海外情報紹介 4大陸の102空港が参加している空港カーボン認証制度は地理的範囲拡大の模様

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1939

2014年6月25日水曜日−欧州空港の業界団体であるACI(国際空港評議会)欧州が発足させてから5年、空港カーボン認証(ACA)制度の下で証明を得た空港は今や、4大陸に渡り100空港を超える。欧州委員会とユーロコントロール及び、国連機関であるICAOとUNEPから承認されたこの制度は、空港によるCO2排出の管理と低減の努力を独自に評価し、承認する。4段階の異なるレベル(*注1)で空港を認証し、欧州の16空港が今や最も高いカーボンニュートラルレベルを達成している。ACI欧州によれば、現在認証されている空港すべてを合わせると世界の航空旅客交通の23.6パーセントを扱っており、そのうち認証された欧州の85空港は欧州大陸の旅客交通の62.8パーセントを扱っている。
ACI欧州によれば、102空港はこの1年で(2013〜2014)、直接管理している排出物(温室効果ガスプロトコルの範囲1および2の排出物(*注2))によるCO2を総計で133,599トン減らした。認証された欧州の85空港では旅客1人あたりのカーボンフットプリント(*注3)の平均はCO2が2.01kgで、前年は75空港でCO2が2.75kgだった。

相対的に、旅客1人あたりの範囲1および2の排出物低減はこの制度で証明を得た全空港のCO2総計が0.26kgで、レベル2とそれ以上の証明を持つ空港のCO2総計が0.23kgであった。範囲3の排出物すなわち、空港が直接運営していない活動によるものだが、空港が指導する或いは影響力を及ぼす可能性がある排出物は、レベル3とレベル3+の証明を持つ空港で旅客1人あたりCO2低減が0.96kg達成されている。

範囲1と2の排出物については昨年、空港カーボン認証制度に参加する全欧州空港において平均5.98%のCO2削減を達成した。

空港カーボン認証制度のレベル3+である、カーボンニュートラル達成には、空港が削減できない範囲1と2の排出物について、国際的に認められたカーボンオフセットを空港は購入する必要がある。このレベルで昨年正式認可を受けた16空港は、その前年の相殺は66,724トンだったが、昨年は空港間で181,496トンのCO2を相殺した。

「空港カーボン認証制度でのレベルが上がるにつれ、空港はより効率的になり、排出物が減り、その上これを共同で行うために協力企業を引き込むことになる。ターミナルビルの床面積や旅客数が増えたからといって、排出されるCO2の量が増えることを意味するものではない。」とACI欧州の事務局長であるOlivier Jankovec氏はフランクフルトでのACI欧州の最近の年次大会で語った。

「ここまで5年かかったが、実績が上がっている。我々はこれからも空港産業のカーボンフットプリント低減のための新しい効率性と革新性を追求し、排出炭素削減計画について地理的範囲の拡大もまた行っていくだろう。」

4つの認証評価レベルはマッピング(整理)、削減、最適化とニュートラル化である。最近この計画に参加したのはオーストラリアのシドニー空港で、これまでに第1段階のマッピングレベルで認証を受けたが、この段階においては、空港の管理が及ぶ範囲の排出源を空港は特定し、年間の炭素排出量を計算し、カーボンフットプリント報告にまとめ、報告はその後、独立した第三者機関によって検証されねばならない。

「我々はシドニー空港のカーボンフットプリントをマッピング(整理)し、炭素排出量を削減する作業にとりかかっている。」とシドニー空港のCEOであるKerrie Mather氏は報告した。「我々は5カ年の環境戦略及び、新規のエネルギー節減、温室効果ガス排出削減、エネルギー効率化の機会、これらを特定する省エネルギー計画を作った。」

「我々の最近の環境的取り組みとしては、エネルギー効率のよい新型照明器具の様々な場所への設置、再生利用プラントを使った水資源の節約、緑化による保有車両の炭素排出の相殺、排出物の少ない次世代航空機の導入促進のための投資がある。我々はまた、地球規模でつながった空の交通を維持しながら、環境影響を減らすために航空関連産業と幅広く共同作業を行う。」

「これらの対策を行うのは環境問題が改善されるからだけでなく、空港の革新を進め、効率化を加速する。」

最近認証を受けた他の空港にはコペンハーゲン空港(レベル3の最適化)、ベルゲン空港(レベル2の削減)、ロンドン・スタンステッド空港(レベル2の削減)がある。

「カーボン認証は我々の環境対策や気候変動対策が誤った方向に進んでいない明確な証拠であり、CO2排出削減をするにあたってはオープンで透明性のあるやり方を目指しているという明確な証拠である。」とコペンハーゲン空港のCEOであるThomas Woldbye氏は語った。

「2020年までに旅客1人あたりのCO2排出量を1.4kgから1.0kgに削減できるような目標を我々は決めた。加えて、空港で営業する他の企業に環境意識を持たせる作業も我々は行っている。一例として、毎日数百人が働いている空港のエプロン(駐機場)に、環境に優しい装置を計画的に導入するという我々の方針がある。実際、空港の労働環境改善はすべての人々にとって共通の目標になった。」

OECD(経済協力開発機構)内にある政府間機関である国際交通大臣会議(ITF)の5月のライプチヒにおける、54カ国の政府大臣が出席した年次サミットにて、CO2認証評価計画は表彰された。空港カーボン認証制度は、ITFの運輸業績達成賞の2つの次点の内の1つに名が挙げられた。

「空港カーボン認証制度は、優れた実践の広く進歩的な普及を明快にやってみせた健全な制度だと審査員は称賛し、全世界の空港の排出炭素削減を可能にしたこの取り組みの成功に我々は感謝したい。」とITFの事務局長である José Viegas氏は述べた。

空港カーボン認証制度の公表されたばかりの年次報告書では、ラテンアメリカ地域までこのプログラムを拡大し、ACI参加空港すべての地域への普及を促進する計画を明らかにしている。もう一つの目標は、航空が気候変動に及ぼす影響に対応するため国家的行動計画を作成中のICAO加盟国が、ACAを各国の提案方策に含めるよう働きかけることである。

リンク:
空港カーボン認証制度
空港カーボン認証制度年次報告書2013-14(2.2mb PDF)
ACI欧州
国際交通大臣会議


*注1:ACAの認証レベル(4段階):
     レベル1 :マッピング
     レベル2 :削減
     レベル3 :最適化
     レベル3+:中立
(詳しくは、当センター発行の「航空環境研究」No.15(2011)、p.45-51を参照下さい。)

*注2:GHGプロトコル:国際的に認められるGHG(温室効果ガス)排出量の算出と報告の基準を開発し、利用すること。
    範囲1:空港事業者の直接的GHG排出
    範囲2:空港事業者が購入する電力、熱、蒸気導入等の排出
    範囲3:その他の間接的GHGの排出

*注3:カーボンフットプリント:二酸化炭素(CO2)の排出量を表す。商品、サービスだけでなく、個人、組織などを対象にするなど、様々な算出がされている。