IOP PublishingのEnvironmental Research Lettersの第8巻第3号に「航空のNox排出物に係わるオゾンの影響の時間的及び空間的なばらつき」という発表が掲載されました。以前この欄でも紹介しましたマサチューセッツ工科大学のSteven R. H. Barrett教授らによる新たな研究発表です。ご参考までにIOP Publishingのプレスリリースの要約を掲載します。
原記事:
http://ioppublishing.org/newsDetails/pacific-flights-create-most-amount-of-ozone
原論文:
http://iopscience.iop.org/1748-9326/8/3/034027/article
2013年9月5日
航空機による汚染物質から生成されるオゾンの量は、オーストラリアとニュージーランドの離発着便によるものが最も多いと、新規調査が示している。
オゾンの温室効果ガスとしての短期的影響は、二酸化炭素(CO2)の短期的影響に匹敵するほど強いので、今日9月5日木曜日にIOP Publishingの雑誌Environmental Research Lettersで公表された発見は、航空政策に幅広い関わりを持つ可能性がある。
マサチューセッツ工科大学の研究者達は全球化学輸送モデルを使用して、世界で特にオゾン生成に反応しやすいのはどこか、そしてその結果最も多い量を生成するのはどの便かを調査した。
その結果わかったのは、ソロモン諸島の東1,000kmあたりの太平洋上空域が最も航空機排出物に反応しやすいということである。この空域においては、航空機排出物1kgが − 特に一酸化窒素や二酸化窒素のような窒素酸化物(NOx)が − 1年間でオゾン15kgを余分に生成することになるだろうと研究者達は見積もった。
この空域の感受性は欧州のそれより約5倍高く、北米の空域の感受性より3.7倍高かった。
論文の筆頭著者であるSteven Barrett氏は言った。:「新規の排出物に対し、大気の最も清浄な部分が最も劇的な反応を示すと我々の発見が示す。太平洋のこの部分において新規排出物は比較的大きい大気の反応を引き起こすだろう。」
約83,000便を個別に分析し、出発地か目的地がニュージーランドかオーストラリアの便が上位10位のオゾン生成便であることを研究者達は発見した。感受性が最も高い太平洋上の空域を大部分の便が通過する、シドニーからボンベイへの便が最も大量のオゾン − 25,300 kg − を生成することが判明した。
さらに、オーストラリアとニュージーランドを出発地と目的地にする航空機は大概が機体が超大型でかつ飛行時間がしばしば大変長時間なため、多くの燃料が燃焼されて多くのNOxが排出される。
オゾンは比較的寿命の短い温室効果ガスで、その生成と破壊はその場の大気の化学状態にかなりの部分依存しているため、世界規模で影響を及ぼすというより、特定の時間において特定の区域に影響を及ぼすようだ。
4月のフライトよりも10月のフライトの方が40%多いNOxを排出することを研究者達は発見した。
「民間航空による排出物が大気に及ぼす影響全体については多くの調査が行われてきたが、個々のフライトがいかに環境を変化させるかについてはほとんど知られていない。」
「排出物に対する感受性が現在最も高い区域は民間航空の成長が最も速い区域であり、NOx排出物に対するオゾン生成の感受性が高い、世界の特定空域を迂回するよう航空機の経路を変更する取り組みが、航空による気候への影響を顕著に減らせる方法になりうる可能性がある。」
「もちろん、長距離便の方が燃料を多く燃焼し、CO2の排出も多いので、飛行距離の増加とオゾンの影響のような気候への他の影響との間にトレードオフがあるだろう。よりよい理解を得るためと、そのようなトレードオフが正当化出来るかどうか見極めるために、このトレードオフの科学的根拠にはさらなる調査が必要である。」とBarrett氏は続けた。
海外情報紹介 太平洋便が最も大量のオゾンを生成
- 2013年11月 5日(火) 11:00 JST