環境保健に関する調査研究

 環境保健に関する調査研究の課題としては、空港周辺の人々との調和を図る上で基本となる「心身の健康」を見守りながら、より快適な住環境の条件、空港のある町のあり方について研究することです。具体的には、健康調査、社会調査、騒音曝露調査を通じて、地域環境の総合評価と、生活・健康への影響を把握し、コンピュータにより数量的、統計学的に解析・検討しております。
 住民の目で見た主観的な環境評価をふまえて、空港に関連して生じるさまざな問題を健康科学(ヘルスサイエンス)の視点で評価し、空港があるからこそ暮らしやすい、といわれる街づくりのための基礎研究を進めております。

新たな航空機騒音影響評価法の検討

 航空機騒音量と時間帯との組み合わせなど、指標そのものの評価についてこれまで多くの議論が費やされてきましたが、実際に対象地域で住民の不快感を生む諸条件、例えば地域の特性や他の騒音の寄与などはほとんど考慮されませんでした。当部では航空機騒音を地域の環境騒音の一つとしてとらえ、地域環境全体をふまえた影響評価手法の開発に取り組んでおります。

航空機騒音の人体影響に関する文献収集・解析

 航空機運航及び空港周辺の環境による健康への影響について、常に国内外の文献を検索・検討しております。70~80年代の人体影響に関わる文献に関しては抄録を付してリスト化し、小冊子として発行しました。空港利用の24時間化が図られている現状を考慮して、夜間騒音の影響、とくに睡眠影響に関する文献に重点をおいて収集・検討を行っております。

主観的な騒音評価の関連因子の検討

日常生活における騒音の心理的な影響評価では、迷惑度(アノイアンス)という指標が広く使われています。しかし、その発生条件や関連因子についてはまだ分からない点がたくさんあります。そこで、地域性、家屋条件、個人レベルの騒音曝露条件を測定しつつ、人々のストレスや性格傾向などを社会調査技法によって評価し、その背景要因を検討しております。

住環境のアメニティ(快適さ)の研究

人々が自分の街の暮らしやすさ、快適さ(アメニティ)を判断するときは、いくつかの条件について満足度を決め、総合的な評価を下します。当部では地域の騒音や大気汚染のレベル、緑地率や交通の便等々を調査・測定するとともに、精神保健学的な視点から住民の満足度、心身の健康度を評価して、環境アメニティの構造を統計学的に解析しております。