アムステルダム・スキポール空港 Amsterdam Airport Schiphol

1.基本情報

● IATA/ICAO CODE AMS/EHAM
● 国・地域 オランダ
● 所在地 北ホラント州 ハーレマーメール
● 運営者 スキポールグループ会社  http://www.schiphol.nl/

 スキポール空港は、1916年9月19日に軍事利用を目的として開港したが、第一次世界大戦後の1919年10月に民間空港となった。空港は、オランダ西部の北ホラント州(Noord-Holland)、ハーレマーメール(Haarlemmermeer)の東に位置し、アムステルダム市内からは10 km離れている。空港周辺の人口密度は高く、空港を中心として半径200 km以内には3,400万人が居住している。
 2003 年2月に施行されたスキポール空港の新政策により,5本目の滑走路の供用開始とともに滑走路が5本になった。さらに、スキポール空港は6本の滑走路が整備されており,24時間運用で,1時間当たり110便程度の航空機の発着が可能である。Airport Council International (ACI:国際空港評議会)の統計(2014年)によるとスキポール空港の利用客数は,54,978,023人/年で、世界14位である。発着回数は452,687回/年で、世界13位である。スキポール空港は特にビジネス拠点としての役割が大きく,スキポール空港で乗り換えてまた別の目的地に行く、ハブ空港としての役割が大きい。オランダ経済にとって空港は重要であり、健固たるインフラがあるとことが必要であり、空港整備及び対策は国の重点課題とされている。

● 統計
   利用者数(2014年) 54,978,023人
   発着回数(2014年) 452,687回
   https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%8F%E6%A8%A1%E5%88%A5%E3%81%AE
%E7%A9%BA%E6%B8%AF%E4%B8%80%E8%A6%A7

● 滑走路:6本

方向 長さ×幅
18R/36L 3.800 m x 60 m
06/24 3,500 m x 45 m
09/27 3,453 m x 45 m
18L/36R 3,400 m x 45 m
18C/36C 3,300 m x 45 m
04/22 2,014 m x 45 m (通常は使用せず)

スキポール空港の滑走路および空港と都心の位置関係 http://inzicht.bezoekbas.nl/
その他 https://www.google.co.jp/maps/@52.3690656,4.8114043,12z?hl=ja
● 将来計画
(短期計画) 2020年までに,現在の滑走路の本数のまま発着便数を51万回/年に増便する計画。但し
(長期計画) 2025年までに,60〜65万回/年に増便する計画(現在約44万回。ヨーロッパ最大のハブ空港化を目指す)と滑走路増設とターミナルビルの建設を計画

●その他情報
  https://skyvector.com/airport/EHAM/Amsterdam-Schiphol-Airport
  Webカメラ http://www.sheratonamsterdamairportview.com/

2. 騒音軽減の取り組み

 オランダでは特に,「バランス」及び「持続可能性」に重点をおいた環境対策を行っている。

● 空港周辺対策に係る財源・法令
○ 財源
 FAAのAIP及びニューヨーク・ニュージャージー空港公社の空港改善計画
○ 騒音値に応じた課金
 空港周辺対策費用の財源は、主に空港使用料、及び着陸時のノイズサーチャージ(時間規制に違反した場合の罰金等)である。

・空港使用料
 空港使用料は以下に示す4段階の優遇措置があり、騒音証明値の3点の合計騒音値(EPN)がChapter3を基準値として、それよりも静かになるほど優遇されている。根拠法はAviation Act(航空法) 、Civil Aircraft Noise Disturbance Levy(民間航空機騒音妨害税) やスキポール空港法等である。

カテゴリ MCC3
(Chapter3適用外)
Category A Category B Category C
騒音値*とChapter3基準値の差 0 dB~-5 dB未満 -5 dB~-9 dB未満 -9 dB~-18 dB未満 -18 dB~
優遇 料金+60 %
昼料金 7.62 €/t
料金+40 %
昼料金 6.66 €/t
料金+0 %
昼料金 4.76 €/t
料金-20 %
昼料金 3.81 €/t
対象機材 A300、
B737~200、
B767~300、
DC-10
A321、
B737~500、
B747~400、
MD-81
A320、
B737~800、
B777~200、
CRJ700
A380、A340、
MD90、CRJ200
Aviation Act(航空法) ,Civil Aircraft Noise Disturbance Levy(民間航空機騒音妨害税) やスキポール空港法等に基づく
* 騒音証明値の3点の合計騒音値(EPN)

○ 制度
 オランダ国は法律(スキポール空港法:オランダ航空法第8章)を定めて各種規制を行っている。スキポール空港周辺の環境対策に係る役割は、環境省(Ministry of Infrastructure and Environment (IenM))が基本的に騒音対策に係る制度設計・規制に策定及びノイズコンターの作成を行っている。

①航空機騒音の発生源対策

種類 制限の有無
チャプター2適合機材制限 1) 制限あり
チャプター2適合機の段階的退役 2) 制限あり
チャプター3適合機材制限 3) 制限あり

Chapter 2 75,000ポンド以上の機材は、EU加盟国の空港で運用禁止となっている
2002年4月1日から、EU加盟国の空港において運用されている75,000ポンド以上の民間亜音速ジェット飛行機は、EU指令(92/14/ EEC)に従い、Part II、Chapter 3, Volume 1 of Annex 16に定める基準を遵守しなければならない。

②騒音低減のため運航規制等の工夫

内容 実施の有無
連続降下進入方式 1) 実施
優先滑走路方式 実施
離陸、上昇方式の制限 高度毎に離陸及び上昇方式が決められている
待機旋回 効率の良い着陸誘導
固定半径回転 2) Fixed Radius Turn の実施
滑走路使用に関する規制 3) 実施
エンジンランナップの制限 専用のハンガーで実施
GPU使用の推奨 4) 実施
空港の夜間制限 リバース使用禁止(22時から6時)
ICAO/Chapter3適応外は22時から6時まで離着陸を規制

