原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2111
2015年7月24日金曜日−高高度の航空機が温暖化に及ぼす影響についてはいまだにわからない部分があるが、民間航空の排出物と気候変動との関連性についての広範な調査が行われた。しかし、惑星(地球)の温度が上昇すると飛行機旅行にどのような影響を及ぼすだろうか。マサチューセッツにあるウッズ・ホール海洋研究所(WHOI)とウィスコンシン・マディスン大学の研究者らは、気候と航空路線の飛行時間が長くなることとの間の関連性(飛行時間が長くなれば燃料消費と排出物が著しく増大する)を見い出したとしている。Nature Climate Change誌で公表されたばかりの調査を率いたWHOIのクリス・カルナウスカス氏が述べているのは、大気中に次々にCO2が追加流入される結果、大気循環中に新たに発生した変化がフィードバックされ増幅される可能性があるということである。この調査では過去20年間のホノルルと米国西海岸の3空港間のフライトをフライト毎に調査し、飛行時間と巡航高度での日々の風速データを比較した。
海洋学のMIT-WHOIの共同プログラムの博士課程の学生であり、続いて今回の調査の共著者となったハンナ・バークレー女史が、ホノルルから米国東海岸まで乗った便が予定よりかなり早めに目的地に到着した後でこの調査が始まった。WHOIの地質学・地球物理学部門のassociate scientistであるカルナウスカス氏と一緒に、彼らはその日のジェット気流が特別に速かったことを発見した。
米国運輸省が保持していたデータベースから、彼らはエアライン4社に関する過去20年間のホノルルとロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル間のフライト毎の出発と到着のデータをダウンロードした。上層で風は西から東へ吹くので、同じ区間を往復する場合、東回りの区間の方が西回りの区間よりも速い。彼らが見い出したのはどのエアラインであれ、飛行時間の差は同じように見えたということであった。
「これらのフライトで飛行時間を変える原因が何であれ、全く同じ原因であって、エアラインの意志決定プロセスの部分ではない。」とカルナウスカス氏は語り、飛行時間を決めるのは気候の変動性であり、日々の天候ではないと結論づけている
エアラインの飛行時間の差のプロットを気候上の時間尺度における風の変化のグラフと重ね合わせたときに、冬はジェット気流が強く、夏は弱いという季節的な差を取り除いた後でさえ、実質的には同一であることをカルナウスカス氏は見い出した。結果はまた、赤道太平洋の海水温度が上下して、大気の循環パターンの変化をうながすような両半球の高緯度へ向けての大気波動を生み出す原因となるエルニーニョ現象の影響を示した。
エルニーニョを幅広く研究したカルナウスカス氏には、熱帯太平洋の状態を観察しただけでエアラインの飛行時間の差がどのようなものだったかを予測できるだろうということがわかった。「我々が話しているのは赤道で起きている異常変動についてで、この異常変動は多分世界中のフライトに影響を及ぼすような、空間的に広範囲に大気へ影響を与えているものである。」と彼は語っている。
この調査の重要な発見は、ある路線の東回りと西回りのフライトの飛行時間の差はたとえ小規模でも双方で相殺することがなかったということである。
「たとえばホノルルとLA間の東回りと西回りのフライトの1組の総飛行時間に加算されるのは卓越風(主風)の速度が10mph上がるごとに2〜3分程度である。」とカルナウスカス氏は語っている。「しかしこの風は実際には40mph程度変動するので、1日あたり各フライトでは各エアラインで、各路線で、加算される2〜3分が倍増してその余分が速やかに積み上がる。」
路線の余分な飛行時間について彼らが学んだことに基づき、気候モデルを使って大気循環の変化を予測する方法や、これらの変化によってエアライン産業が排出するCO2がどれだけ増えるのかある程度推定する方法をその研究者らは調査した。地球規模の気候モデルは世界の航空による排出量の予測値を入れるが、大気循環が変化した場合、彼らが言うにはこれら当初の推定はフィードバックの可能性を見落としているということらしい。
地球規模で単純な外挿から2014年に民間エアラインが運航した1日あたり49,871路線の102,470便に追加の分数を当てはめると、航空機は空中で年間300,000時間余分に時間を費やしていることになる。これは調査によれば、年間で30億ドル(1ガロンあたり3ドルで計算)に相当するジェット燃料約10億ガロンを余分に消費し、100億キログラムのCO2を余分に排出(1ガロンあたり9.6kgのCO2を排出すると計算)することになる。
将来のさらに効率的な燃料コスト計画策定、燃料資源の再配分、顧客のための滞空時間予測の改善、フライトの遅延に関するあらゆる不都合やそれにかかる労働力のよりよい管理など、これらの作業をエアラインが行うにあたり今回の調査は有益であるとカルナウスカス氏は考えている。しかし彼はエアライン産業が日常レベルを超えた飛行時間のパターンには気がついていないことに驚いている。
「エアライン産業は日々の天候パターンを監視しているが、年間かそれ以上の期間にわたって発生する周期に着目しているようには見えない。」と彼は語っている。
彼はこれから研究の範囲を地球規模のエアライン交通全体に広げるつもりであり、それについては「大規模な作業」になるだろうと語っている。そのように大量のデータセットを扱うため、マイクロソフトリサーチとホワイトハウス気候データイニシアチブの間で共同提案された特別な研究助成の下で、ネットワーク化されたスーパーコンピュータの強力な集団のAzure(マイクロソフトが運用)へのアクセスを彼は認められている。
リンク:
Nature Climate Change 誌−「飛行機旅行と気候の間の連結作用」調査
ウッズ・ホール海洋研究所