原記事:
http://www.bbc.com/news/uk-19570653
2014年9月2日 最終更新15:08
ロンドン市長であるBoris Johnson氏が提唱するテームズ河口空港案は検討候補から外され、英国の空港容量拡大のための選択肢は3つとなった。最終的に残るのはどの選択肢だろうか。
航空旅行の需要が急激に伸びているため、政治家、財界首脳や航空の専門家らの中には、英国の空港容量の拡張の緊急な必要性を唱える者がいる。
英国の空港委員会は2030年までにサウス・イースト・イングランドでもう1本滑走路が必要だと述べている。
空港委員会は以下の3つの選択肢を候補に挙げた。:
ヒースロー空港の第3滑走路増設
ヒースロー空港の既存滑走路の延長
ガトウィック空港の第2滑走路増設
Boris Johnson市長はテームズ河口に空港島を建設する案を提唱していた。この空港島は別名Boris島と呼ばれるが、9月2日に空港委員会はこの案を検討候補に残さないと宣言し、巨額の建設費用と環境問題をその理由に挙げた。
それにもかかわらずロンドン市長は、テームズ河口空港案の実現がなくなったわけではなく、一時的に決定が先延ばしになっただけだと主張している。
今秋の公的諮問実施の前に、空港委員会は候補に挙げた選択肢の詳細な調査を行っているところである。空港委員会の最終報告書が出るのは2015年の予定である。
各選択肢について知っておくべきことはどのようなことだろうか。
ヒースロー空港
第1の選択肢には、現在の2本の滑走路の北西に3,500mの滑走路を増設することが含まれる。
第2の選択肢は、既存の北滑走路を少なくとも西側に6,000m延長し、2本の独立した滑走路としての運用を可能にするというものである。
ヒースロー空港は世界で最も繁忙な空港のうちの一つで、2012年は7,000万人の旅客を扱った。乗り継ぎ客が3分の1を超え、主要なハブ空港となっている。
しかしヒースローは年間480,000フライトという制限付きの現在の運航容量の98%で運用されており、他の主要ロンドン空港や競争相手の欧州のハブ空港と比べて容量に大幅に余裕がない。
通常の状況ではヒースローのフライトは45秒に1回の離陸或いは着陸で、気象条件が悪いと航空機が通過する速度が遅くなる。
これが着陸回数を減らし遅延を生む。そしてヒースローの滑走路は最大限で利用されているので遅延便を組み込む予備枠がない。容量が無いためにキャンセル便を生むことになる。
ヒースローの提案ではどちらかの選択肢によって2025年~2029年までに容量を増やすという。
賛成意見:ヒースロー空港拡張案は、アムステルダム・スキポール空港やパリ・シャルルドゴール空港のような欧州の競合空港に対する英国の競争力を持ち続けるための、短期的には最良の選択肢に思える。ヒースロー空港の拡張は、どの競合ハブ空港の選択肢よりも「迅速にかつ安価に」実現するだろうとヒースロー空港は主張している。ヒースロー空港は大きな雇用主となっており、支持者らは周辺地域の事業への波及効果を問題にする。
反対意見:環境影響問題がある。Airport Watch運動のSusan Pearson女史は、ヒースロー空港が英国で最大のCO2排出者になるだろう、飛行経路下に居住する725,000人の住民の騒音被害がさらに悪化し、そのうえ拡張工事で家を失うだろうと述べた。
もう一つの中期的選択肢として、ヒースローをいわゆる「混合モード」の運用に切り替える選択肢があるが、これは2本の滑走路ともに着陸あるいは出発に使用することになる。
しかし、この案の主要問題は騒音のレベルであり、空港委員会自体はこれまでこの選択肢を否定してきた。ヒースロー空港の所有者であるヒースロー空港会社もまたこの案を否定している。
ガトウィック空港
この提案には滑走路を1本増設することが含まれ、滑走路の長さは短くても3,000mで、既存の滑走路から十分距離を離して建設し、全く独立した運用が可能である。
ガトウィック空港は滑走路が1本の空港の中では世界で最も繁忙な空港だが、約5%の比較的少ない旅客が乗り継ぎのためにガトウィック空港を利用する。
ガトウィックを選ぶ選択肢は「健全かつ説得力がある」と述べている。拡張には50億ポンドから90億ポンドの費用がかかるが、民間投資でまかなわれる。
