この欄で以前紹介しました「航空による二酸化炭素排出量、世界の国際定期旅客便−2012」を執筆したDave Southgate氏が、今回、世界の国内定期旅客便について資料を公表しました。greenaironline.comに掲載された紹介文の要約をご参考までに掲載します。
原記事:
http://www.greenaironline.com/news.php?viewStory=1737資料のダウンロードサイト:
http://southgateaviation.wordpress.com/2013/08/27/carbon-footprint-of-scheduled-domestic-passenger-flights-2012/米国の航空による2012年の二酸化炭素排出量が他国を圧倒することを地球規模の新しい分析が露わにする。 2013年9月12日木曜日−世界の国内線定期便による二酸化炭素排出量は2012年の全定期便による排出量の約39%を占めた。国際線の排出量と合わせると、アメリカ合衆国の航空による二酸化炭素排出量は他国を圧倒し、2位の中国のほぼ3倍の量となっている(以下の図1と2)。定期便の排出量の世界的比率は国内線対国際線が39/61であるのに、米国の国内線による排出量は国際線の排出量の約2倍であり、中国では3倍である。これらの統計値は航空の二酸化炭素排出量の専門家であるDave Southgate氏が行った国内線と国際線を分析した三部作の最終版である、新規の総合的調査で見て取ることができる。データと計算のためのツールはたやすく入手できるのに、Southgate 氏は国家レベルで集約された航空による二酸化炭素排出量の報告が驚くほど見当たらないことに気づいたと述べた。
IATAによる最新の統計が、航空による2012年の世界の二酸化炭素排出量の総計が約6億8,900万トンであることを示している。「航空による二酸化炭素排出量、世界の国内定期旅客便−2012」という電子書籍で、Southgate氏の分析は、航空部門の総排出量の約85%を占める、2012年の国際定期便による約5億8,400万トンの排出量同様に国内線による排出量も取り扱っている。
「国際航空の二酸化炭素排出量の将来の管理方式に関して現在ICAOで行われている討論には、国内航空の二酸化炭素排出量は直接に関連してはいないが、無関係でもない。」と彼は書いている。「航空の二酸化炭素排出量を減らす取り組みの多くが国内航空と国際航空の両方を対象としている。 − 例えばより効率の良い航空機の開発とかATMや空港の効率性の改善とかの取り組みにおいて。 − そして討論に係わる多くの政府関係者には国内航空と国際航空両方に責任がある。」
自由にダウンロードできる彼の196ページの著作では、国別、エアライン別、空港別や航空機の型式別に国内線定期便の排出物を分類され、国際線定期便との比較を加えて包括的概観が与えられている。
Southgate氏はまた、国連の国別人口データを使って一人当たりの総二酸化炭素排出量の上位30カ国の「成績表」を作った。カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦そして香港のような、小さいが主要な空港ハブを持つ裕福な国家が他の国家を遙かにしのいでいる。オーストラリアとスイスがそれに続き、すぐ後にアメリカ合衆国が続く。中国は航空活動による二酸化炭素排出量が2番目に多い国であるが、一人当たりの排出量では28位になる。
「炭素の貨幣化」の章では、Southgate氏はCO
2の価値を金銭的価値に置き換えて、旅客当たりの炭素費用として示している。もし1トン当たり$20の炭素料を2012年の世界の全国内線定期旅客便の出発に課すならば、彼の計算によると約45億ドルが集金されただろう。平均するとこの数字は旅客1人当たり約$2.30の炭素料になっただろう。
国土が広く、主要な経済の中心地が広く離れて存在する国家では、予想通り炭素料が高くなった。2012年では、ロシアが最も旅客当たりの平均費用が高く($3.80)、韓国が国内便による二酸化炭素排出量の上位30カ国の中で最も低かった($1.20)。米国の旅客にとっての費用は$2.90になり、中国では結局$2.40になっただろう。
国内線定期便を運航する世界中のエアラインの順位では、上位5位までのエアラインすなわち、デルタ航空、ユナイテッド航空、サウスウェスト航空、アメリカン航空そしてUSエアウェイズの排出量が、世界の国内便の二酸化炭素排出量の約35%を占め、上位10社で排出量の50%になろうとしている(図3)。上位10社のうち1社(全日空)以外は中国か米国のエアラインである。国内便と国際便の運航を合わせると上位3社すなわちユナイテッド航空とデルタ航空とアメリカン航空が、国内便と国際便の二酸化炭素排出量が顕著に多く、世界の主要国際エアラインの多くは国内便の二酸化炭素排出量が無いか、あってもごく少量でしかない(図4)。ユナイテッド航空とデルタ航空がもし国家なら国家の階層の3位と4位の立場を占めるだろう。
