海外情報紹介 電動タキシング装置が航空機の燃料消費を減らす

6月17日から23日まで開催されたパリエアショーで、Honeywell社とSafran社のジョイントベンチャーによって開発中の、電動タキシング装置(Electric Green Taxiing System (EGTS))が実演公開されました。タキシング時に主エンジンを使用しないで、APU(補助動力装置)の電力を利用して自立走行するシステムです。主エンジンを使用しないので、燃料を浪費せずにすみ、排出ガスが減り、騒音も小さいとのことです。ご参考までにBBC Newsの記事の要約を掲載します。

原記事:
http://www.bbc.co.uk/news/business-22992654

装置についてのアニメーションビデオ:
http://www.youtube.com/watch?v=8av4C4Bn2JM&feature=player_detailpage

パリエアショーで展示するまでのビデオと、関連記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1710

Honeywell社の関連記事:
http://aerospace.honeywell.com/markets/airlines/2013/06-June/honeywell-and-safran-to-demonstrate-electric-green-taxiing-system-at-paris-air-show


パリエアショー:地上で最も有効に働く航空機技術

2013年6月20日

飛行する戦闘機が頭上でうなりをあげ、ぴかぴかの新型旅客機が並ぶ中で、旧型のエアバスA320がパリエアショー開催週の間、多くの注目を集めていた。

 この航空機は飛行せず、エンジンを始動することもなかった。が、とてもゆっくりと移動した。そして、このことが観衆を引きつけた。

 これはなぜ数年前に売り出されなかったのだろうか?と疑問を抱くような製品が、時折展示される。

 協力関係を結んでから2年後、航空技術界の2大ビッグネームであるHoneywell社とSafran社がパリエアショーに環境に優しい電動タキシング装置(Electric Green Taxiing System (EGTS))を持ってきた。

 先進工学が組み込まれた複雑な装置だが、説明は簡単にできる。

 制御装置が車輪に取り付けられ、航空機の主エンジンよりむしろ電力系統から動力を得る。そのため、空港で航空機がタキシングする場合、高価な燃料を浪費しない。

 2つの動力源を使用して効率性を高めるハイブリッドカーに少し似ている。

 その結果は? 排出ガスと運用コストが減り、エンジンの寿命が延びて騒音が減る。

試験運用
 とにかく、それがHoneywell Aerospace社のEGTS計画の統括責任者であるBrian Wenig氏の説明である。A320型の航空機では3%から4%の燃料を節約するだろうと彼は試算する。

 「この装置は劇的に燃料消費を減らし、運用コストを下げるだろう。」と彼は言う。「そしてこの装置は従って、駐機スポットの内外で航空機の地上器材を操作する必要性を、完全には取り除かないまでも、減らすことにはなるだろう。」

 Honeywell社とSafran社は、エアラインが航空機1機につき年間約$200,000(£129,000)の燃料費をこの装置で節約できるだろうと信じている。

 エールフランスはこれらの主張に合理性があるかどうか調査しようとしているエアラインの1つである。

 フランスを代表するエアラインはエアショーにおいて、EGTSの技術的恩恵の可能性と、運用上の恩恵と経済的な恩恵の可能性について分析するつもりだと公表した。

 単純に見えるが間違いなくそうではない、この種の装置の画期的な新局面である。ショーの間、メーカーは旧型のエアバスを使用し、電力系統から引き出した動力で、タキシング操作を行うにあたり、パイロットが重い機体を完全に制御したままでいられることを実演した。

 EGTSは開発中の唯一のシステムではなく、L-3社やWheelTug社が類似の製品を開発しているところである。

 その一方で、イスラエルの航空機産業には独自のTaxiBot 装置があり、メーカーの主張によれば、かなり大型の広胴機の操作に使用できるという追加利点があるそうだ。

 しかし、Honeywell社とSafran社は、この世界最大の航空宇宙イベントでオブザーバの視線を引き付けながらEGTSをうまく実演できたことで、競合相手をなんとか出し抜くのに成功したと感じている。

収入の流出
 パリエアショーの前に、このシステムは実際、約100マイルの滑走路上試験を経ていた。次の段階としては、速度を速めて最大離陸重量で試験を行う。

 言うまでもなく、EGTSは高機能な装置の一部であるが、Honeywell社とSafran社がこの計画に数千万ドルを注ぎ込む動機となったのは、技術的進歩が大きかったことよりむしろ、エアラインが燃料効率改善を要求したためだった。

 ボーイング社の787ドリームライナーと、ボンバルディア社の就航間近なCシリーズ機の開発もまた、顧客の、とてつもなく高い燃料費を削減する必要性が推進力となっていた。

 Wenig氏は言う。:「エアラインの燃料効率技術の要求は今や最優先事項である。高騰する燃料費がエアラインの収入と利益をますます食いつぶし、エアラインの直接的運営費の50%を燃料代が占めるという地域が世界にはある。

 「EGTSは小規模な改修のみで従来の着陸装置に取り付けられ、着陸装置の構造全体の機械設備を時間をかけて取り替える必要性を緩和する。」と彼は言う。

 エアラインのエンジンは飛行用に作られていて、離陸の順番を待って出発ゲートでアイドリングするためには作られてはいない。

 1日に数回使用される中距離型機については、問題が拡大する。少ない回数で長距離を飛行するジャンボジェットよりも不相応な量の燃料を燃焼するだろうからである。

 「通路が1本の航空機は、日に8回から10回のローテーションなら地上での運航が平均2.3時間で、結果として航空機が地上から飛び立つ以前にかなりの量の燃料を燃焼することになる。」とWenig氏は言う。

 そして、短距離型と中距離型の航空機を120機かかえるエールフランスのようなエアラインにとっては、節約する燃料の量はかなりのものになるだろう。現在使用されている通路1本の航空機は約10,000機で、Honeywell社とSafran社はETGSの潜在市場はこれらのうちの約80%であると主張している。

 Wenig 氏は、2016年の実用化に向けた準備が順調に進んでいると述べ、従来型の航空機用の改良版がその直後に市場に出るとのことだ。