1) 連続降下進入方式CDO・RNAV
 23時から6時の間は、連続降下進入方式及びRNAVの導入が推奨されている。連続降下進入方式の最終進入高度は7,000 ft(約2,133 m)である。

2) Fixed Radius Turn(固定半径回転)航法
 騒音暴露人口を削減するために、人口密度が高い地域と地域の隙間にある人口密度が低い空間に集中して飛行する航法が試験的に実施された。

http://www.kdc-mainport.nl/index.php/en/projects/81-noise-annoyance-reduction/94-cros-pilot-3b-en-gb-2

3) 滑走路使用に関する規制(preferential runway)
 - RWY(滑走路)18Rは離陸に使用できず、RWY36Lは到着には使用できない
 - RWY36Rは離陸に使用できず、RWY18Lは着陸には使用できない
 - 23時から6時までの間、RWY36は離陸に使用できず、RWY18Cは着陸には使用できない
 - 23時から6時までの間、RWY09/27は離陸には使用できない
 - 23時から6時までの間、RWY24は着陸には使用できない
 - 23時から6時までの間、RWY04/22は離陸には使用できない
 - 23時から6時までの間、RWY18Lは離陸には使用できない
 - 23時から6時までの間、RWY36Rは着陸には使用できない

4)GPU使用の推奨:
 スキポール空港では,スポットB16, B20, B24, B28, B32, B36にGPU(Ground Power Unit:地上電源装置(本稿では,地上に固定された電源装置をGPUと呼ぶことにする))が設置されており,騒音低減及び,環境配慮のためにGPUの使用が推奨されているようである。また,APUを使用する際は着陸時にブレーキを掛けてから5分以内,離陸時は出発10分以内という使用制限がある。

③空港周辺対策・土地利用

計画の種類 実施状況
騒音評価指標 Lden と LAeq(23〜7時)
防音工事 Lden 58 dB以上の地域が対象。2012 年までに全て終了している。
補償 ・住宅地価下の下落に対する補償
・空港に隣接した住宅取得の補償
土地利用に関する規制 開発制限
・Lden 58 dB以内:病院、学校、住宅等の建設禁止
・Lden 70 dB以内:新たな住宅の建設禁止
スキポール空港法(オランダ航空法第8章)による制限的な空間利用規制
対策費用の財源 ・空港使用料
・着陸時のノイズサーチャージ(時間規制に違反した場合の罰金等)

1) オランダは、騒音評価指標してLdenが用いられている。旧騒音評価指標は、Ke(コステン)である。Keは、1967年にオランダのKosten教授により提案されたもので、空港周辺のノイズコンターはKeに基づき作成された。Ke40はLdenに換算すると58 dBに相当、Ke20はLden48 dBに相当する。


図 スキポール空港周辺のLden48dB(A)と50dB(A)コンター

引用:http://noiselab.casper.aero/ams/#menu=g_effect_op_de_omgeving/page=g_geluidbelasting/target=subcontent

3. 環境に配慮した取り組み

・騒音監視システムおよび飛行経路監視システム及び苦情受け付け方法
システム 提供情報
騒音監視システム NOMOS 1)
  URL http://noiselab.casper.aero/ams/
  騒音監視局 31局
  提供情報 ・航空機騒音
・周辺騒音
・1日当たりの発生回数(集計)
飛行航跡システム CASPER 2)
  URL http://inzicht.bezoekbas.nl/
  提供情報 ・出発・到着・上空通過の種別
・航空機識別
・機種
・出発/到着空港
・高度
・速度
苦情の受け付け オンライン・電話・メール・スキポール住民相談窓口 3)

1)空港周辺に設置された騒音測定局の騒音値、騒音分布、飛行経路等はNOMOSで閲覧可能である。 情報遅延は15分であり、緊急時等には公開がストップされる。


 2)CASPERでは、飛行経路やエアライン・機材等の情報が公開されている。情報遅延は15分であり、緊急時等には公開がストップされる。


3) Bas(Bewoners Aanspreekpunt Schiphol)はスキポール空港を離着陸する航空機に関する問い合わせや苦情を受け付ける機関である。2007年6月に設立された。Bsaはスキポール空港公社およびオランダ航空管制所(LVNL)の共同で運営されている。職員数は7名。苦情はwebによるオンラインのほか、電話及び訪問で受け付けており、苦情に関する情報は統計処理され環境対策に活用されている。また、各種レポート、出版物等を公開している。
http://www.bezoekbas.nl/

○ ステークホルダー・協議会
1. スキポール空港周辺地域協議委員会(CROS: Regional Schiphol Airport Consultation Committee)
 スキポール空港法(オランダ航空法第8章)においての設置が規定され、IenMの管轄下で2003年に設立された。IenMは住民や地方自治体と月1回程度議論している。IenMはこうした住民との直接のやりとりの場を重視しており、従来の環境影響評価だけでなく、コミュニケーションをとることは非常に重要であると考えている。

2. Alders Table
 環境省の元大臣であるHans Alders氏が設置した円卓会議である。スキポール空港、住民、地方自治体、航空会社、ATC(管制)により構成されている。設立当初はスキポール空港に対する2つの目標(①国際交通のハブとしての役割を担う空港であること、②空港容量拡張に伴うQOLの確保に同意する者らが会議に参加が許されていた。
 2013年にはCROSとAlders Tableの合併が決定した。合併により、スキポール空港の問題を共有し、互いに議論することが可能となる。合併後の当面の重点課題は、空港周辺をどのように開発していくか、7本目の滑走路新設時の苦情対応である。