ヒースロー空港は、空港を利用するエアラインのうち運航便数の多い上位50社について独自の項目で評価し、なるべく騒音影響の少ない機材を騒音影響の少ない運航方式で、騒音影響の少ない時間帯に運用してもらうための動機付けとして2013年以降3ヶ月ごとにFly Quiet表(league table)を公表してきた。2017年1月以降、それに排出ガスの評価項目が加わりFly Quiet and Clean表となった。排出ガスの評価項目として航空機が使用するエンジンの型式(CAEPスコア)と、座席あたりのNOx排出量で表す航空機の効率(NOx/seatスコア)*が加わった。また、夜間の運航便数を減らすための取り組みの一環として、そして地域住民にとって予想外の時間帯に航空機が飛ぶ機会を減らすため、pm11:30~am4:30の間の予定外の運航を評価する項目が加わった。
2017年1月~3月のFly Quiet and Clean表では英国航空の短距離便、エアリンガス、エティハド航空がヒースロー空港を利用するエアラインの中で最も排ガスが少なく、最も騒音が少ないエアラインとなった。
この表は、ヒースロー空港を最も排出物の少ない航空機による運航を実現する世界最先端の空港にするための、ヒースロー2.0という新しい持続可能性戦略の一部であり、この戦略では以下のような方法での排ガス削減を目標にしている。
①到着時:着陸料と航空機のNOx排出量を関連づける。2017年の排出量絡みの着陸料は前年のほぼ2倍に値上げした。**
②.空港で:地上走行時に使用するエンジン数を減らすようエアラインに働きかける。***
③ゲートで:航空機が空調のためにエンジンを稼働せずにすむように温度調整済みの空気を提供する技術に2,000万ポンドを投じ、2016年と比べて今年はこの技術の使用割合の20%増を目指す。****
URL:http://mediacentre.heathrow.com/pressrelease/details/81/Corporate-operational-24/8581
*座席あたりのNOx排出量:騒音評価基準の騒音クオータ/座席と多くの点で似通っている相対的な排出量「効率」を表す基準で、フライト毎の排出証明値と航空機のエンジン数に基づき、到着と出発のNOx排出量の合計を計算し、次に、エアラインごとの全運航便のNOx排出証明値の総計をaggregate seat capacity(総座席数)で割る。(1)
**ヒースロー空港のEmissions Charge:8,618kgを超える固定翼機の着陸に科され、2017年1月以降は、その機種で確認されたNOx排出量1kgあたり15.42ポンドの料金が科される。前年の2016年は1kgあたり8.15ポンドだった。(2)
***航空機の地上走行時の排出物が、空港の地上での航空機排出物の40%以上を占める。ヒースロー空港は関連組織と連携して、航空機は地上ではエンジンを1機のみ使用するよう働きかけるための実務指針を作成した。このやり方はRET(reduced-engine taxiing、地上走行での使用エンジン数削減)と呼ばれ、ヒースロー空港では出発時のRET実施状況の監視を2015年に始めた。より多くのエアラインにRETを実施させるためにはどのような奨励の仕方がよいのかを明らかにすることによって、排出物削減のために、実施可能な航空機の25%にRETを実施させたいとヒースロー空港は考えている。(3,4)
****エンジンはAPU(補助動力装置)をさし、地上における航空機のNOx排出量推定値は離陸時滑走(Take-off roll)の46%に続き、APUは2番目の排出源(19%)である(2010年データ)。 (5)
参考資料
(1) Fly Quiet and Clean番付表:http://www.heathrowflyquietandclean.com/q1-2017/
(2)ヒースロー利用条件について:http://www.heathrow.com/company/partners-and-suppliers/conditions-of-use
(3)Responsible Heathrow performance report (p.8):http://your.heathrow.com/sustainability/downloads/
(4) Reducing the environmental impacts of ground oeprations and departing aircraft (実務指針):
https://www.gov.uk/government/publications/reducing-the-environmental-impacts-of-ground-operations-and-departing-aircraft
(5) Heathrow Air Quality Strategy 2011-2020:http://www.heathrowairwatch.org.uk/reports
関連記事:http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2381
海外情報紹介 ヒースロー空港による排出ガスと夜間騒音成績の評価基準を追加した新しいFly Quiet and Cleanについて
- 2017年8月 9日(水) 09:30 JST