この著書ではまた、国内線の出発便の二酸化炭素排出量で世界の上位30空港を順位付けし、国内線と国際線の二酸化炭素排出量を比較している。当然、上位30の国内線空港の内の22空港が米国にあり、6空港が中国で日本とインドネシアにそれぞれ1空港ある。アトランタ空港が最も国内線の二酸化炭素排出量が高く、その次がロサンゼルス空港である(図5)。これら2空港はその次の3空港すなわち北京空港、ダラス−フォートワース空港、シカゴ空港より遙かに二酸化炭素排出量が高い。
空港の国内線と国際線の運航を合わせると、違った、地球規模で様々な様相が浮かび上がり、ロンドンヒースロー空港が世界で最も二酸化炭素排出量が高く、その次がロサンゼルス空港、ドバイ空港、ニューヨーク空港、フランクフルト空港そして香港空港となる(図6)。 Southgate氏は計算の根拠にInnovataの航空機運航データを使用し、大圏の炭素を計算するアプリケーションで、オーストラリア政府のインフラストラクチャ・交通省が開発した自由に利用できるソフトウェアツールであるTNIP炭素カウンターを使用した。彼によれば、いかなる都市の組み合わせの便であれ、生成されるCO
2の重量を計算するのに必要なすべての情報がそのソフトには入っているとのことである。燃料燃焼のアルゴリズムはICAOの炭素計算機で使用されているのと同じものである。TNIP炭素カウンターはまた、ICAOの炭素計算機で使用される大圏距離調整係数を使用している。Southgate氏は引退したオーストラリア政府の自称「環境官僚」で、ICAOの環境保護委員会(CAEP)の2004年から2012年までのオーストラリア代表で、ICAOの炭素計算機を開発したCAEPグループのメンバーだった。
二酸化炭素排出量の計算は、彼曰く、気候変動への航空の関与を管理するための支えであるとのことである。「国際的に合意を得たいかなる気候変動管理計画であれ、CO
2の結果が独立して追跡できず、検証も不可能なら、信頼性はほとんど無いということになりそうである。現在では、地球規模での航空による二酸化炭素排出量の検証における信頼性は多くの版があるために弱くなっている。世界の航空ネットワークのために、二酸化炭素排出量情報を照合するような共通の計算根拠から引き出した統一された報告書類は公表されていない。航空関連の燃料使用量及び/またはCO
2生成について、国際線及び国内線両方に関して多くの「公式な」公表された情報源があるが、一貫性がない。」
この本でSouthgate氏は、世界の国内航空による総二酸化炭素排出量の10-15%に係わる部分についての彼の分析には「データの空白」があると認めている。「理想としては、世界の航空機の全運航の二酸化炭素排出量の全体像を示すことが望ましいのだが、たやすく一般人の手に入るようにはなっていないとても重要なデータがある。」と彼は書いている。「世界の国内航空データの二酸化炭素排出量の全体像を示すには、貨物航空や非定期便、ビジネス航空やゼネラルアビエーションのような、航空の二酸化炭素排出量に係わる他の非主要部門についてのデータが入手可能でないと。」
これにもかかわらず、注意を喚起するため、理解を助けるため、そして航空の二酸化炭素排出量管理のための新しい取り組みについて思考を生み出すためにエアラインや空港や国別の排出量の構成についてわかりやすく表現するという彼自身の目的を、Southgate 氏は何とか達成した。
いよいよ今月これから開催される第38回ICAO総会に対する、市場に基づく国際的な対策の確立に関する提案では、ICAOに付託された権限が対象とするのは国際航空のみで国内民間航空排出物は対象外だとしても、航空に由来する排出物の監視、報告、検証のICAO基準をICAOが開発することを航空産業は求めている。
第38回総会の気候変動決議は、国際航空による世界規模の排出物の測定・監視・検証の方法論と装置について、交通量や燃料消費や排出物のデータを毎年報告することと合わせて、ICAOでの作業着手を要求するものになりそうである。
航空関連二酸化炭素管理体制に経済的負担が絡むならば、詳細で、公的に検証可能な追跡の必要性があるだろうとSouthgate氏は言う。しかし、そのような検証システムは必然的に複雑で、CO
2の排出と報告の間に顕著な時間差があると彼は警告し、それらのシステムはまた、エアラインの商業上の機密性の問題のために、集団レベルでのものを除いては透明にはならない。
「不透明な報告にのみ基づく検証システムは不信を生みやすく、最終的に正当性を疑われがちである。」とSouthgate氏は警告する。大圏分析に基づく何らかの形の二酸化炭素排出量報告/追跡体制を平行して稼働することで排出量の透明性が導入でき、それによって第三者による開かれた、速やかな検証が促進されると、彼は示唆する。「これを実施するためには、主要な航空機関が積極的な役割を果たす必要があるだろう。」