空港の責任者らは、新滑走路は2025年までに供用開始可能で、ヒースローの第3滑走路より環境影響が少ないだろうと述べている。
第2滑走路の使い方次第では、年間約3,420万人の旅客数が6,700万人から8,700万人まで拡大する。
ロンドンがそれぞれ2本の滑走路を持つ3つの主要空港に支えられるという、いわゆる「集合型」をガトウィックは支持している。
賛成意見:ガトウィック空港に第2滑走路が増設された場合、ロンドン中心部に近いヒースロー空港に第3滑走路を増設した場合に、騒音と環境汚染の影響を受ける住民の数よりも影響を受ける住民の数は少ないであろう。ガトウィックにはロンドンとの良い交通アクセスがすでに整備されている。
反対意見:既存の合意により、2019年まではガトウィック空港に滑走路を新設できない。第2滑走路があるべき場所に北ターミナルビルが建っている。ガトウィック空港とヒースロー空港の間を高速鉄道で結ぶというのは長い時間と費用のかさむプロジェクトになるだろう。
検討候補に採用されなかった選択肢:
テームズ河口空港
ロンドン市長のBoris Johnson氏が長く提唱してきた、4本の滑走路を持つ新ハブ空港建設案はヒースロー空港の代わりになるものであるが、空港委員会はこの案を却下した。
Isle of Grainに新空港を建設する案の一つは、建築家のSir Norman Fosterの事務所が設計したものだが、この案にはアクセスのための高速鉄道とテームズ川の横断道路と障壁の建設が含まれる。費用は500億ポンドになると見積もられている。
しかし、空港委員会の委員長であるSir Howard Daviesは、テームズ河口に空港を建設し運用することには「大きな懸念」があると述べている。
「大規模な経済混乱を招きかねず、実現不可能かまたは実現には膨大な時間がかかると予想される環境上のハードルがある。」Sir Howardは空港委員会の報告でそのように述べている。
しかしJohnson氏は、ガトウィックは長期の解決策にはならず、ヒースローを拡張すれば、「大きいレベルの騒音、破滅や環境汚染」を引き起こすことになるが、ロンドンの東に新空港を建設すれば、「英国の競争力を保つために必要な、雇用の創出や経済成長を生み出すことだろう。」
賛成意見:民間投資が得られるだろうし、欧州のライバル空港と張り合うに十分な規模の空港ハブになりそうだ。ロンドンの東方に数万の新規雇用を創出する。ロンドン住民に影響する騒音問題の解決になる。
反対意見:ヒースロー空港周辺の経済を荒廃させる可能性があり、この空港の使用には深刻なバードストライクの危険があると評論家は意見する。航空交通管制官は空港予定地は航空交通に最悪の場所にあると言う。環境運動家らは希少な野生動物への脅威となる恐れがあると言う。完成までにかかる費用と時間も問題だと言われている。
空港委員会は昨年、スタンステッド空港またはバーミンガム空港拡張は候補案に挙げないことを決めたが、2050年までの新規第2滑走路の「有望な選択肢」として検討する可能性はあり得ると述べた。
ロンドンにおける英国空軍の本部基地であるRAF Northolt空港、これはヒースローから約6マイルの場所にあり短距離の民間フライトも拒否されているが、これの民間への開放について空港委員会は、「ヒースローの容量をうまく管理するための現実的選択肢ではなかった。」と言っている。
何もしない
世界のライバル空港と競合するために英国は航空ハブの容量を増やす必要があると運輸大臣であるPatrick McLoughlin氏は述べている。他の政治家や財界首脳、航空専門家の中にはこの意見に賛成する者がいる。
しかし、英国の空港容量拡大が必要であるという確かな証拠を示した主張はこれまでに出ていないと言う者もいる。
地球の友の運動家であるJenny Bates女史は以下のように述べている。「英国の空港をこれ以上拡大するための総合的な投資対効果検討書には説得力がない。というのも、我が国の気候変動対策のための目標と矛盾するからである。」
環境に悪影響を与えるような空港拡張に反対するグループであるAirport Watchは、既存の容量をうまく活用するための努力をもっとすべきであると述べている。
そして航空環境連合は、英国が空港容量の危機に直面しているという説は神話にすぎないと述べている