海外情報紹介 航空関連EU ETSについてどちらの提案を支持すべきかの欧州議会議員による公聴会が行われる重要な週

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1843

EU ETSについて(環境省):
http://www.ets-japan.jp/ovs/ovs_4_2.html

 2014年3月31日月曜日−今週の欧州議会では重要な投票があり、少なくとも2016年までの航空関連EU ETSの将来を左右しうる選択肢が2つ、欧州議会議員に提示されるだろう。欧州委員会、欧州議会、欧州連合理事会の間の三者会談においては、EU ETS制度の『時計を止める(STC)』適用制限を継続するということでEU加盟国と合意が得られたが、3月19日の最僅少差による投票結果により、この件を先導する環境委員会(ENVI)がこの妥協案を拒否したため(記事を参照のこと)、欧州委員会が提案し、ENVIのメンバーの大部分が支持する空域提案が、欧州議会の本会議に提示される。しかし、三者会談でのSTC協定は修正案として審議される見込みで、過半数の支持をうまく得られる可能性がある。そのような状況下、三者会談での協定を支持する航空産業の代表は空域提案に反対票を投じるよう求め、NGOは欧州議会議員に対し、空域提案に票を入れるよう呼びかけている。この問題に関する討論は水曜日(4月2日)の晩に行われる予定で翌朝投票が行われることになる。
 欧州委員会による航空関連EU ETSへの修正案すなわち、2014年から欧州経済地域(EEA)の空域内について全フライトの排出物を規制対象とするという空域提案を以前は強く支持していたPeter Liese氏、彼はこのEU ETS指令に関する欧州議会の報告責任者であるが、彼は今や、2016年までの期間限定でEEA内フライトについて適用することになるSTCの適用制限を支持している。市場に基づく国際対策を2020年から実施するための合意がICAOで得られなかった場合には、EU加盟国との合意により2017年からEU ETS制度は全国際便を対象にする完全実施に戻ることになる。

 三者会談の交渉で欧州委員会と欧州連合理事会との間に得られた譲歩は、 Liese氏自身の立場の変更を納得させるものであり、今や実際には、三者会談以前の彼自身の提案に彼は反対票を投じることになるだろう。

 欧州議会における最大会派の欧州人民党(EPP)グループの中道右派のメンバーであり、ドイツのキリスト教民主同盟に所属する欧州議会議員のLiese氏は、三者会談での協定に大多数の支持が得られると信じている。

 「私の所属する政治グループが欧州議会本会議に提出するのは三者会談での譲歩案であり、我々は圧倒的多数で支持することになるだろう。」とENVIが三者会談の協定を拒否した後にLiese氏は述べた。「輸送委員会(TRAN)で他の政治グループ所属の同僚議員らがさらに意欲に欠ける提案を支持したことを考えると、本会議では我々と同じ考えの議員が過半数を占めると私は大変楽観的に考えている。」

 しかし、ブリュッセルに本拠を置くNGOであるTransport & Environment (T&E)によれば、空域提案が採用されるとさらに2,700万トンのCO2が削減される可能性があるので、欧州議会議員の大多数がそれでも空域方式に賛成票を投じるだろうという希望をT&Eはまだ捨ててはいない。T&Eによれば、三者会談の協定が否定された場合に国際的貿易戦争が起きるという騒ぎが大きくなりすぎて、エアバスへの中国の注文が取り消される危険性が誇張されてしまった。先週、中国は60億ドル相当のエアバス社のA330型航空機27機の注文保留を解除した。

 「EU空域における航空排出物を抑制するための効果的なETSの実施を阻む政治的或いは商業的言い訳はもうありません。」とT&Eの持続可能な航空に関する責任者のAoife O’Leary女史は言った。「欧州議会全体が環境とEU主権のために立ち上がり、空域提案を支持するよう、我々は強く要請する。」

 彼女は、三者会談の協定を拒否すると航空関連EU ETSの元来の規制範囲に自動的に戻ることを意味するわけではないと指摘した。「それはデマですよ。」と彼女は言った。「欧州委員会の空域提案は明らかな歩み寄りである。空域で規制できないということは弱点をさらすことであり、さらなる抵抗を引き寄せ、ICAOにかけるべき圧力を消失させてしまうことになる。」

 しかしながら、航空産業のグループの主張では、STCの譲歩案を採用し損なえば元来の規制範囲が再度施行されることになり、EUを離発着するすべてのフライトを対象にすることになる。「これは逆行する動きととられ、ICAOで行われている国際対策開発のための作業の積み重ねの方向性を失わせることになる。」と、IATAや、運送会社や荷主を代表する国際組織を加盟団体として傘下に置いた、国際航空貨物顧問グループ(GACAG)からの声明では述べられている。

 三者会談で合意にこぎ着け、「環境委員会の票決を覆すこと、妥協案を受け入れてその速やかな採用を確実にすること」を欧州議会に要求したEU機関の姿勢の変化を、GACAGは歓迎すると述べた。

 世界規模で行政当局に対処する時に航空貨物分野のための統一意見が出せるよう結成された産業顧問グループであるGACAGは、「欧州委員会委員のHedegaard女史や彼女の顧問との高官レベルの接触を含めた、EUの政策立案者とGACAGとの継続した係わりあい」が、三者会談での合意を含めた結果につながったのだとコメントした。

 「世界の航空産業と規制機関との協力により航空排出物に関する歴史的な国際対策開発を成し遂げるため、この係わり合いの精神の継続を我々は強く支持する。」

リンク:

欧州議会本会議−航空関連EU ETSに関する討論と投票

欧州議会−本会議の討論と投票の生中継TV映像(4月2日と3日)

Transport & Environment

GACAG