海外情報紹介 中国の1人あたりの炭素排出量はEUのそれを上回る

原記事:
http://www.bbc.com/news/science-environment-29239194

2014年9月21日 最終更新17:42
BBCニュースの環境担当記者Matt McGrath氏による記事、ニューヨークにて

炭素排出に関する新しいデータが、中国の人口1人当たりの排出量がEUを初めて上回ったことを示している。

研究者らによれば、インドもまた2019年には欧州のCO2生産量を超える見込みである。

科学者らによると、世界の総量は速い速度で増え続けており、30年以内に気候変動の危険な限界を超える可能性がある。

世界はすでに温暖化ガス排出目標の3分の2まで排出してしまったため、目標の2゜Cを超えるだろうと研究者らは計算している。
グローバル・カーボン・プロジェクトには世界の研究機関から研究者が参加し、年間排出量規模についての具体的な詳細を提供している。

最新データは、2013年に排出された人為的排出源による炭素量が360億トンを記録したことを示している。

世界の総排出量における上位10カ国の2013年の排出割合

中国       29%

米国       15%

欧州連合     10%

インド      7.1%

ロシア連邦    5.3%

日本       3.7%
 
ドイツ      2.2%

韓国       1.8%

イラン      1.8%

サウジアラビア  1.5%


最も排出量が多かったのは中国で、全体の29%を占め、次に米国の15%、欧州連合の10%、インドの7.1%と続く。

しかし、興味深い展開として、中国の人口1人当たりの排出量が初めて欧州連合のそれを超えた。

世界全体の1人当たりの二酸化炭素排出量平均が5トンなのに対し、欧州連合が6.8トンであるのに中国は今や1人当たり7.2トンの生産量である。それでも米国は1人当たり16.5トンなのでまだはるかに多い。

「中国の1人当たりの排出量が今やEUを超えたことがわかる。」とこの調査に関わったノルウェーの国際気候環境研究センターのRobbie Andrew博士は語った。

「いまだに米国やオーストラリアには遠く及ばないが、中国がEUを抜いたという事実は多くの人々を大いに驚かす。」

将来が過去を脅かす
中国がしばしば自国の一人当たりの排出量が比較的少ないことを理由に、他の発展途上国と中国は同じ考えであり、炭素の使用を制限するのは不当であると主張してきた国際気候交渉の場において、この展開は興味深い光が当てられる。

過去20年間においては中国の産業化の速度が速かったために、主に石炭火力発電所がかなりの数建設されることになった。

この積み重ねにより中国が将来関与する排出量は、現在までに排出した総排出量を上回ることになる。

カーボン・プロジェクトにも係わりのある、East Anglia大学のCorinne Le Quere教授は、中国の排出物のかなりの部分は欧州や米国の消費者の需要に後押しされていると述べた。

「中国における排出物の約20%が洋服や家具生産のためで、太陽電池パネルも欧州や米国に輸出されてしまっている。」

「それを考えに入れて欧州の排出量を見直すと、これら欧州外で製造している商品を計算に入れると30%は排出量が上乗せになるだろう。」

他に排出量の大幅な増大が見られるのはインドである。インドでは2013年に炭素排出量が5.1%増大し、2019年にはEUを上回る見込みである。

「インドには大きな問題がある。現在の政府が排出物問題を次々に解決できれば大きな成果が上がるだろう。」とAndrew博士は語った。

「あの国には取り組むべき問題が山積みなので、排出を減らせという要求は大きな負担になる。」

2014年は、排出量が1990年のレベルを65%上回る400億トンに届く勢いで、炭素排出量は再び記録を更新する量になりそうである。

最近の排出量上昇は、炭素指標の増加が特に発展途上世界において予測より少なかったのとを合わせると、世界的に経済が回復しているためであると、関連する研究者らは言っている。

将来の炭素総排出量が3兆2000億トン以内に納まるならば、世界の温暖化を目標2゜C以内に抑えられる見込みは十分あると科学者らは算出してきた。

世界に残された排出量は約1兆2000億トンであるが、最近のデータによれば、現状では目標2゜Cを下回る可能性は低くなりつつある。

「世界の排出量は予想を超えた速度で増大し続けている。」と Le Quere博士は語った。

「およそ30年後には、残りの排出量に急速に近づき、2゜C以内にとどまる可能性は66%にまで減ることになるだろう。」

石油、ガス、石炭の現在の埋蔵量は目標2゜Cを超えてしまう量であると研究者らは述べている。Le Quere教授はこの内容が政治家らにはまだ理解されていないと述べている。

「これらの燃料すべてを燃やし尽くすことは出来ないということをまだ我々は受け入れていないし、必要な行動規模がまだ十分に理解されてはいない。」

各国及び政府の首脳125名が気候変動について討論するため、ニューヨークの国連本部で会合を持つことになっており、新しい研究が公表される。

次週国連に来てこの問題に取り組むという約束を交わすよう、国連の事務総長は世界のリーダーらに依頼した。

この会合によって、2015年終わりにパリで合意を得る予定の新しい世界協定に至るプロセスが開始されることになる。科学者によれば、もし世界が目標2゜Cを破るのを防ぐつもりなら、政治家にはその目標にたどりつくまでにまだ長い道のりがある。

「中国とインドは他の国家と全く同じことをしている。」とLe Quere教授は語った。

「豊かな国は他国が発展するためにいろいろと異なる方法を用いることができるように、エネルギーの使い方においてリーダーシップを示す必要があると私は心から思う。現在のところそれを率先して行う国がないように見える。」

世界のカーボンプロジェクトをテーマにする調査の詳細は Nature Climate Change誌や Nature Geoscience誌で公表されている。