海外情報紹介 APU(補助動力装置)を燃料電池で置き換える技術の実現可能性調査でエアバスが南アフリカのプロジェクトに参加

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1977

2014年9月3日水曜日−化石燃料をエネルギー源として駆動する代わりに、燃料電池技術を代替エネルギー源として民間旅客機で使うための3年間の研究プロジェクトが、南アフリカで進行中である。エアバスと南アフリカ国立航空宇宙センターが共同出資し、ウェスタンケープ大学にあるHydrogen South Africa (HySA)の研究施設内のシステム共同センターで研究が行われることになっている。航空機が地上にある時に機内電力と暖房を供給する小型ガスタービンエンジンである補助動力装置(APU)の将来の代替品として、エアバス社は排ガスの出ない水素燃料電池を考えていると述べている。燃料電池を使用して個々の非常用電源装置に電力供給することを含め、エアバス社は試験飛行をすでに実施済みで、現在、多機能燃料電池による電力系統の完全な置き換えを可能にする技術の開発を行っているところである。
航空旅行の需要は15年毎に倍増し、2032年までに新型の民間航空機が約30,000機必要になるだろうとエアバス社は述べている。1950年代以降では、ほぼすべての旅客機が胴体後部のテイル・コーン部内にAPUを備え付けた設計で建造されている。

燃料電池はまた、航空機の総重量の軽量化及び、飛行中の燃料燃焼の削減と炭素排出の削減に貢献する。副産物として、水素燃料電池は航空機独自の水供給を可能にし、航空機の燃料タンクの可燃性レベルを引き下げるために使用する不活性ガスを生成することが可能であることから安全性向上にも貢献し、貨物室の火災を鎮火するのに役立つ。重量のあるバッテリー及び従来型燃料タンクの不活化システムとの置き換えが可能かもしれない。

このプロジェクトは大学院レベルで実施され、燃料電池の性能に影響を及ぼす要因を特定し、経年劣化やモニタリング及び航空機に装備するための実用的な検討が行われる。

HySAは2007年に開始された15年間のプログラムで、水素と燃料電池技術の分野における南アフリカの研究能力向上を目的としている。HySA能力センターは3カ所あり、南アフリカの一流大学と学術審議会が運営している。

研究を行うかたわらで、HySAは小型の地上車用水素燃料電池も製造し、ほとんどの重要部品の大量生産が可能である。エアバス社の広報担当の説明によれば、HySAの強みは地元で採鉱される必要材料、特に燃料電池に触媒能をもたらす白金族金属と鉱物砂の利用が比較的容易であることである。

「陸上車用燃料電池技術が急速に成熟したとはいえ、エアバス社と国立航空宇宙センターとの新しい研究が目指すものは、商用ジェット旅客機の運航による苛酷で急激に変化する気候状況や環境条件にありながら、いかにして水素燃料電池に航空機の耐用年数を超える性能を持たせるかの理解を得ることである。」とHySAシステムの指導者であるBruno Pollet教授は語った。

政府、企業、大学や研究機関と共に、地域でも国際的にも研究及び技術開発を行うことで南アフリカの航空宇宙部門での競争力を高めるため、Witwaterstrand大学が主体となって国立航空宇宙センターが2006年に設立された。

責任者のPhilip Haupt氏は、水素燃料電池技術は航空宇宙部門のこれまでの開発の流れを変える「切り札」になるはずだと述べた。「このプロジェクトで南アフリカの航空宇宙分野の専門技術を世界に知らしめることになる。」と彼は述べた。「さらに、水素燃料電池技術の理解と発展を進めるプロジェクトを率いることで、南アフリカは自国の先進的製造業部門を主要産業に位置づけ、需要が出てきた時には有利な位置にいることができる。」

エアバス社にとって、このプロジェクトは2006年に開始された南アフリカ研究技術構想の最新形であり、南アフリカの大学や研究機関のいくつかとの共同作業が含まれている。

リンク:

エアバス社−燃料電池
HySA Systems
国立航空宇宙センター

※なお、原記事には機内の個々の非常時用システムに電力供給するためにエアバス社が初期の飛行試験で使用した燃料電池スタックの写真や、旅客機のテイルコーンにある従来のAPUのタービンの代わりに水素燃料電池を設置した図が載っています。