ダウンロード(2019/5/8)
フランクフルト空港を運営するフラポートは、持続可能性に係わる報告書を毎年公表している。5月8日に最新版の2018年版が公表された。この報告書の中から、騒音対策と大気汚染対策に関する部分を要約して以下に紹介する。
フランクフルト空港の騒音管理
フランクフルト空港を運営するフラポートAGは、航空機騒音の影響を受ける地域、州政府の代表、航空関連産業に係わるそれ以外の代表らとの共同作業で2つの委員会を運営している。1つ目は法的に任命された航空機騒音委員会(FLK)で、ヘッセン州の担当部門やドイツ航空管制機関、ドイツ連邦航空管制監督局に助言を行う役割を持つ。2つ目は空港・地域フォーラム(FFR)で、州知事政策室が担当し、地域と航空関連産業との対話をとりもち、特にフランクフルト空港とライン=マイン地方に係わる航空交通の影響に関して議論を促す役割を持つ。
フランクフルト空港の成長による騒音影響を最小に抑えるための努力をフラポートAGは絶えず行っており、空港周辺地域の騒音の常時監視結果や総合的な予測結果を定期的に監督機関やFLKに報告し、一般への公開もウェブサイト上で行っている。航空機騒音関連情報を提供するFRA.Mapシステムでは、補償も含めた騒音対策の対象地域を示している。
騒音対策には発生源におけるものと、受音点におけるものがあるが、前者をGround Based Augmentation System (GBAS)の航行システム確立により運航方式によって行う方策がある。これにより全滑走路で3.2度の傾斜の進入が可能になる。これまで、2本の滑走路を使って交互に進入せざるを得なかった平行滑走路での同時進入に、2018年12月からGBASが使用できるようになったため、滑走路の運用方法を変更し、夜間の静穏時間帯が1時間増えた。
受音点での騒音軽減対策としては室内の騒音レベルを下げるための建物の構造改修がある。ヘッセン州政府が航空機騒音法の厳格な規則に従って決めた騒音保護区域が対象範囲となり、フラポートAGには空港周辺の約86,000世帯に対策を施す義務がある。
2012年2月に公表し、最大で2億6,500万~2億7,000万ユーロの地域基金を確保した「Together for the Region -- Alliance for Noise Abatement 2012」プログラムにより、州政府は空港周辺住民に対して、以前に施した対策に加えてさらに多様な防音対策の実施を約束した。基金を拠出したのは主にヘッセン州とフラポートAGで、個人所有の家屋と、学校や幼稚園や病院などの公共施設に適用できる。空港周辺の17,300世帯ほどが地域基金による追加支援を受ける可能性があるが、基金の申請期限は2017年12月31日だった。それに代わり、地域負担均等化法で、ヘッセン州は追加の2,260万ユーロを2021年までに特に航空機騒音の影響を受ける自治体が防音対策に利用できるようにして、2018年1月1日から実施されている。
また、空港利用料の中に設定されたノイズチャージが低騒音機材の導入に役立っている。ノイズチャージでは遅延便の抑制のため、夜間は50%、午後11時以降は200%の割増料金がかかり、収入は防音対策や翼端流対策の財源となっている。
フランクフルト空港の大気質管理
フラポートには大気質監視の義務はないが、フランクフルトでは2002年以降、2~5箇所の監視地点で大気汚染物質の監視を続けている。また、空港が排出する大気汚染物質とそれが周辺地域住民と環境に及ぼす影響について理解を深めることをフラポートは目指している。監視結果は「大気質年次報告」のウェブサイトで定期的に公表している。監視開始から現在まで、空港の地表の大気質は一般的な都市環境の大気質レベルと差異がないとデータが示している。空港の地表の大気質には道路交通による排出物の影響もあることを測定結果や予測モデルが示し、また、汚染物質の濃度は天候にも大きく影響される。
2002年にドイツ空港協会のために開発されたLASPORTプログラムは、ある地域の大気環境に、ある汚染源がどの程度関与しているのか知るための計算モデルであるが、このプログラムは下層大気における空港関連の様々な排出源を考慮に入れ、拡散計算を行い大気汚染の状況を示す。現在、フラポートAGの専門家との共同作業により機能拡張が行われている。
また、排出物の少ない機材を使用するようエアラインに促すため、フランクフルト空港では航空機の離着陸時の窒素酸化物排出量に応じたエミッション・チャージを設定している。排出量の計算には、ICAOの航空機エンジン排出物データベースとFOI Swedish Defence Research Agencyのプロペラ機エンジンデータベースを使用している。
フラポートの地球温暖化対策
連邦政府の気候変動協定2050に基づき、フラポートAGは2030年までにフランクフルト空港のCO2排出量を80,000トンまで削減したいと考えている。フラポートAGの昨年度のCO2排出量は前年度より0.8%減り、約188,631トンとなった。
現在運用しているエネルギー効率改善プログラムによってエネルギー使用量が抑えられ、CO2排出量が削減されているが、フランクフルト空港の旅客数が堅調に増えたことや、異常に長くて暑い夏のせいでエネルギー需要が高まり、その効果はほぼ相殺されてしまった。
フラポートAGは2013年以来、CO2とエネルギー消費を監視する独自の監視装置を使用し、フランクフルトでのエネルギー消費を描写、分析、管理している。
フランクフルト空港を運営するフラポートが2018年版報告書を公表
- 2019年5月30日(木) 17:25 JST