原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2080
2015年5月1日金曜日−世界の5地域で4月に開催された、ICAO主催による一連のICAO気候変動セミナーは今週マドリードで終了した。国際航空対話(GLADs)会議の目的は、国際航空の炭素排出量削減のために取り組んでいる、軽減対策についての情報をICAO加盟国に提供することであったが、特に2020年以降の航空部門の総排出量の上限設定のため、提案する市場に基づく対策を加盟国に説明して話し合うことになっていた。正式な結論は出ていないが、現在ICAOで対策の作成に携わっている加盟国にとってはカーボンオフセット制度が好ましい選択肢と考えられており、航空産業や市民社会の代表を含め、GLADsの参加者はこの制度に関する考えや提案の提出を求められた。ICAOの試算では、カーボンニュートラルな成長目標達成には、2025年まではエアライン部門で年間約28億ドルの費用が必要となる可能性があり、2035年までではその金額が119億ドルにまで上がる可能性がある。
人の活動に由来する世界のCO2排出物の約2%が航空に由来し、ICAOは航空による排出物のうちの国際航空部分についてのみ取り組むことが義務づけられており、国際航空の割合は航空全体の約65%である。ICAOの統計によれば、1億4,200万トンの燃料が消費された結果、2010年の国際航空によるCO2排出量は4億4,800万トンに達した。この国連の専門機関は、2040年までに燃料消費量がこの数字の2.8から3.9倍に増加し、交通量(RTKs(訳注:Revenue Ton Kilometers有償トンキロ)で計算)は約4.2倍に増加すると予測している。そのため、国際航空部門のCO2排出量は、「かなりの量であり、増大し続けている」とICAOは警告し、1. 加盟国の行動計画を通じての排出量の把握、低減策の有効性の確認および実施、2. 加盟国への支援、最後には3. 削減策実施のための国際的活動という3本柱からのアプローチによりICAOは問題解決にあたっている。
ICAO加盟国は航空部門の年間2%の燃料効率改善目標に合意してきたが、世界の航空交通は5%近い成長率で増大を続けており、「排出量と排出目標との隔たり」を埋めてカーボンニュートラルな成長目標(これはこれまでのところICAOの努力目標であるが)を達成するため、サステナブルな代替燃料の使用を含めた他の一連の技術的な対策や運航による対策とともに、市場に基づく世界規模の対策(GMBM)が必要とされている。航空機に関する新技術が将来導入されることにより得られる総効率の向上は、0.57%から1.5%(年換算ベース)の間くらいになりそうだとICAOは見積もっている。言い換えると、2035年に購入される航空機は2010年の新型機よりも13%から31%程度効率がよくなっているという予測である。
ICAOの予測では2020年には国際航空の使用する燃料全体の3%がサステナブルな代替原料由来のものになるだろうが、長期の生産予測にはいまだにかなりの不確定性があるとしている。ICAOの航空環境保護委員会(CAEP)が設立した代替燃料タスクフォースは将来の生産性とライフサイクルでの利点をさらに評価しているところである。CAEPが他に検討しているのは代替燃料を使用する飛行からの排出量を算出する場合、どこまでGMBMで配慮すべきかということである。
課税や排出物取引のような他のMBMの形態も検討されてきたが、大幅に値を下げられるカーボンオフセットが、より単純で、実質的で、費用がかからず速やかに導入できる選択肢と考えられている。1つの部門(この場合は航空部門)からの排出物を発電や農業のような他の部門での排出削減によるオフセットで埋め合わせる。この制度の完全性を守るため、排出量削減は対象になるエアラインの排出量の厳格な検証と証明、および購入される排出物量によって確実なものにしなければならない。
2013年遅くに開催された前回ICAO総会で採択された決議(A38-18)に従い、GMBM作成を指導するため、ICAO理事会は理事会メンバーの17加盟国とIATAの代表で構成される環境アドバイザリーグループ(EAG)を設立した。排出単位の適格性、監視・報告・検証(MRV)の諸要件、MBMの影響評価に関する作業を行っているサブグループとともに、ICAO事務局およびもう一つのCAEPタスクフォースであるGMTF(Global MBM Technical Task Force)が技術支援を行っている。GMBMの枠組みは2016年秋の39回総会での決定のため、2016年の半ばまでに作成を完了して、理事会による合意を得ることを期待している。
GMBMの作成を目指して、ICAO事務局は昨年EAGのために、提案の概略と制度のために考えうる基礎となる主要素を作りだし、それ以降さらに改良されてStrawman(たたき台)と呼んでいる。これらにはたとえば成長の速い航空機運航事業者や新規参入事業者、事業者毎の燃料効率がすでに航空産業の平均を十分に上回っている「早期達成」事業者に配慮するための調整を組み込んでいる。
