原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1825
2014年2月21日金曜日−欧州委員会の代表を含め、欧州議会(EP)そして欧州連合理事会に代表されるEU加盟国が参加する、航空関連EU ETSをこれからどうするかについて合意を得るための、第一回目の今週の三者会談は、結果的にいくつかの課題については意見の隔たりを埋めることができたが、隔たりが埋まらないままの問題は残っている。大陸間便については『時計を止める』(STC)という適用制限を行うのは2012年のみで、EU機関が炭素排出量規制制度の運用について合意を得られなければ、国際的論争が再燃するのを念頭に置いた上で、自動的にEU指令の元来の完全実施範囲に戻ることだろう。EU加盟国がSTCの規制範囲の修正版を支持する一方で、EU指令を先導する立場にある欧州議会の環境委員会は、EEA空域内を飛ぶ全便を規制するという欧州委員会提案を支持している。欧州議会の交渉担当者が2016年まではSTCを進んで受け入れる代わりに、ETSの取り引きによる収入を気候対策目的に割り当て、排出量の上限を厳しくするよう加盟国に要求しているようにみえる。 EU加盟国−特に第三国の圧力の影響を受けやすいエアバス社の製造業の株式を持つフランス、ドイツそして英国は、ICAOによる市場に基づく国際対策(MBM)の施行が見込まれている2020年までSTCを継続することを望んでいる。ドイツ人の欧州議会議員であるPeter Liese氏が三者会談の行程を先導している欧州議会との歩み寄りが可能なのは、2016年の終わりまで修正版STCを継続し、ICAOが2016年遅くに開催される総会で国際的MBM実施のための国際的合意を取りまとめられなかった場合、2017年からEU ETSを完全実施に戻すという案でだろう。
「欧州連合理事会はSTCを2016年まで現在のままの適用制限内容で延長することを強硬に主張している。」と会議後にLiese氏は報告した。「そこで我々はある提案を行った。:我々(欧州議会議員)がこれを了承するのは、将来のETSの収入を気候変動対策に割り当てることを含めた包括提案の部分としてのみである。収入の使途を定めればETSに関する第三国との現在の信頼の危機は打開可能だと考えている。」
しかし、2008年に初めてETS指令が成立した時、欧州議会が類似の要求を行ったが加盟国は拒否し、この件は特に英国にとっては譲れない一線だと見られている。ETS指令には排出枠取り引きの収入は、温室効果ガス排出物の低減のための努力、EUや第三国における気候変動適応のため、及び排出物を出さない輸送の研究開発のために「使用されるべきである」とは書かれているが、使用目的の決定は個々の加盟国の判断に委ねられている。
「これは高度に政治的な論点である。」と欧州議会の環境委員会の委員長であるMatthias Groote氏は述べた。「現時点では、ETSの収入はEUの大臣らの懐に消えているが、気候変動対策の支援金として使われているだろうと推測される。その代わりにこの資金を、例えばGreen Climate Fundに割り当てて欧州地域の研究開発のために使うことができるだろうと考える。そうすれば2015年にパリで話し合いが行われる予定のUNFCCCに先立ち、EUがこの問題を真剣に考えていることを我々の同盟国に対して示すことになるだろう。」
そして、年間のCO2排出量が1,000トンに届かない、ビジネスジェットのような非商用飛行の小規模運航者は、総計でかなりの数になるのだが、規制対象になるCO2排出量はほんのわずかなので、管理上の負担が重くなることが大きな理由で、恒久的にEU ETSの規制対象から外すことをEU加盟国は望んでいる。それ以上に政治的理由で、加盟国はEEA内のフライトについて年間CO2排出量が500トンに満たない小規模商用運航者は規制対象外にすることを望んでいる。これにより、例えば不定期にEEA内でpositioning flights(フェリー便?)を運航するような第三国からのエアラインを除外することになり、自国のエアラインにSTCの適用範囲でさえ順守しないよう指示している国家との衝突の可能性を回避することになる。
欧州議会の議員らは、1,000トンに満たない非商用運航者の一時的適用除外には耐えられても、商用運航者のde minimisな適用除外には耐えられないだろうと思われる。
「欧州議会の委任により2016年までは空域で規制するという我々の立場を断念する方向へ大きく舵を切ることになった。」と会議の後、Liese氏とGroote氏は声明を述べた。「今やボールは欧州連合理事会のコートにある。欧州連合理事会が我々の 提案を拒否するなら、交渉が完全に行き詰まる危険性を冒すことになり、欧州連合理事会はその責任をとらねばならなくなるだろう。」
次回の三者会談は3月4日に行われる。
海外情報紹介 EU ETSの「時計を止める」適用範囲を2016年まで延長する協定の実現へと少し近づいたが、収入の割当には赤線が引かれている。
- 2014年2月27日(木) 09:00 JST