海外情報紹介 NGOsが納得していない中で米国環境保護庁(EPA)が二酸化炭素排出基準に通じる航空機排出物対処のための規制プロセスを開始

(今回の記事は決まったことではない意見の羅列であるため、以下は主要部分の要約としました。原著を直訳したものではありませんので、不足の場合は原著をお読みください。)

原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=2092

2015年6月11日木曜日−環境団体が規制措置を求めて8年間争った後で、米国環境保護庁(EPA)は航空機が排出する温室効果ガス(GHG)排出物が気候に悪影響を及ぼすので対応が必要であると結論づけた。EPAは米国が全世界の航空機のGHG排出物の29%の排出源で、航空が米国では未だにGHG基準の対象にしていない単一にして最大の移動排出源であると述べている。この問題に取り組むため、ICAOで開発中の国際的CO2排出基準に関してEPAはすでにFAAと共に作業を行っているが、この基準がICAOで承認されれば、米国大気浄化法の下で米国は国内でも採用する必要があるであろう。エアライン産業が自産業の世界的目標に寄与するだろうと主張しているこの基準はしかし、厳格性が十分でないので排出物削減にはほとんど影響が無いのではとNGOsは危惧している。そのなかでEPAは差し迫る60日間のパブリックコメント期間を広報した。
昨日公表された規則制定案の先行公示(ANPR)は、ICAOが設定する国際的なCO2排出基準をEPAが採用するための第一歩であり、その194ページの文書は、民間航空機排出物が気候に及ぼす影響とICAOによる基準設定のプロセスに関する情報を明らかにしている。

2009年にEPAが自動車と小型トラックは気候に悪影響を及ぼすと断定して以降、人為的な気候変動に関わる科学は、航空機エンジンが排出するGHGsが人の健康と幸福を危険にさらす気候変動原因である大気汚染と関連があるというEPA提案の危険性認定根拠を強化し、支援してきた。提案された原因と関連性との見解は、航空機エンジンCO2排出物に関して今後取りまとめられる国際基準と米国基準を整合させるための最初の一歩であるとEPAは述べている。また、今日の動きは炭素汚染の大規模排出源からの排出物を減らすという(オバマ)大統領の気候変動行動計画の目標達成を支援するものである、とEPAは表明している。

訴訟を起こしている米国の環境団体は、航空機による炭素汚染を規制するためのこの重要な第一歩を踏み出したEPAを称賛するが、航空機が気候変動に及ぼす影響の大きさを考えるとEPAが現在検討中の暫定的な取り組みでは目的達成に不十分であり、これら有害排出物を減らすために大気浄化法に関するEPAの権限を使う代わりにICAOの後に続き、今後10年の排出物増大を固定する従来通りの基準を設定することをEPAは提案していると批判する。ICAO理事会で承認されて2016年内に開催予定の総会で承認される前に、NGOsや産業の代表もメンバーとして参加するICAOの航空環境保全委員会(CAEP)の2016年2月の会議で、この国際基準については合意が得られると見込まれているが、この基準の厳格性と適用性については重大な疑問が残っている。90-95%の航空機がすでに適合しているような基準を設定しようとしているので、ICAOの基準では実質的な削減は見込めない。また、ICAOがこの基準を適用するのは20-30年の耐用年数がある現在の航空機ではなく新型機にのみ適用する予定で、段階的導入をさらに先送りすることになると批判している。

クリーン輸送に関する国際協議会(ICCT)の分析では、2020年に適用される基準は2030年に世界で運用される機体の5%しか対象にならず、ANPR文書についての解釈では、基準が目指す現在の方向性には米国は完全には満足しない可能性があるとしている。さらに、効力のある実行手段を持つ基準でICAOが合意しなければ、米国がさらに先を行くことをANPRは暗示しているとの解釈もある。これは、領海の外で運航するよりも米国領海内での航行に厳しい環境要件を適用するという、国際船舶について米国が採用したようなやり方と似たもので決着するかもしれないという期待からである。一方、EPAには大気浄化法の下で米国の航空機を規制する権限があるので、単に米国ではICAO基準を実施するのでなく、現在使用中の航空機も対象にしてICAOで熟考されている基準内容よりさらに厳しい基準をEPAは設定できないことはない。EUがEU域内排出量取引制度(EU ETS)で航空を対象に含めたように、EPAはCO2基準を米国の大気浄化法の要件に合うように設定でき、それについてはICAOのスケジュールに縛られるわけでもないということもICCTは認めている。

航空機エンジンに関する国際排出基準はまずICAOが制定し、続いてICAOのエンジン基準と少なくとも同程度の厳しい米国内基準を制定するためにEPAが規則の作成を開始したとANPRは言及している。しかし、ICAOを設立したシカゴ条約では、ICAO基準よりも厳しい独自の基準をICAO加盟国が採用する可能性を認めている。ICAOで国際基準が検討されているが、EPAが危険性を認定したことにより、それよりも厳しい規制をEPAが提案する可能性があるとの解釈がある。

エアライン産業の業界団体である米国エアライン協会(A4A)は、ICAOが新型機用にCO2証明基準を開発する作業を支援したと語ったが、米国エアラインは米国の経済活動の5%を行ったとしても、温室効果ガス排出量では米国全体のわずか2%にすぎないと指摘している。また、A4AはICAO基準と内容が異なる国内基準について米国が独自に作業をするべきではないと警告している。航空は世界産業であるため、航空機排出物基準については引き続き国際レベルで合意を得ることが肝要であるとの考えのもとで、いかなる規制措置も大気浄化法下でのEPAの権限とICAOでこれから成立する基準との整合性がなければならないと主張している。米国の航空産業の燃料効率は1978年以降120%向上して、CO2排出を38億トン抑えており、昨年米国エアラインは2000年と比較して20%増の旅客と貨物を輸送したがCO2の排出量は8%減少したことを主張している。

航空機及びエンジンの製造業者を代表する航空宇宙工業協会(AIA)は、EPAによる航空機のGHG排出物評価の動きは航空宇宙産業にとっては驚きではなく、米国最高裁がGHG排出物は大気浄化法下での『大気汚染物質』であると定めた2007年以降、EPAは事業別にGHG排出物分析を行ってきたことによると解釈している。航空宇宙関連製造業者は航空部門のその他業者とともに、排出物削減と燃料効率向上のために知恵を絞ってきており、他の環境規制によっても厳しく規制され、航空機の安全性と耐空性の厳格な要件にも適合しなければならないと考えている。また、航空は経済成長と繁栄を推進する重要な世界産業であり、EPAがGHG排出物に対していかなる規制措置をしようと、大気浄化法とICAO基準のもとで考えられるEPA権限はそれに見合うものでなければならないとして、NPRが米国連邦広報に掲載されてから開始されるパブリックコメントの期間中の解答提出期限前に、AIAはEPAの提案を再検討し、会員企業と協議すると述べている。

なお、EPAの提案した危険性認定の対象は、最大離陸重量(MTOM)が5,700kgsを超えるジェット機と(これには民間機と大型のビジネスジェット機が含まれる)、MTOMが8,618kgsを超えるターボプロップ機であるとしている。

リンク:
米国環境保護庁(EPA)−航空