海外情報紹介 将来複合材を使用した航空機材は、航空ライフサイクル炭素排出量を15%削減できる可能性があると調査によって判明

原記事:
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2015年1月7日水曜日−シェフィールド大、ケンブリッジ大、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)による研究によると、2050年までには世界的に運用されている複合材製航空機が航空の炭素排出量を14〜15パーセント削減できるだろうと結論づけている。ボーイング787ドリームライナーやエアバスA350のような複合材製の航空機の包括的ライフサイクルアセスメント(LCA)を実施し、その結果から世界規模の推定を行ったのは最初だと、研究者らは述べている。ボーイング787や、エネルギー使用と航空機組み立てロボットのような供給プロセスについて公的に利用できる情報を使用し、LCAとしては製造、使用、廃棄を網羅したものである。従来型の重量が重いアルミニウム製の航空機に比べて、複合材製の航空機はCO2排出量を最大20パーセント削減可能である。その一方、ケンブリッジ大の別の研究者らはボーイングと共同で、飛行中にバッテリーの充電が初めて可能となった双発のハイブリッド式エンジンを持つ1座席の航空機で試験を満足に実施した。
International Journal of Life Cycle Assessment(国際ライフ・サイクル・アセスメント誌)で公表されたLCA調査では、複合材製の航空機製造工程での排出物はアルミニウム製の航空機の2倍を超えていたが、増加分は国際線での数回運用の後には速やかに相殺されることが明らかになった。

「この調査は、複合材料を用いることで製造工程での環境影響増大をはるかに勝る燃料消費節減が達成されることを示している。」とシェフィールド大の先端材料技術の教授であるAlma Hodzic氏が語った。「航空産業の中では議論が継続中であるが、複合材による環境上の節減と財政上の節減は、これらの材料がはるかに優れた解決策を提供することを意味する。」

LCAの比較分析がボーイング787の機体の46の部分について実施されたが、イタリアの航空宇宙企業であるAleniaが供給するチューブの部分の1つでは製造データが入手可能だった。787の機体は構造内で使用される複合材の割合が約50%と、高い割合であるという理由で選ばれた。

これからの25年間に複合材製の航空機が世界規模で運用機材として導入されるので、それが航空のCO2排出量へ及ぼす影響を評価するため、LCAのデータを広範な輸送モデルへ入れ込んだが、その際には新技術を導入するスピードのような他の要素も考慮した。

しかし、UCLのエネルギー・輸送の教授であるAndreas Schäfer氏 の予想ではすべての運用機が2050年までに複合材製のものになるわけではないので節減される排出量全体についての今回調査の予測は20%の可能性を下回るだろう。「2020年以前に運用機として投入された新型機は2050年まではまだ使用されている可能性があるが、この技術を取り入れるのが早ければ早いほど、環境的な利益は大きくなる。」と述べた。

現在から2050年までに航空交通が4倍に増えると予測して、使用する材料の変更により2050年にCO2の排出量を5億トン減らせる可能性があると、ケンブリッジ大の Lynette Dray博士は試算している。

Hodzic博士は付け加えた。「エアライン産業の目標は2050年までにすべての航空機についてCO2排出量を半減するというものであり、複合材はこれに貢献するだろうが、重量の軽い複合材製航空機の導入だけでは目標の達成は不可能である。しかし我々の調査では、他の技術や効率化の方策と合わせれば、複合材が目標達成に貢献するとみている。」

プロペラを駆動するために電気モーターとガソリンエンジンがプロペラを動かすハイブリッド型電気推進システムは、ボーイングの資金援助を受けてケンブリッジ大のエンジニアが設計・製造したものであり、商業化が可能なデモンストレーター航空機は、燃料のみを使用するエンジンを持つと同等な航空機と比較して燃料使用量が最大30%少なかった。

この航空機は4ストロークエンジンと電気モーター/発電機の組み合わせを使い、プロペラを回転させるために同じ駆動プーリーを介して連結されている。最大出力を要する離陸および上昇時は、エンジンとモーターが航空機に動力供給するために共に働くが、巡航高度に達すると、電気モーターはバッテリーの再充電を行う発動機モードへの切り替えが可能になる、あるいはハイブリッドカーに適用されるのと同じ方式で燃料消費を最小化するモーターアシストモードの使用が可能になる。

翼の中の専用区画に設置された16台の大型リチウムポリマー電池のセットから成るバッテリーに出入りする電流を、パワーエレクトロニクスモジュールが制御する。ガソリンエンジンは巡航時の出力において最も効率的な動作点をもつよう供給する最適サイズであり、それが燃料効率の全体的改善をもたらしている。

「ハイブリッドカーが市販されるようになってから10年以上たったが、これまでにハイブリッド式または完全な電気式航空機の開発が妨げられてきたのはバッテリー技術のせいである。」とケンブリッジ大工学部でプロジェクトを率いているPaul Robertson博士が語った。「最近まで、バッテリーは重量が重く、エネルギー容量も十分ではなかった。しかし、ラップトップコンピュータで使われているものと似た改良型リチウムポリマー電池の出現で、小型ではあるがハイブリッド型航空機が今や実現しつつある。」

重要なステップの中で、Robertson博士と彼のチームは電気モーターだけで動力を得る民間航空機が実現するのは10年後だと認めつつも、現代のジェット旅客機のすべてのエンジンと燃料を今日のバッテリーで置き換えたら、総飛行時間は、10分程度であろうとしている。

しかし、このプログラムに関するボーイングの研究責任者であるMarty Bradley氏は、革新的な解決策や技術を生み出すとともに航空産業の環境への取り組みを引き続き改善していく使命があると語った。

「ハイブリッド電力は我々の研究努力のいくつかある重要要素のうちの1つであり、我々はこれらの技術の実現可能性と、将来それらがどのように使えるかについて、日々学びを深めている。」

リンク:
国際ライフ・サイクル・アセスメント論文誌
シェフィールド大学機械工学科
UCLエネルギー研究所
ケンブリッジ大学航空・環境問題研究所
ケンブリッジ大学工学部
ボーイング民間航空機と環境問題

ワシントン州エバレットのボーイング787製造ライン
原記事にはハイブリッド電力航空機プロジェクトの説明をするPaul Robertson博士のビデオがあります。