原記事:
http://www.bbc.com/news/science-environment-27907399
文献:
http://iopscience.iop.org/1748-9326/9/6/064021/article
2014年6月19日最終更新00:47
Matt McGrath (BBCニュースの環境担当記者)
科学者によれば、航空機が作る空の巨大な飛行機雲は飛行経路を変更することで取り除ける可能性がある。
これらかすみのような人工の雲が気候変動に及ぼす影響を研究者らは懸念している。
しかし、従来の飛行ルートを変更することで温暖化への影響を抑えられる可能性が新しい調査で示された。
ロンドンからニューヨークへのフライトで大きい飛行機雲を作らないためには飛行距離を22kmだけ延ばせばよいと専門家は言う。
飛行機雲が形成されるのは航空機がとても温度の低い、湿った空気を通過する時で、航空機エンジンからの排気が凝集して目に見える煙になる。
寒冷化と温暖化の両方の影響を及ぼす雲
飛行機雲は巨大になることがある。:長さは最大で150kmになり、時間的には最長で24時間は消滅せずに残っていることがある。
飛行機雲は寒冷化と温暖化の両方の影響を及ぼすので、科学者らは長年、飛行機雲の気候影響について議論してきた。
飛行機雲は太陽光を宇宙へはね返して地球を冷やすが、赤外線エネルギーを大気中に捕らえて温暖化を推進する。研究者らは温暖化の影響の方が寒冷化の影響より顕著であると考えている。
Reading大学の科学者らは今回、長距離航空機と短距離航空機の飛行経路を変えることでいかにこの影響が減らせるかを理解しようとした。
これまでの調査では飛行機雲の発生を抑えるために航空機は低高度で飛行することが可能だと示されたが、これではかなり多くの燃料を燃焼しCO2の排出を増やすことになる。
Reading大学の調査では、最適の飛行高度で経路変更した場合、余計に燃料を燃焼するという不利益を飛行機雲の発生を抑えるという利益が上回るかどうか確かめようとした。
「これら飛行機雲の発生を避けるために何か途方もない距離を移動しなければならないように思えるだろう。」と筆頭著者であるEmma Irvine博士はBBC Newsに語った。
「けれど、地球は曲面体なので実際にはほんの少々余計に飛行距離を伸ばすことで実際にはずいぶん大きな飛行機雲の発生を抑えられるのだ。」
柔軟な飛行
研究者らは短距離航空機の方が燃料効率がいいので、飛行機雲の長さを10倍にしても温暖化への影響を全体では減らせることを見い出した。
そこで英国からスペインへのフライトが20kmの長さの飛行機雲を発生させると予測されても、その発生を避けるために200km未満の距離を余分に飛行する限り、温暖化への影響は全体で減るだろう。
長距離を飛行する大型の航空機なら、これで飛行機雲の長さを3倍まで減らす。
しかし、海の上と住民のいない地域上空を飛ぶ長距離ルートでは、飛行経路の変更を最小限にするためより融通が利かせられる。
ロンドンとニューヨーク間のフライトでは22km余分に飛行するだけで大型の飛行機雲の発生は避けられることを研究者らは見い出した。
「知るべき重要事項は大気の温度と湿度の状態であり、これらは現在予測可能なので、必要な情報はすでに揃っている。」とIrvine博士は言った。
「予測が目的達成に十分な精度かどうかは別の問題だ。」
航空機の総飛行距離の平均7%が、長時間消えない飛行機雲を発生させる性質の大気である。しかし現在、地球温暖化に航空が及ぼす影響を計算する場合、飛行機雲は計算対象に含まれていない。
欧州連合は欧州連合域内排出量取引制度に航空を含めようと試みてある程度は成功した。
EU発或いはEU着の長距離便は2017年から排出炭素規制制度の対象になる予定である。しかしReading大学の研究チームは、これらの努力ではまだ、航空による地球温暖化の大きな原因を規制し損ねるだろうと言っている。
「世界中で各国政府が現在採用している軽減目標ではまだ、CO2以外の飛行機雲のような航空による重要な気候影響を取り扱っていないが、これらは航空のCO2排出による気候影響と同じくらい大きな、あるいはより大きな影響を及ぼす可能性がある。」とIrvine博士は語った。
「航空の全体的影響と提案された軽減対策の確実性を科学者が評価することは政策決定に情報提供するために重要であると我々は信じている。我々の作業はこの道筋に沿った一歩である。」
この研究はEnvironmental Research Letters誌上で公表された。
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海外情報紹介 フライト距離を延ばすと飛行機雲の気候影響を抑えられる可能性
- 2014年6月25日(水) 09:00 JST