海外情報紹介 変化する気候に航空輸送を適応させる一助として、ユーロコントロールとACI欧州が概況報告書を公表

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2010

2014年11月21日金曜日− 航空輸送部門が悪天候事象の扱いに慣れているとはいえ、気候変動の影響の高まりを我々が経験するにつれ、これらの混乱がより極端でより頻繁になりかねないと欧州の航空交通機関であるユーロコントロールが警告している。温度上昇や海面上昇、その他の気象変化が欧州の航空輸送ネットワークに及ぼす可能性のある影響について詳述した昨年発行の報告書に続き、ユーロコントロールは空港の業界団体であるACI欧州や他の組織と共に共同の概況報告書「変化する気候への航空の寄与」を作成した。最近、パリでのACIによるAirport Exchangeのイベントで公開されたこの概況報告書は、潜在的危険性の概要を述べ、航空部門が気候変動危険性評価を開始するのを支援するための質問のチェックリストとケーススタディを提供している。
「ユーロコントロールはネットワーク管理者として、気候変動につながる排出物を欧州航空が削減するために全面的な支援に努めている。」と事務局長のFrank Brenner氏が語った。「しかし、気候変動はこれからの数年間で欧州航空に様々な影響を及ぼすと予想され、今回の報告は適切な対応がとれるようにこれらの影響を特定するための支援を行う。」

IATAと協議し、概況報告書は各国の航空航法業務プロバイダー(ANSPs)であるAena、Avinor、NATSや、フランスのDGAC/STAC、ヒースロー空港、マンチェスター・メトロポリタン大学との共同作業によって完成された。

「一般に欧州では気温が上昇し、南域では水利用枠が減少し、中央域で対流気象が増加し、北域では降水量が増加すると予測できる。」とユーロコントロールの政策担当官であるRachel Burbidge女史がパリの会議で語った。

このため、危険性を特定することと、地域に適した地域とネットワークの回復策を実施することが航空業務プロバイダーには必要である、と彼女は述べた。「影響の多くは空港に集中するだろうから、これは遅延や時間厳守に係わる運航リスクにとどまらず、インフラにも影響が及ぶ可能性がある。例えば、降雨量が増えれば地上排水の問題が起きる可能性があり、そこで温度が上がれば滑走路の表面の問題につながる可能性がある。」

多くの組織はまだ気候影響の危険性を検討しておらず、インフラと運航計画のための費用効果の高い回復力強化には早めの行動が重要であるとBurbidge女史は報告した。

気候変動の影響がリスクになるかどうか利害関係者が評価を始めるためのチェックリストとなり、 すでに潜在的影響に適応しているいくつかの組織の事例研究となると同時に、航空が気候変動に適応するための援助リストの提供を概況報告書は目指している。

ノルウェーのANSPかつ空港運営者であるAvinorの上級相談役であるOlav Mosvald Larsen氏は、彼の組織する会議では2001年から気候への貢献を調べてきたと話した。現在作られたインフラはこの数10年を考えたものであり、気候の影響が考えられる間は、「先を考えることが重要である。」と彼は述べた。

北欧の将来の気候は今より暖かく、雨が多く、荒れることが予測されるとLarsen氏は述べ、永久凍土層のレベルにおける変化が滑走路の定着に部分的に損傷を与えているSvalbardのような空港ではすでにその影響が出ている。雨が多い気候と排水の悪さが合わさった結果、大嵐の後にはStavanger空港では滑走路に穴があき、他の空港では滑走路に岩が転がっていた。波や浸食の影響を受けないように、Avinorは現在、海抜7mより低いところには滑走路を建設しないよう要求していると彼は述べた。

Avinorは運営する46空港の内、約20空港は天気事象にさらされ、運営空港のうち42空港が長期の気候リスク評価を行い、11空港は危険であると分類した。

FAAの空港企画立案・計画作成事務局の責任者であるElliott Black氏は、最近FAA内で気候変動に関する懸念が提起されたが、それは二つの事件がきっかけとなったと述べた。最初は2009年でオマハ空港に近くのミズーリ川から水があふれて洪水の危険性が高いと大いに問題視されたが、空港が予防手段を講じて危険は回避された。2番目は2012年に台風サンディが米国東海岸の航空システムに及ぼす影響、特にニューヨークのラガーディア空港に及ぼす影響が行政官にとっての『目覚ましコール』のようなものであったと彼は述べた。

Black氏によると、米国では多くの空港が海岸や川に近い平坦な低地に建設するように制限されていて、約3,300の空港の内の244空港が洪水の危険にさらされ、約2,500空港が海岸や河川からちょうど1.5海里の場所にある。

「海面が上昇したら、問題が起きる。」と彼は代表者らに語った。「しかし、オマハ空港から我々が学んだことは、空港を守ることが可能な手段があるということである。」

リスクを最小にするための1つの方法としては、時間をかけての追加投資を通じて、滑走路の高さを徐徐に上げることだったと彼は述べた。

フランスの民間航空機関(DGAC/STAC)の技術業務部門は、気候変動に対する空港の脆弱性を評価する業務を行っていると、プロジェクト・マネージャーのAubin Lopez氏が会議で語った。この部門では気候変動が空港にもたらすリスクの特定と定量化を行い、空港の回復能力に関しての運営者の意識を高めるために、VULCLIMプロジェクトを立ち上げた。

その最初の段階ではまず気候変動の危険性と空港との係わりについてのリストを作成し、それに伴うリスクの特定と定量化のための方法論を作る。空港が長所と欠点を見極めるための自動化ツールを作っているところである。

発展途上国で空港と環境との調和についてこれまで以上に関心が高まっており、気候変動への寄与を含むICAOの空港計画資料の編集作業が進行中であると、ユーロコントロールの環境部門長であるAndrew Watt氏が語った。

新しい概況報告書へのコメントとして、ACI欧州の事務局長である Olivier Jankovec氏は語った。「我々の空港炭素認証制度を通じて空港産業の気候変動への寄与を減らしつつ、長年にわたって我々は気候変動式の両側をみてきたが、現在会員メンバーに気候変動が空港運営に及ぼす影響の可能性に関する評価、計画、準備の支援のためのツールキットを提供することになった。」

「安全性の面はまったく別のこととして、空港容量はここ欧州ではますます減少していくリソースであり、従って維持し、保護する必要がある。基本的に、これが空港容量に関連する安全性保持と経済繁栄に関するものである。」

リンク
ユーロコントロール−変化する気候への航空の適応
ユーロコントロール−「成長の課題:気候変動リスクと回復力」報告書(pdf)

気候の地域毎の欧州航空への影響(情報源:ユーロコントロール)

ハリケーンサンディ通過後の水に沈んだニューヨークのラガーディア空港