査の背景
 移動性や接続性の強化のような社会利益を含め、地域経済や世界経済に大きな利益をもたらす航空部門は、将来の航空交通の需要を満たし、航空の経済的、社会的可能性を十分に実現するために、絶えず成長を続けなければならない。
 航空部門が成長するにつれ、騒音、大気質、温室効果ガス排出物、水質、廃棄物、土地利用、動植物の生息環境や野生動物に係わる環境影響への取り組みの重要性が増す。
 空港近隣の地域社会が通常主に不安視するのが騒音問題と地域の大気質の問題である。また、大気質、水質、廃棄物管理、土壌汚染や野生動物の管理のような環境に係わる特定の側面は地方条例の規制対象になり得る。航空からの温室効果ガス排出物への不安が高まりつつある地域もある。
 地域社会の多くの住民が航空の経済的及び社会的利益を認識する一方、空港や空域の改善などのこれまでの航空部門の活動や提案に対して、地域社会が苦情を提出し、政策立案者や規制者に影響力を及ぼすことがある。この圧力は航空の発展を抑制し、航空の利益を狭める可能性がある。しかし環境上の制約をかけた上であれば、地域社会は航空の成長を支持する可能性がある。環境に関してサステナブルであることを航空部門に要求する圧力はこれまでになく高い。
 航空のサステナブルな成長のためには、航空活動に伴う環境影響は軽減されねばならず、航空部門の利害関係者はこれらの懸念に取り組むため地域社会と係わりをもたねばならない。地域社会との係わりは、地域社会の苦情や批判や他の圧力への反応と言うよりもむしろ、航空の利害関係者である企業の社会的責任プログラムとして積極的かつ好ましいものとして実施できる可能性がある。
 率直で隠し事のない話合いを行うことで、地域社会との間に信頼関係を築き、協調して取り組む意欲を生み出すことができる。これにより空港、エアライン、ANSPs、他の利害関係者と周辺の地域社会はサステナブルな成長のために奮闘しながら、航空産業の環境実績改善のための協力的なやり方を見定めて実施することが可能になる。
 国によっては、空港や空域の変更を検討する場合に一般からの意見聴取や地域社会対応が必要になる。そうであれば、空港運営者または航空部門の他の利害関係者は一般人との関係の重要性を認識し、積極的かつ自主的に地元の地域社会との係わりを持つことになるだろう。
得られた教訓
 調査回答者が重要な教訓と見定めた内容には以下のようなものがある。①対応の遅れや地域社会の懸念の高まりを避けるために早めに地域社会への対応を開始する。②積極的な取り組みが前向きと受け取られ、時間を節約する可能性がある。③計画立案と準備が優れていると、取り組みの時間と費用を減らせる。④建設的な関係の発展と維持のためには係わりを続けることが必要である。⑤受け入れること。地域社会や政治指導者を含めた利害関係者と広く協調して取り組む。⑥隠し事のないプロセスが地域社会の信頼を高め、地域社会は進んで結果を受け入れようとするだろう。⑦いかなる提案であれ、地域社会はその必要性と利益と潜在的影響を明快に理解する必要がある。⑧技術、視聴覚教材、コンピュータグラフィックス、ソーシャルメディアが幅広い支持者との情報のやりとりに役立つ。⑨地域社会の期待を管理することが重要な要素である。
良い実践
 地域社会との係わりは主観的なプロセスである。どの事例も独自の変数、利害関係者、影響力があり独特であるため、個々の状況に合わせて対応は調整されるべきである。が、それにもかかわらず、事例研究では航空の利害関係者が地域社会対応プログラムで考慮すべきいくつかの共通要素を示している。それは、(1)戦略的取り組み、(2)技術的取り組み、(3)対面会議、(4)印刷物や他の媒体、(5)地域社会との関係構築である。
(1)戦略的取り組み