ICAOは現在、「どの加盟国も遅れさせない。」というスローガンのもとで、加盟国が世界基準に適合するよう支援するため、必要な援助と必要知識の積み上げに一層の重点を置いている。この目的に沿って、GLADsはICAOがMBMの背景にある原則について加盟国に情報提供し、ICAOの3年周期の中間の時点において検討に値する情報と意見交換を行うための1つの機会となった。全5回のGLADsに参加したICAO事務局メンバーの報告では、この問題について様々な理解のされ方があったが、GMBMの企画において加盟国が知りたかった事項についてかなりの共通性が見られたとのことだった。
2日間のGLADsの半分の時間を「対話」セッションに費やし、参加者は少人数の討議のグループに分かれて国際航空のGMBMで最も重要な検討事項に係わる問題に取り組んだ。加盟国、産業、NGOsからの代表は見識や発想を発表するよう促され、その結果は全体会議に反映された。
GreenAir誌が参加した欧州・北大西洋地域のGLADでは多くの主要問題についてかなり高い割合で共通意見があった。:
・MBMは分かりやすく管理が簡単で費用対効果のあるべきもの。
・環境に適応したものでMRVの頑健性がなければならない。
・競争的ゆがみを避け、差別のないものとする。
・航空の成長を妨げるべきではない。
・収益の創出でなく、排出物削減を推進すべきで、排出物の二重集計を
避ける。
・検証可能な広範囲の炭素単位が利用しやすく提供されること。
・開かれた対話とフィードバックにより、GMBM作成プロセスがすべて
の加盟国と利害関係者との間でより透明であること。
・必要であれば、必要な知識の積み上げによる技術的援助を加盟国に提
供する。
・GMBM実施には強い法体系の裏付けが必要。加えて、
・CBDR(共通だが差別化された義務)/SCRC(特殊状況と個々の能力)原
則の十分な理解と根拠に基づく解決を考えることが必要。
GLADsのフィードバックは6月のICAO理事会で代表者に説明する前に、今月の次回EAG会議で討議される予定である。2回目のGLADsは来年の3月か4月の開催が見込まれ、その後GMBMに関しての特別な高官会議が行われる予定である。ICAOは今年遅くに開催されるパリでのUNFCCC COP21サミットでICAOの気候変動対策関連活動の進展を説明することになっている。ICAOはまた、9月に航空排出物削減に関してE-GAPと呼ぶ2日間のセミナーを開催するが、そこには炭素市場に関するセッションもある。
CAEPによる分析では、炭素価格に関するIEA予測を用いると炭素予想価格が6ドルから20ドルの間であるとすると、航空産業による炭素オフセット費用は2025年では19億ドルから62億ドルの間(ミッドレンジが28億ドル)であるとみている。この数字は、炭素価格が12ドルから40ドルの間とすると、2035年までには72億ドルから239億ドル(ミッドレンジ119億ドル)の間まで上昇することになる。ミッドレンジの炭素価格なら、これらの費用は2025年の年間航空輸送収益見積額の0.3%となり、2035年には収益の0.9%まで上昇することになる。(下の表を参照)
マドリードの最後のGLAD開催までに、加盟国約100カ国から350人を超える参加者が5回のICAO関連会議(GLAD会議)に出席した。「参加者が多かったことがとても励みになったし、ものすごく得るものの多いセミナーだった。」と航空輸送局の環境部門次長のJane Hupe女史はGreenAir誌に語った。「対話セッションで私達が聞いた質問への答えは、5回のGLADsを通じて多くの似たようなものがあった。」
GLADsの開催前は、多くの発展途上国がMBMの目的をよく認識しておらず、誤解している国もあったと彼女は述べた。しかし、排出物削減達成のための様々な方策の一部として、「全体構想」の中にどのようにMBMが組み込まれるのかを加盟国が今では理解し、UNFCCC CDMの炭素クレジットを用いて発展途上国でのプロジェクトを支援することは多くの加盟国にとって重要な考え方となったと彼女は付け加えた。
「全ての人がMBMの実現を熱望しているわけではないが、国際航空が排出量ギャップを埋めてICAOの環境目標を達成する助けとなる1つの方策がMBMであるという理解はされている。同様に、加盟国がMBMから何を期待しているか我々は良く理解することができ、加盟国の要求にいかにICAOが対応できるかについては、これから配慮されるだろう。」
GLADsからの発表、対話セッションで出された質問、関連資料はICAO GLADsウェブサイトからダウンロード可能である。 ICAO CAEPが見積もるカーボンニュートラルな成長目標達成のためのオフセット購入費用:航空産業の収益に対するオフセット購入費用のICAO CAEPによる見積もり※GLADsで上映された「国際航空のためのサステナブルな将来への道のり」というICAOのビデオが原記事から見られます。
海外情報紹介 航空の二酸化炭素排出を扱う市場に基づく対策に関する世界規模での加盟国との対話をICAOが終了
- 2015年6月 8日(月) 09:00 JST