海外情報紹介 エアラインがEU ETSを順守しないので、EU加盟国との間の航空に関わるEU ETS交渉を頓挫させると怒りの欧州議会議員が脅す。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1816

 2014年1月29日水曜日−欧州議会の政治家達はEU加盟国に対し、2012年にEU ETSを順守できなかったエアラインに厳しく対応するよう要求した。航空関連EU ETSの欧州議会の報告責任者であるPeter Liese氏は、強制措置が取られない場合は、加盟国を代表する欧州連合理事会との、欧州指令の将来に関する今後の交渉を頓挫させると脅した。EU加盟国、特にフランス、ドイツそして英国がETSの規模縮小を望んでいるのに対し、Liese氏と欧州議会議員の大部分が欧州委員会によるETSの空域規制提案を支持しているので、三者会談のプロセスは難しいものになると予想されている。中国、インドそしてサウジアラビアのエアラインは、2012年にEU内フライトの運航をしながらETSを順守しなかったとして名指しされた。その一方でEUの所轄官庁は、2013年にEU/EEAを離発着するフライトと、EU/EEA内部を飛行するフライトを運航するすべての航空機運航者は、3月31までに完全施行の場合の対象範囲で排出物報告を行うよう助言している。
 欧州委員会によれば、航空関連EU ETSの1年目の順守の状況は、EU/EEA内の『時計を止める』(STC)規制範囲による1年間の適用制限下で、全CO2排出物の98%に達したとのことだった。しかし、『政治的な動機で』順守しなかった多くのエアラインがあったことを、先週木曜日の欧州議会環境委員会(ENVI)の会議の席上で、欧州委員会のElina Bardram女史が報告した。

 法の実施は各EU加盟国の責任であり、実施のスケジュールは加盟国毎に異なるが、今までのところ期限は破られていないと、彼女は言った。欧州委員会は加盟国が実施の調整を行うことに同意し、2013年6月に、中国のエアラインを含め、EU ETSを順守しない航空機運航者に対して正式な通知が送付された。EUレベルでは、昨年10月のICAO総会以前には罰金は課さないという合意ができていたと、彼女は付け加えた。

 「それ以降は、我々は2月20日に次なる施行段階に移ることを目指すという一般合意が出来ている。」と彼女は欧州議会議員に語った。「EU法を実施するという加盟国の誓約を疑う理由は欧州委員会には無い。これは、法律の施行が加盟国によって最後まで順守されない場合に違反措置を取ることを我々はためらわないという意味だ。」

 どの加盟国がEU ETS指令を実施していないのか教えるよう請求して適えられず、「完全に不満足な」状況であることについて欧州委員会と加盟国を非難した、ENVI委員会の委員長であるMatthias Groote氏を含め、この報告ではENVIの欧州議会議員をなだめられなかった。

 実施状況についての問いを投げたSatu Hassi氏は、EU以外の国家からの圧力でEU ETSの規制対象が狭まったので、非EU運航者は欧州連合内で運航する場合はせめて順守すべきであると述べた。

 Liese氏は、委員会の席上で、そもそも2007年の立法化の最初から、EU法を順守しないエアラインからは運航ライセンスを取り上げるべきだと、欧州連合理事会を通じて言い張っていたのは加盟国だと述べた。

 「現在の法律が実施されているのかどうかさえ全くわからない状況では、[欧州委員会と欧州連合理事会との]三者会談で結論を出せるとは思えない。この件に関して加盟国があまりにも関心を払わないので、率直に言ってショックを受けている。」と彼は述べた。

 記者会見で、Liese氏は付け加えた。:「我々が欧州連合理事会と欧州委員会との交渉を進めるにあたり、EU指令の現在の「時計を止める」適用範囲が順守されていることは大変重要である。加盟国と欧州委員会が現在の法律を実施してこそ、可能な修正に関する必要手順について話し合いができるのだという、我々欧州議会からの強いメッセージになる。

 「我々が法律を修正しなければ、EU指令の完全実施に戻ることになるだろう。」

 現在のSTC指令が4月終わりに期限切れになるまでに、EU機関が妥協点を見つけられないことはありそうもないが、航空関連EU ETSを管理する責任がある加盟国の、たとえすべてではなくとも大部分の所轄官庁は、その管理下にある全航空機運航者に対し、3月31日(スペインの場合は2月28日)の期限までに、ETS指令の完全実施の範囲に沿った排出物報告を行うよう、勧告してきた。小規模運航者と後発開発途上国のエアラインを新規に対象外にすることを可能にすると同様に、2013年の排出物報告と排出枠の放棄を1年間先送りすることを可能にする欧州委員会の提案にもかかわらずである。

 所轄官庁の勧告がそれぞれ異なっていて、完全実施の場合の付属書1の排出物報告を3月31日までに行わないことでどこまで運航者が罰せれるかは不透明である。フランスのDGACは、望むなら運航者は報告できるが、期限までに報告をしなくても罰せられないだろうとこれまでに述べている。

 英国環境庁はそれよりは厳しい方針で、サーキュラーで以下のように勧告している。:「現在の英国とEUの法は変更されるまでは効力を持ち続け、検証済みの排出報告を2014年3月31日までに提出できないなら、そして2014年4月30日までに排出枠を放棄しなければ、罰則が課される。変更されないなら、そして変更されるまでは、2013年について報告と放棄の義務はETS指令の完全施行範囲についてであり、EEAを離発着するフライトを含む。」

 ウェブサイト上で大部分の所轄官庁の最近の指針を公表した、検証企業であるVerifAviaのJulien Dufour氏は助言している。:「提案された新しい法律の最終投票は2014年4月に予定されているので、報告が要求される後で排出枠の放棄を要求される以前に、もし新しいETS指令が成立する時は、運航者は正確な量の排出枠を放棄するために、報告の規模を適切な地理的範囲まで(例えばEEA内とか)縮小することが可能になるだろう。」

 「従って、2015年3月までの再提出については付属書1の欧州内での排出量の報告まで対象を狭めるという選択肢を持ちつつ、2014年3月31日以前は付属書1の完全な対象範囲を報告する計画を立てるよう、運航者に我々は推奨する。さらに、過剰放棄を避けるために、欧州連合の登録簿に排出量を記入して放棄するのは新規ETS指令が成立するまで待つよう運航者には勧めている。」

 PwC(訳注:世界4大会計事務所の1つ)のDennis Mes氏は付け加えた。「来たる期限への時間が短くて、我々はすべての顧客に対し、違反の危険を避けるために現在の期限内に完全施行の対象範囲で排出物の検証を行う準備をするよう助言している。要件については進展状況を密接に追っているので、所轄官庁或いは欧州委員会による指導に基づき、あり得る変更の影響に関して我々は顧客に情報を流すだろう。」

 ENVIの欧州議会議員は明日(1月30日)、輸送委員会と産業委員会の委員の反対意見を考慮しながら、欧州委員会提案とENVI独自の修正案について投票を行うところである(記事を参照のこと)。欧州連合理事会との三者会談での討論はその後引き続き2月中に行われ、3月にはEUの運輸大臣と環境大臣会合が行われる。3機関の間で合意が得られるならば、欧州議会全体での投票が4月半ばに行われることになっている。

リンク:

ETS指令の非順守と強制措置の議題に関するENVI会議(11:00:37開始)

EU指令の順守に関するPeter Liese氏の声明が行われた記者会見(9:46:45開始)