海外情報紹介 『時計を止める』適用制限を継続するため、欧州議会の交渉担当との取り引きでEU加盟国は意志を貫く。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1833

EU ETSについて(環境省):
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg/mrv-library/5.mrvprograms.html

 2014年3月5日(水曜日)−欧州政府の3機関、すなわち欧州議会、欧州委員会そして欧州連合理事会の交渉担当者間の合意により、完全実施ではなく1年間『時計を止めて』(STC)適用制限を行っていた航空に関するEU ETSについて、さらに2016年までSTCを延長することになりそうだ。欧州議会の環境委員会(ENVI)のメンバーに支持されて欧州委員会が提唱していたのは、EEA空域内での飛行部分については欧州を離発着するすべてのエアラインがEU ETSの規制対象となるという空域方式だった。しかし、国際的影響を心配したフランス、ドイツそして英国を先頭とした大部分のEU加盟国が行った譲歩は、ICAOでの国際的MBM(経済的手法)に関して拘束力のある協定が得られなかった場合には2017年からEU ETSを完全実施するという誓約程度で、どうもEU加盟国がSTC継続のための闘いに勝利したようだ。
 4月の欧州議会議員の総会で全体投票にかけられる前に、共同決定による合意はこれから3月19日にENVIメンバーの手に委ねられるだろう。ENVIの大部分の支持を得て法の修正が通過する見込みは五分五分でしかないとENVIの委員長であるMatthias Groote氏は言ったけれども、法の修正に関する欧州議会の報告責任者であるPeter Liese氏は、協定は受け入れられるだろうと信じている。

 2016年の遅い時期に開催されるICAO総会においてICAO加盟国が拘束力のある国際的協定に到達する可能性に関してLiese氏は悲観的なので、欧州委員会提案のように2014年から2020年まで空域を対象として排出量を規制するやり方よりも、2016年までSTCを継続し、2017年に完全実施に自動的に戻るやり方の方が、2013年から2020年までに規制対象になる排出量総計の点では最終的に環境には望ましいと判明する可能性があると、譲歩を正当化してLiese氏は述べた。

 排出量取引の収入を気候変動対策の目的に割り当てるという、Liese氏と彼の同僚議員によるEU加盟国への要求が通れば、加盟国に対し、収入をどのように使っているのか透明性を上げることを要求する文章が法律の改正文に差し挟めたのだが、大体が拒絶されたようだ。

 小規模の航空機運航者をETS制度の適用除外にする案の詳細は今のところ公表されていない。

 ブリュッセルに本拠を置くNGOであるTransport & EnvironmentのBill Hemmings氏はコメントした。:「急激に増大する航空排出物にはいずれ対処するという保証のみならず、重要な何らかの見返りさえ得られず、今回の協定で欧州政府は再度国際的な圧力に屈した。航空関連ETSの規制対象をEU内フライトまで縮小することは、要するに欧州の気候変動対策法の事実上の破壊を意味する。」

 彼は欧州議会議員に対し、この協定を拒否するよう要請した。この働きかけは、EU指令の包括的実施に違反があった場合には、自動的に対抗措置をとることと理解できる。


(訳注:原記事では、公表された合意の詳細について3月7日付で更新記事が追加されています。)