海外情報紹介 国際航空排出物の二酸化炭素規制に係わる主要素に意見の不一致があるにもかかわらず、ICAOの理事会議長は成功を確信している。

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2233

 2016年5月15日日曜日−3日間の難しい調整が終わり、国際航空の正味炭素排出量に上限を課すための市場に基づく国際対策(GMBM)については、9月下旬から開催される3年に1度開催のICAO総会で合意を得る方向にICAO加盟国は動き出したところである。しかし、ICAOが招集した高官レベル協議(HLM)の期間中、検討された総会決議案の文章で提案された重要部分については意見の相違が残ったままで、これについては総会中に解決されそうもない。しかし、ICAO理事会議長のオルムイワ・ベナード・アリウ博士は、夏の間も引き続きICAOによる一層のイニシアチブと二国間交渉を期待しており、この国連機関が総会決議を承認し、提案した国際カーボンオフセット制度を開始することについて、なおかなり楽観的である。

  ICAO加盟国65カ国からの約200名の担当者に加えて関連産業や市民団体のオブザーバーが参加した結果として、会議期間中に作成された新しい総会決議案文20の段落文すべてが進展した。加盟国は追加の修正と提案を会議終了まで検討し続け、提案に則した最新版の草案は、総会前では最後となる、ICAO理事会が来月開催する次回会合で協議されることになっている。

 「高官協議の間、我々はとても実りある議論を行った。」とアリウ博士は金曜日の会議終了後にGreenAirのインタビューで語った。「国際航空対話を含め、会議前の作業のおかげで、決議案文のあらゆる面を会議に出席したすべての加盟国に伝える準備ができた。」

 「今ではお互いの立場、解釈や意見についてよりよい理解を得ているが、それだけでも大きな進歩である。ひとたびここに達して反対側の意見を理解すれば、妥協点を見つけるのはずっと容易である。我々は現在、3日前よりも良い状況にある。幾つかまだすべきことがあるが、我々には多くの提案があり、私たちがそれに取り組むことができれば、妥協案と一層良い合意をもたらすに違いない。」

 「中でも私が最もありがたく思っているのは、会議に出された文案で各国代表の大多数が多くの部分で容認できると分かったことであった。それでもやはり、ICAOは191加盟国で構成され、理事会には全員が参加することが重要である。それが我々の仕事のやり方である。メンバーが慣れている技術的問題よりもこれはおそらくずっと難しい課題であるが、最終的には実行可能な制度を得るためのコンセンサスが必要である。」

 ICAOが意欲的な目標を果たし、公平な条件を確保するためのroute-based approachを実現できるようにするための国際的制度確立の必要性を含めて、共通の合意と了解がある多くの部分を特定することについてはかなりの進展が見られたとアリウ博士は語った。市場の歪みを最小限に抑えつつ、加盟国の特殊事情やそれぞれの能力を認める必要性を全加盟国が認識したと彼は語った。新制度は管理が単純で費用効果のあるものでなければならず、加えて環境保全を促進し、加盟国の参加に関しては航空に関連した測定法を使わなければならないということの意見の一致があったと彼は述べた。

 他の共通認識部分では、新規参入者の扱い、管理上の過度の負担を避けるための技術的な適用除外、明確な排出単位基準と共に、所定の監視・報告・検証手順が重要であると彼は語った。ICAOの「どの国も例外は作らない」という公約をわきまえつつ、特に発展途上国においては支援と能力開発を確保する必要性についても全体的な合意が得られたとアリウ博士は報告した。

 しかし、決議案文のあらゆる部分に合意が得られたわけではなく、特に彼がこの提案の最重要項目と位置づけた段落7と9の主要条項に関しては合意が得られなかったことを彼は認めた。「他の段階的導入の基準や経済発展の測定基準を使用すること、そして地域ごとの排出量増大と加盟国毎の排出量増大の両方を考慮する方式を用いることに関しては、すべき作業がまだ残っている。」と彼は語った。

 新制度のこれら主要素には合意が得られず、会議の議長であるカナダ運輸省のEllen Burack女史はその2つの段落について、加盟国の異なる立場と会議中に提案された代替案が書かれた文書をHLM期間中に提示した。

 「今回の会議の諸提案はこれから理事会が検討し、次の段階を適切に決める。」とアリウ博士は語った。「総じて見解の一致が得られたすべての部分において、例えば私が述べたような特徴を持つ国際的オフセット制度の必要性についてや、能力開発を含めた支援の条項に関しては、現在の案に変更が加えられることはないであろう。」

 「異論のある残りの課題については、ICAOのイニシアチブと加盟国間での討議を通じて、努力によって加盟国間の立場の隔たりを埋められると私は期待している。」

 現在の提案の下で懸念に取り組んでも、この制度は2020年以降のカーボン・ニュートラルな成長目標達成を確保するには不十分で、第一段階(2021-2025年)では運航される国際便の有償トンキロ(RTKs)のうち最低でも80%をカバーし、これは2026年から適用する第二段階では95%まで上がる見込みであるとアリウ博士は語った。

 「さらに、決議案文で段階的に導入する基準には対象にしていない加盟国の自主的参加を容認する条項が含まれる。そのため、積極的に対策に取り組むための機会として何カ国かがこの条項を利用してくれることを我々は期待している。」

 残りの不足分は他の効率改善から補えると彼は信じている。「MBMは革新的航空機技術や効率のよい運航法そしてサステナブルな代替燃料を含めた方策のうちの一つである。」と彼は語った。「これに基づいて、我々はすでに年間2%の燃料効率改善目標を上回っており、MBMはこの進展を補って残りギャップを埋める意義をもつ。」

可能な限りの幅広い協議が行われることで、この決議文に係わる作業は現在から総会までに継続して行われると期待しているとアリウ博士は語った。会議の間に明らかになった相違にもかかわらず、GMBM制度の作成要素について最終的に合意が得られると彼は楽観的である。

 「私がこの3日間に目にしたのは、他国の懸念と問題をよりよく理解したい、産業やNGOsと共にこれらの懸念に建設的なやり方で取り組みたいという各加盟国共通の願いであった。」と彼は語った。

 パリ協定から航空部門を外すという決定はICAOがこの問題に取り組むからという認識があったからで、パリで国際的な気候協定に達したことでICAOで合意が得られると加盟国は認識していると彼は付け加えた。

 「我々はみな正しい方向へと向かっており、理事会を通じた継続作業と総会の間の継続作業により、決議文の残りの未解決問題は解決され、来たる39回総会において採択される決議はICAOの全191加盟国の合意をみるであろう。」と彼は結論づけた。

リンク:
ICAO高官レベル協議

編集後記:最新版の総会決議案文章と提案の分析は、別の記事で近々報じる予定である。