 秩序だったやり方で、先を見越し、協調して取り組んで、信用を築くことが大切である。そのためには、秩序だったやり方として、包括的で体系立てられたやり方を開発し、戦略を開発し、正式な対応(すなわち法律によって義務づけられているもの)と非公式な対応(自主的なもの)の間を明確に区別し、問題の発生以前に、懸念される地域に注意を与えるためデータを利用し、地域社会への対応の有効性を評価し、確立した方法を使うことがあり、先を見越すためには、普段から継続して係わりを保ち、進行の過程の早い段階で取り組みを始め、役人に気づかせることが重要である。また、協調して取り組むためには、行政との協力関係を築き、地域社会と協力し、信用を築くためには、継続的に対話を続け、地域社会の懸念に対処していると示すことが重要である。
(2)技術的取り組み
 計画された行動、利益、環境影響を明確な説明で地域社会に教えるために、高度に実用的なツールである新技術を用いることがある。具体的には、モデル化とシミュレーションを視覚化する技術を用いたり、情報伝達の技術として、インターネットを使って効率的に情報を伝達したり、公開討論のためのオンラインフォーラム、イーメール、ソーシャルメディアのアカウント、または意見を出せる場所があるウェブサイトを開発して双方向の対話を続けたり、メッセージやイメージやビデオの送信や、団体や個人との情報のやり取りや、動向や展開の速い問題の追跡のためにソーシャルメディアを用いたり、騒音苦情の追跡で個人の特定と最も懸念の大きい地理的な位置の特定ができるように、追跡や分析を可能にすることがある。
(3)対面会議
 地域社会対応の取り組みの主要部分であり、この種の対応は、地域社会を取り込み、不安を伝える機会を彼らに提供し、共通の解決策に向けて作業するための基本的なやり方である。これには公開の会合と対象を絞った会合と作業グループがあり、公開の会合では、地域社会が情報を出すための公開討論会を行うことで、例えば、ニュースレターや更新情報の配布を希望する地域社会の構成員から将来の情報伝達のための個人の特定も可能である。対象を絞った会合と作業グループでは、運航時間の決定に関する環境上の不安から発生する特定の問題を見定めて取り組むために役立つ小規模な作業グループと、対話の継続が必要な多くの重要問題で、特定の懸念と進行中の問題の両方に対処するために利用できる常設委員会がある。
(4)印刷物や他の媒体
 印刷媒体が一方的な情報発信活動では最も一般的に使われ、地域社会の応答の選択肢としてアンケートや手紙を通じた双方向の情報のやりとりにも使用できるが、その中でも新聞は、幅広い対象への情報伝達と、特定のグループまたは地元地域社会が高い割合で読者となっている地元や地域の新聞または雑誌であれば、対象を絞った情報伝達に使うことができる。ニュースレターは、進行中のプロジェクトの最新情報を掲載し、重要な最新情報に注目させることができるが、通常、航空関連組織から地域社会への一方的な情報伝達のみ行い、双方向の情報のやりとりにはさほど効果的でない。また、文書の配布により、地域社会に通知したり、係わる対象を絞ったり、公衆の承認を得たりすることができる。他の媒体としては、インターネットへの接続があまり行われていないか制限されている地域では、テレビやラジオのような他の媒体が地域社会に情報伝達するための良い手段になるかもしれない。
(5)地域社会との関係構築
 環境問題またはインフラ拡張についての情報提供や意見聴取実施時のみでなく、航空関連組織は航空産業と地域社会の関係改善を目指して地域社会と係わることが多い。そのような取り組みであれば、空港のような航空関連組織を地域社会の一部として確立する役に立つ。そのような取り組みには教育プログラム、技術プログラム、その他があり、教育プログラムについては、周辺の地域社会の小学校のために航空や環境管理に関する教育を施したり一般公開を実施したり、中小企業による空港への製品やサービスの提供が可能になるという付加利益を見込んで、中小企業のために企業研修を展開している空港がある。技術プログラムとしては、環境影響を軽減する家屋や学校の防音工事や空調工事の技術を用いたり、学校の教師のために音声を増強する音響システムを設置するための資金提供を行ったりすることがある。その他として、地域社会の行事を後援したり、学校の社会見学を支援したり、スポーツ・チームや文化的集団に資金提供したり、地域の公園や遊び場を支援するなど、他の様々な取り組みやプロジェクトを実施することがある。