サンフランシスコ国際空港 San Francisco International Airport

1.基本情報

● IATA/ICAO CODE SFO / KSFO
● 国・地域 アメリカ合衆国
● 所在地 カリフォルニア州サンマテオ郡
● 運営者 City & County of San Francisco/San Francisco Airport Commission http://www.flysfo.com/

 サンフランシスコ国際空港(SFO)は,1927年に設立されたカリフォルニア州サンフランシスコ市から南に約21キロメートルに位置する国際空港である。SFOは,カリフォルニア州のベイエリアではロサンゼルス空港に次ぐ発着便数を誇る主要空港であり,ヨーロッパ・アジアへの玄関口となっている。発着便数は一日1,000便を超える。
 サンフランシスコ国際空港は,クロース・パラレル方式で2本×2組,計4本の滑走路が配置され、同時離着陸(オープンパラレル方式)が行われている。サンフランシスコは霧の発生が多く,気象条件が悪化すると滑走路が閉鎖され、到着の遅れの原因となっている。

● 統計 (AIC調べ)
   利用者数(2012年) 44,477,209人
   発着回数(2014年) 424,566回

● 滑走路

方向 長さ×幅
10L/28R 3,618m x 45.7 m
10R/28L 3,231m x 45.7 m
01R/19L 2,636m x 45.7 m
01L/19R 2,286m x 45.7 m

2. 騒音軽減の取り組み

 空港周辺における騒音対策は、Part 150に基づいて土地利用計画(移転補償等)や防音工事対策並びに、サンフランシスコ国際空港Airport, Aircraft Noise Abatement OfficeによるNoise abatement programの2種がある。

● 空港周辺対策に係る財源・法令
○ 財源
 FAA(AIP)と空港の資金を合算して提供される。FAAのガイドラインでは,FAAの資金を提供できるのは,FAAが承認したLden =65dBのノイズコンター内の騒音対策が必要な施設に対してである。
 空港周辺対策に係る財源は,FAAからのAIP補助金(80%)並びに着陸料等のSFO General Revenue(20%)である。騒音による課金(Noise Surcharge)や騒音に関する税等はない。

□AIP(Airport Improvement Program)補助金
・連邦税に空港整備用の特別会計が設定されている。名称はAirport and Airway Trust Fund(AATF)。用途は空港運用、設備、研究開発、補助金などである。
・空港は、FAAからAATFよりAIP補助金を受け取ることが出来る。
・AIP補助金は複数の分配基準がある。数値基準で分配されるFormula Fund(公式資金)とProject審査で分配されるDiscretionary Fund(裁量資金)である。
・騒音専用の補助は、Discretionary Fund(裁量資金)の中に含められおり、FAAがPart150計画を承認して補助が支給される。
 http://faa.gov/airports/aip/

○ 実施  空港周辺対策の実施主体はAirport AuthorityであるSFOである。防音工事プログラムは,工事対象を定める地方自治体によって直接運営している。
 SFOは住宅の防音工事対策及び,移転補償に関する対策プログラム(FAAによるPart150 study)を実施した米国最初の空港である。65 コンター内の住宅の騒音低下のために予測と改善が行われた。
 現在までにサンフランシスコ近隣都市への移転及び,防音工事対策に153億ドルが費やされている。

①航空機騒音の発生源対策

種類 制限の有無
チャプター2 適合機材制限 1) 制限あり
チャプター2 適合機の段階的退役 2) 制限あり
チャプター3 適合機材制限 3) 制限なし

ICAOのNoise CertificationにおけるChapter 2基準の航空機については2000年代初期に全て退役している。Chapter 3基準についての規制はない。

②騒音低減のため運航規制等の工夫

内容 備考
夜間優先滑走路 1) AM 1:00~AM 6:00の時間帯により陸地・人口密集地を避けた飛行
優先飛行経路方式 2) Shoreline Departure, Gap Departure, Foster City Arriva
騒音軽減運航方式 Ocean Tailored Arrivals の導入
エンジンランアップの制限 夜間、22:00から7:00の時間帯はエンジン試運転を制限
グランドランアップ監視システム あり
補助動力装置(APU)の制限 原則としてGPUを使用することが推奨されている。APUの使用制限は以下の通り。
・国内線:出発30分前を例外として、22:00-6:00の間APUの使用が禁止されている。
・国際線: 昼間(7:00-22:00)は、エリアAおよびGのゲートを45分以上使用する場合、原則としてGPUを使用する。プッシュバックを開始するまでに30分以上の時間を要する場合は、APU使用は事前に許可が必要となる。
夜間(22:00-7:00)は、使用可能であれば全ての航空機はGPUを使用することが要求されている。プッシュバックを開始するまでに30分以上の時間を要する場合は、APU使用は事前に許可が必要となる。
Fly quiet program 3) 導入

