海外情報紹介 地球温暖化の減速がもう10年続く可能性

原記事:
http://www.bbc.com/news/science-environment-28870988

2014年8月21日最終更新18:45
BBCニュースの環境担当記者Matt McGrath氏による記事

新しい研究によれば、世界の温度上昇の休止はもう10年続く可能性がある。

大気中のCO2濃度は変わらず上昇を続けているにもかかわらず、1999年から気温上昇がいわゆる小休止している理由を科学者らは何とかして説明しようとしてきた。

最新の理論では、大西洋の30年周期で現れる自然現象が減速の背後にあるとのことだ。

研究者の意見によると、この速度の遅い流れがもう10年間、熱を深海へそらし続ける可能性がある。

しかし、この周期が温暖化に切り替わった時、世界の温度は急速に上昇しかねないと彼等は警告している。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、1998年と2012年の間は世界の平均気温は10年毎に約0.05℃上昇してきた。

これは1951年と2012年の間の10年平均値の0.12と比較される。

二酸化炭素排出量が記録的に高い一方でのこの温度上昇における小休止の理由付けとして、1ダースを超える理論が提案されてきた。

これらの考えの中には太陽の熱を部分的に宇宙へ反射してきたすす粒子のような大気汚染物質の影響を扱う理論もある。

太陽活動の変化もだが、2000年から活発になった火山活動のせいとする理論もあった。

最新の視点では、海が熱消失の場所であると考えている。

太平洋での冷たい水の周期的な湧昇が気温上昇を抑えていると、ある研究が去年示唆した。

しかしサイエンス誌で公表された今回の最新研究では、調査の焦点を太平洋から大西洋と南洋に移した。

米国のワシントン大学のKa-Kit Tung教授が率いるチームは、30年周期で大量の熱を深海へと引き込むことで海流が世界を交互に暖めたり冷やしたりするという証拠が見つかったと言っている。

彼等は2,000メートルの深海までサンプル採取を行う、アルゴフロートという名称の装置ネットワークの観測結果を使用した。

氷河期の脅威
研究者によれば1945年と1975年の間に別の休止があり、これも海流が熱を深海へ引き込んだせいだが、このことが新しい氷河期の恐れをもたらした。

1976年からは周期が反転して世界の温暖化に貢献し、より多くの熱が地球の表面にとどまった。

しかし、2000年以来、熱は深海の底深くに引き込まれ、世界全体の温度は1998年に記録された温度を超えていない。

「そのフロートはとてもよく状況を明らかにしてくれる。」とTung教授は言った。

「現時点で意見の一致することは、大西洋と南洋の700メートルより深い深海では熱を蓄積していて、太平洋ではそうではないということだと私は思う。」

この新しい解釈の重要な要素は、海水の塩分含有量である。熱帯から流れ込む大西洋の海流の海水は蒸発作用のために塩分含有量が多い。この海水が沈み込む速度は速く、熱も一緒に深海へ運んでゆく。

それでも最終的には、塩分の多い海水は北極圏の海水に十分な氷を溶かし込んで塩分濃度を下げ、海流の速度が減速化して熱を地球の表面にとどまらせる。

「2006年以前は塩分濃度が上昇し、このことは当時の海流の速度増加を意味した。」とTung教授は語った。

「2006年以降は、この塩分濃度が低くなったが、それでも長期間の平均をまだ上回っている。現在海流の速度はゆっくりと減速している。」

「ひとたび長期平均を下回れば、今度は次の急速な温暖化期間がやってくる。」

アルゴフロートからのデータと同様に、Tung教授は過去350年分のデータがある、英国温度センターの記録も調べた。このデータが定期的な70年周期の温暖化と寒冷化を裏付けると彼は信じている。

この歴史的パターンが現在の小休止期間を延長する可能性があると彼は述べた。

「恐らくもう10年現在の状況が続くか、地球温暖化自体はより多くの氷を溶かしていて氷が北大西洋にあふれる可能性があるので、期間的には短くなるかもしれないが、歴史的には我々は周期の真ん中にいる。」

上昇する温暖化の階段
小休止への大西洋の関与を示唆する証拠が増えているうち、Tung氏の分析はその一つであるとこの分野の他の幾人かの研究者は認識している。

ETH Zurich大学のReto Knutti教授は最近、この休止に関するすべての理論の総説を出版した。

「これらの研究は補完的なものだと私は考えており、それらは双方が海洋と大気の元来の変動性が、長期の人為改変の傾向を変化させるのに重要であると強調している。」

「変動性のこれらの状態をよく理解することが、特に近い将来の予測、そして温室効果ガスがもたらした変化よりも変動性が優位に立つような地域における将来予測のため、そして過去の変化(休止期間中の予測モデルと観察の間の差異を含めて)の理解のために重要である。」

他の科学者らは、大西洋仮説は興味深いがもっと長期間の観察が必要だと言っている。

「我々には本当にあまり多くのデータが無い。」と英国のReading大学のJonathan Robson博士が語った。

「そのため、海洋にこの60年間の振幅が存在するなら、我々はまだそのすべてを観察してはいないし、根本的に我々が観察したのはその影響である。我々は何が起こっているのかを知るために15〜20年間待たねばならないかもしれない。」

休止の原因や期間がどうであれ、大西洋の海流が再び切り替わった時に明らかになる、世界の温度に起きる「昇りの階段」の上に我々はいるとTung教授は信じている。

「最後に我々は階段の昇り部分にいて、そこでの温暖化の速度は20世紀のこれまでの30年と同程度にとても速いだろうし、そもそもの出発点が高い水準からだ。気温とその影響はさらに厳しいものになるだろう。」