業務概要・沿革
1.航空環境に関する調査・研究の必要性
航空環境研究センター(当初は、航空公害調査研究センター)は、財団法人空港環境整備協会(当初は、航空公害防止協会)の付属機関として1972年に設立されました。それ以来現在に至るまで、航空機の離着陸によって生じる騒音等の障害軽減のための諸対策に寄与し、周辺住民の生活環境の改善を図るため、航空公害について体系的に調査し、その防止や軽減等に関する科学技術の発展を目指して研究を進めています。
当研究センターが設立された頃は、経済の成長とともに多くの公害が発生し、その対策が国の重要な課題とされた時代でした。民間航空もジェット機の導入と共に航空機騒音が激しくなり、生活環境と住民の健康を守るため、迅速に対処することが求められました。そのため、航空機騒音に係る環境基準が告示され、低騒音型航空機の導入や騒音軽減運航方式の採用によって騒音の軽減がはかられ、また学校や住宅に対する防音工事助成等の周辺対策が精力的に推進された結果、1980年代の終わりには空港周辺での航空機騒音影響は減少し、被害は次第に解消されていきました。
しかし1990年代になって、航空交通の伸びとともに空港に離着陸する航空機が増加し、騒音影響の状況は横ばいになり、今では漸増へと転じることも懸念されています。生活の質の向上につれ騒音に対する人々の認識も厳しくなり一段と静けさが求められるようになっています。一方、1985年に南極の上空でオゾンホールが見つかったことを契機に、地球環境問題がクローズアップされるようになりました。今では地球温暖化が最も国民の注目する環境問題のひとつとなっています。温暖化への寄与率は交通機関全体でも2割程度と言われ、航空機運航による寄与は高くありません。しかし、空港周辺の限られた地域での大気汚染問題に止まっていた航空機の排ガスが航空事業推進に制限を及ぼしかねない問題へと発展する可能性もあります。
今後も、当研究センターは空港周辺の地域環境と地球環境というマルチフェーズの環境問題の解決に貢献すべく積極的に業務に取り組んでまいります。
2.センターの業務概要
当研究センターでは、所長の下に、管理部、調査研究部の2部を置き、航空環境に関する調査・研究の業務を行っています。業務は、主として国や地方自治体等から委託されて行う調査・研究(委託業務)と当研究センターが自主的に特別なテーマを設定して行う調査・研究(自主研究業務)に分かれ、航空機騒音、航空機排出ガス、健康影響など、多岐にわたる分野について調査・研究を行っています。例えば、航空機騒音予測プログラムや飛行経路観測装置の開発,空港周辺における騒音・大気環境の実態把握,住民の健康に関する疫学的調査などを実施しており,また技術研修会や講演会の開催による航空環境に関する情報や知識の周知・啓発の事業も行っています。さらに近年は、国際民間航空機関(ICAO)における国際活動への貢献や政府支援を行い、また国からの要請を受け、世界各国への航空環境関連技術協力にも貢献しています。地球環境問題に関する国際シンポジウムの共催などの活動も行っています。なお、業務を推進するにあたっては、専門家で構成する各種委員会を設置し、調査・研究の方向付けとそれらの結果についての審議を行っていただいています。
3.センターの沿革
昭和43年 | 財団法人 航空公害防止協会設立 |
昭和47年 | 上記の付属機関として羽田空港に「航空公害調査研究センター」開設。また大阪国際空港内に大 気汚染監視測定室を設置 |
昭和48年 | 機関誌「航空公害‐研究と対策」を創刊、29号(1991年)より「航空と環境」に名称変更 |
昭和51年 | 「航空公害調査研究センター」を「航空公害研究センター」に名称変更 |
昭和52年 | 豊中市(勝部地区)及び伊丹市(西桑津地区)に大気汚染監視測定室を設置 |
平成5年 | (財)航空公害防止協会は(財)空港環境整備協会に名称変更、同時に「航空公害研究センター」 を「航空環境研究センター」に名称変更 |
平成9年 | 羽田空港の拡張に伴い、研究センターを空港内多摩川沿いから旧整備場に移転。定期刊行物 「航空環境研究」を創刊 |
平成22年 | 「騒音振動部」、「大気環境部」及び「環境保健部」の3部を廃止して、新設の「調査研究部」に統合 |
平成24年 | 同じビルの5階から4階へ移転、同時に当協会は財団法人空港環境整備協会から一般財団法人 空港環境整備協会に移行 |