1)優先滑走路方式
 AM 1:00~AM 6:00の時間帯は,陸地・人口密集地を避けて海上を飛行する。
① 滑走路10L/R から海側への離陸
② 滑走路28からの海岸線に沿って離陸し、速やかに右旋回して居住地を避けて飛行する

2)優先飛行経路方式
・ Shoreline Departure:
 日中、滑走路28を使用する場合は、可能な限り速やかに右旋回することが推奨されている。北東方向の旋回により,北西方面の地域の騒音軽減が図られる。

・ Gap Departure:
 日中、滑走路28からの離陸の場合は、離陸後直進する。悪天候時には、Shoreline Departure方式が使用出来ないため、この飛行経路が用いられる。South San Francisco, San Bruno, Daly City, Pacifica等の騒音軽減を目的とするものである。

Shoreline Departure 及びGap departure

・ Foster City Arriva:
 夜間(PM 11:00~AM 6:00)帯における滑走路28の着陸時には、San mateo Bridgeの上を飛行してFoster Cityの上空飛行を避ける。
※優先滑走路方式および優先飛行経路方式の概要

Foster City Arrival

・Ocean Tailored Arrivals
 騒音軽減運航方式として、Ocean Tailored Arrivalsを早朝に実施している。ボーイング、NASAとの協力のもと実施している。太平洋側から到着する航空機は、7,000 ftから連続して降下する。

https://www.lawa.org/uploadedFiles/lax/noise/presentation/noiseRT_100113_NASA%20Oceanic%20Tailored%20Arrivals.pdf

3) Fly quiet Program
 サンフランシスコ空港は,最初にFly quiet Programを導入した空港である。Fly quiet Programは騒音低減を目的としたもので6項目について評価し、その結果は、ニュースレターや公刊物、公の会議の場で公表される。
 1. Fleet Noise Quality Rating
   低騒音型機の運用により高い得点が付けられる。SFOでの運航スケジュールの中での機材が対象となる。
 2. Noise Exceedance Rating
   空港周辺の測定点(計29点)ごとに最大騒音レベルのリミットが決められている。これを超えた回数がカウントされる。便名,機種の全てがログされる。
 3. Night Time Preferential Runway Use Rating
   夜間帯における3種類の優先滑走路の使用割合と,滑走路28を直進した割合で評価する
 4. Shoreline Departure Quality
   Shoreline Departure Quality優先飛行経路方式において高速道路101号線よりも海側であればgood,陸側であればmarginalあるいはpoorと評価される
 5. Gap Departure Quality
   Gap Departure Quality優先飛行経路方式に基づいて、good 、marginal、poorの3段階で評価される
 6. Foster City Arrival Quality
   Foster City Arrival Quality優先飛行経路方式に基づいて、good 、marginal、poorの3段階で評価される

③空港周辺対策・土地利用

計画の種類 実施状況
防音工事 DNL65以上のエリアに対して実施
対象地区は、County of San Mateo, Daly City, Millbrae, Pacifica, San Bruno and South San Franciscoの6地域
家屋 1983年以来,15,000軒以上の家屋の防音工事を実施。達成済み
学校等 1983年以来,7つの学校、8つの教会の防音工事を実施
移転補償 実施していない

 空港周辺における騒音対策は,FAR Part150のNoise Compatible Program(NCP)に基づき騒音軽減策の計画を実施している。Ldn=65 dBの騒音コンターマップに基づいてNoise zoneを制定し,Noise zone内の家屋について防音工事費用の補償を行っている。防音工事は、2004年に全て終えている。移転補償は行っていない。

3. 環境に配慮した取り組み

・騒音監視システムおよび飛行経路監視システム及び苦情受け付け方法
システム 提供情報
騒音監視システム VOLANS
  URL http://www.flysfo.com/community-environment/noise-abatement/live-flight-tracking
  騒音監視局 29局
  提供情報 -
  飛行航跡システム VOLANS
  URL http://www.flysfo.com/community-environment/noise-abatement/live-flight-tracking
  提供情報 ・出発・到着・上空通過の種別
・航空機識別
・機種
・出発/到着空港
・高度
・速度
苦情の受け付け 1) オンライン・電話・メール・手紙

○ ステークホルダー・協議会
・サンフランシスコ国際空港/コミュニティ円卓会議
 コミュニティ円卓会議は、SFO近い23市町村から選出された代表者で構成されている。隔月で会議が開催され、空港の騒音軽減活動に関する公開討論が行われている。