海外情報紹介 「時計を止める(EU ETSの完全実施が延期されている)」状況下で引き続きSwissの運航便をEU ETS制度の対象に含めるのは合法的なものであるとECJの法務官が語る

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2263

 2016年7月26日火曜日− EUとスイス間で運航されるフライトを引き続き欧州連合域内排出物取引制度(EU ETS)の対象にすることは、欧州裁判所(ECJ)の上級顧問が正当性があり、合法的であるとした。EEA加盟国(EUとアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)とほとんどの第3国との間の運航便については、排出物を測定して報告し、排出枠を放棄するというエアラインの義務を一時停止するという、2013年のEUによる「時計を止める」決定は、スイスにまで一時停止を延長するものではなかった。現在係争中の訴訟において、スイス国際エアライン(SWISS)はEU法のもとでの扱いが不平等であると主張し、2012年のEEA加盟国とスイスの間のフライトによる排出物について排出枠の購入及び放棄の補償を求めている。

 ルフトハンザが所有するエアラインのEU ETSに関する管理は英国が行うため、SWISSは英国政府に対する異議申し立てをロンドンの高等法院に持ち込んだ。この申請は却下されたが、後に英国控訴院は仮命令を出すために訴訟の継続と手続きをEUの最高裁判所へ委任することと決定した。

 2012年の排出量に関し、購入と放棄が必要な排出枠処理のための金額(未公表)をこのエアラインは要求している。EUの取引記録によれば、EEA空港を離着陸するSWISSのフライトがこの年に排出したCO2は123万トンだったとみられる。SWISSは受け取った600,000近い無料排出枠を、629,035の排出枠不足を補うために残している。このエアラインはまた、EUの平等な扱いの原則のもとでは自社が差別されているとして損害賠償を請求している。

 競争に歪みが生じるうえに、EU ETSの完全性を損なうという理由で、スイスを離着陸するフライトとEEAと第3国間のフライトとを同様に扱うべきではなく、 一時的な適用制限の対象にすべきでないことをEUは正当化している。

 法務官のSaugmandsgaard Øe氏は先週述べた見解の中で、平等な扱いの原則は公の国際法で認められているものではなく、対外関係においてはあらゆる面でEUが第3国に平等な扱いを認めることを義務づける一般原則も存在しないと語った。「欧州連合は従って、EEAの加盟国とスイス間のフライトを、EEA加盟国と他の第3国間のフライトと平等に扱う必要はない一方で、他方それとは別に第3国の扱いが異なるのでこれらの航空路線の間の取り扱いが異なる。」と彼は語っている。「いかなる義務のもとでも、欧州連合はこれらの2種類のフライトの運航業者を平等に扱うことはない。」

 ECJは法務官の意見に従う義務はないが、ほとんどの場合は従っている。法廷の判決は法務官の意見が出てから普通は3〜6ヶ月後に出る。

 EUとスイスはそれぞれの排出物取引制度を関連づける交渉を2011年に開始した。それにより両制度の対象事業者が2制度間でお互いに排出量を取引することが可能になり、公平な場が作られる。しかし、2014年の年頭のスイスの国民投票がEUからの移民の割り当てを制限する提案を支持し、それに対してブリュッセル(EU)からの報復処置があって交渉が行き詰まった。両者間でもう一つ議論になったのが、2つの制度間の連携が有効になった時にスイスの航空機運航業者をスイスETSの対象にしたことであった。

 スイス連邦環境局(FOEN)の声明では、2制度の連携についての交渉はこの1月に終了して、航空機運航業者はスイスETSの対象となり、協定は仮調印した。しかし、まだ双方による正式承認がこの協定には必要である。「承認のスケジュールは決まっていない。」と述べていた。

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法務官の意見全文