欧州でのワークショップ:「航空機の騒音影響を軽減するための新しいアプローチ」

参加報告
2021年6月22日、ウィーン空港において、欧州の「Airport Regional Council:ARC*1(空港地域評議会)」が開催する、「ANIMA*2 Hybrid Workshop航空機の騒音影響を軽減するための新しいアプローチ」(ウェビナー形式)が開催され、筆者もWeb参加した。
ANIMAプロジェクトはEU Horizon 2020*3が資金提供する研究およびイノベーションプロジェクト(2017年10月1日開始から2021年12月末までの4年間、750万ユーロの資金)であり、航空騒音の影響を管理及び軽減するための新しい方法論、アプローチ、およびツールを開発し、増大する交通需要に対応するためのシステム強化をはかり、欧州連合加盟国全体に騒音影響緩和のベストプラクティスを広めることを目的としている。ただ、ほかのプロジェクトとは異なり、発生源対策としての騒音軽減策としてではなく、航空機騒音暴露がどのように周辺住民に影響を及ぼしているかという点の調査に主眼を置いている。
 
 このウェビナーで紹介された取り組みは全体で12あったが、一部を紹介すると、ひとつはより現実的な航空機騒音影響評価に向けたとりくみとして、国勢調査データのみでなく、全国旅行調査データやモバイルアプリケーションを利用する方法が紹介されている。これは毎日の人口移動パターンを把握して、人々がいつ、どの場所で航空機騒音の影響を受けるかをより正確に把握するというもので、実際にリュブリャナ空港(スロベニア)でのケーススタディを行った結果が紹介されている。また、独自に開発したモバイルアプリを利用し個々人がモバイル機能から騒音影響を報告する方法などが紹介されている。
これらを用いて、空港周辺住民の騒音影響をより現実的に把握し土地利用計画や航空交通管理に役立てる試みとしている。この実験は先のリュブリャナ空港のほかに、ヒースロー空港でも実施する方向で、実験結果は2021年半ばに報告される見込みとのことである。
今回のモバイルデータの利用は、個人データの利用という側面もあり、ハードルもあると思われるが、今後のこのような調査手法の導入が進むと、騒音コンターによる騒音管理の在り方も変化すると予想される。また、モバイルツールの利用は今後も進むと予想されるため、引き続き情報収集に努めたいと考えている。(報告者:武田)

*1 Airport Regional Council(空港地域評議会):欧州の主要空港がある地方自治体の代表者からなる組織で、空港活動による悪影響を防止、最小化、補償し、航空セクターの利益を計画、投資、共有、最大化するためのツールと知識をメンバーに提供することを目的としている。
*2 ANIMA : Aviation Noise Impact Management through Novel Approaches
*3 Horizon 2020:全欧州規模で実施される、研究及び革新的開発を促進するための欧州研究・イノベーション枠組み計画。2014-2020年に渡り約800億ユーロ(約10兆円)に上るEUからの公的資金が投入されている。